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【SWORD BRAKER】愛と勇気の打ち切り漫画

SWORD BRAKERとは?

あらすじ
千年前、邪悪な魔法使いアバルに戦いを挑んだ勇者ルルドは、アバルの呪いによって異世界へと飛ばされてしまう。異世界にて尊人(ミコト)と名付けられ暮らすルルドだが、勇者を呼ぶ声に導かれ…!? 

2002年に週刊少年ジャンプで連載された梅澤春人先生作の少年漫画。全16話の短期連載、いわゆる打ちきり漫画。

しかし、全16話でありながら、唯一無二の魅力をもった漫画でもある!平成も終わる2019年、あえてSWORD BRAKERの魅力を語らせて下さい。

梅澤春人先生 × ファンタジー

梅澤春人先生といえば、代表作BØY(全33巻)、カウンタック(全28巻)にみられるような現代社会を舞台にし、ケンカやヤンキー要素を多く取り入れているのが特徴。しかし、本作はファンタジー。梅澤先生のロックな作風とファンタジーが合わさり、かなり独特なセンスになっている。

特に素晴らしいのが、

魔城「ガッデム」

優れたネーミングはいかに読者の記憶に残るかであり、私は連載から約17年間魔城「ガッデム」のことを忘れたことはありません。

この記事を読んでくれた奇特なあなたの心の中にも魔城「ガッデム」が建つと思うと胸が熱くなります。

その他にも、殺人上等(コロシジョートー) 俺たちゃ無敵の未成年様だぜ、魔龍闇煌(カオスギャラガー)、無敵の盾(鎧)など作家性溢れる唯一無二のセンスが堪能できるのが特徴です。

打ち切りからの美しい展開

独特な作風でありながらも読者アンケートの結果が振るわなかったためか、連載を終わらせるために14話から怒涛の展開が始まります。

邪悪なる魔法使いアバルが最強の剣とともに復活しそうな気がしていたが別にそんなことなかったぜ。

無敵の盾の聖なる力を100%発揮するには、王皇聖石を囲む六つつの守護聖石が必要な気がしていたが別にそんなことなかったぜ。そして、残りの守護聖石は最寄の聖地ブリリアントに集めておいたぜ。

大予言者ズールを倒すには七剣邪を全員倒す必要がある気がしていたが、大予言者ズールが七剣邪を倒しておいてくれたぜ。

わずか3話での怒濤の伏線回収。打ち切り漫画における形式美すら感じます。

打ち切り漫画特有の急展開をギャグにしたソードマスターヤマト(ギャグマンガ日和)は有名ですが、そのリアルがSWORD BRAKERで読めます。ぜひその目で確かめて欲しい。

美しいラストシーン 王道の物語

個性的なセンスや終盤の怒濤の展開はもちろんですが、SWORD BRAKERと言えばやはり感動的なラストシーンについて語らずにはいられません。

が、ラストシーンを語る前にまずは物語としてのSWORD BRAKERの世界の成り立ちを抑えていただきたい。

ソードブレイカーの世界は1話の段階で、勇者ルルド(主人公)が邪悪なる魔法使いアバル(悪の親玉)を打ち倒しています。

しかし、アバルは敗れた後も邪神として信仰され、アバル信徒による邪神アバル復活のため地上の人間の殺戮が行われています。

そして、アバル信徒のボス大予言者ズールを倒したあとも、肉体は滅びても怨念は滅びない。次なる邪悪なる者を探し戦いは終わらないことが語られます。

ソードブレイカーの世界は運命(さだめ)という名の戦いの連鎖に囚われていることが分かりますね。

では、戦いの連鎖を終わらせるために、勝利ではなく何が必要なのか?

愛と勇気です。

大予言者ズールは元人間であり、生まれながらにして不治の伝染病におかされていました。

生んだ母親は伝染病におかされ子を抱くことなく死に、残された子は伝染病を戦争の道具にするために生かされました。実験中にアバルの怨念と出会い魔神となった大予言者ズール。

それを知ったミコト(主人公)のラストシーンでとった行動は、

抱擁。

無敵の盾(鎧)を脱ぎ捨て、自分の命を捨て、大予言者ズールに温もりを伝えることを選んだのです。

なぜミコト(主人公)は悪を滅ぼすことではなく、救うことを選べたのか?それは1話に遡ります。

邪悪なる魔法使いアバルを倒した勇者ルルド(主人公)は、アバルが死にぎわに放った呪いにより、記憶を封じられ異世界(現代日本)へ飛ばされ孤児ミコトとして生を受けます。

ミコトは孤児を受け入れてくれる施設で育ち、同じ施設育ちの社会人のトラと血の繋がらない家族として絆を育みます。

そして、殺し上等の未成年に襲われた時、トラは死んでもミコトを守ろうとします。

その姿からミコトは勇気と優しさを学ぶのです。

その結果、悪を倒す力を持つ無敵の盾を手放し、敵を抱きしめ、この世から魔人をなくし、世界に平和をもたらしたのです。

つまり、世界を変えうるのは神に選ばれた勇者の無敵の力ではなく、誰もが持ちうる愛と勇気であることをソードブレイカーは説いているのが分かりますね。

残念ながら短期連載で終わってしまった本作ですが、それでも王道の少年漫画を描ききってくれた梅澤春人先生に尊敬の念を示します。

以上です。

もし本作が気になる人がいれば電子書籍化されているので、下記リンクより購入してお読み下さい。

https://www.amazon.co.jp/SWORD-BREAKER-1-ジャンプコミックスDIGITAL-梅澤春人-ebook/dp/B073XLRR32

また、本作のコミックを古本屋で見つけた方は本記事の著者へご連絡頂けると嬉しいです。SWORD BRAKERコミック版の捜索にご協力下さい。

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