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書けない返事

言い返そうと思えば
できなくもない。
「それは違う」と言えば
それで済むことだから。

だけど、そう伝えたとして
理解してくれることに繋がるかと言えば、
必ずしもそうじゃない。

だから、ここしばらくは
そのことをぼんやりと考えている。

長く、生活をしてきたけれど
わたしが理解するように彼に理解される
(理解してもらえる)
と、言うことは
ほぼほぼなかったと言うこと。

「お互いを求める」

恋愛において互いにそうであるはずの
その感情が
わたしにはなかったと言うこと。


「勝手に出て行った」

そう言われてしまったけれど、
相手の立場からしてみると、そう取られても仕方がないのかもしれない。
青天の霹靂だったのだと思う。

あの日、家を出たいと告げた時の
怒った顔を思い出す。
理由を話そうにも取り付く島もなく
大声を出したかと思えば、背を向け出て行ってしまう。
その日から食事も摂らず、見るたびに痩せていくのを
わたしは何も言えず見ているしかなかった。

悪いのはどっちなのだろう。
たぶん、わたしなんだろうなって思う。
彼へと話す言葉を
彼の望む言葉に変換しないと届かないと言うことを知っていて
望まない言葉で、話したのだから。

その時に
もっとはっきりとさせておけばよかったのかもしれないとも思う。
時々送られてきた写真は
家で飼っているねこと、風景と、置いてきた次男の姿だった。

そこにたしかに
居たのだということを
わたしに
思い出させるように。

6月1日
わたしは、ひとりになった。

ひと言で済む返事を、まだ送れずにいる。

それでもいつか
返事をする時が来るのだろうと思う。
それはたぶん、近い未来なのだと言うことも
ちゃんと、わかっているのよ。

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