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ふくいサーモンの水揚げを取材しました。

近年、日本で最も消費量の多い魚はサーモンである。株式会社マルハニチロの調査では回転寿司でよく食べられているネタの第一位に、サーモンがなんと13年連続で選ばれている。総務省による家計調査でもサケ類の消費量がトップだ。そうした背景もあってなのか、おおい町でもサーモンが養殖され、「ふくいサーモン」というブランドで売り出されている。

そんなふくいサーモンの水揚げは、例年4月から5月にかけて行われる。今回、大島漁業協同組合と福井中央魚市株式会社のご協力もあり、ふくいサーモンの養殖場を取材することができた。

到着すると、すでに水揚げが始まっていた。この期間は水曜日と日曜日を除いて毎日、日が昇る前から仕事が始まるとのこと。水揚げが行われる過程を眺めていると、生け簀で泳ぐサーモンをクレーンで揚げてすぐ、一匹ずつ活締めが行われていた。サーモンの活締めではエラにある動脈に包丁を刺し、血抜きを行っていく。そうして鮮度を保つみたいだ。

サーモンを水揚げし、血を抜き、桶に移す。それらの作業が繰り返された後、大島漁協と福井中央魚市の間で取引する際に使われているA・B・Cのランク別にサーモンを選別していく。そして、おおい町や小浜、福井市など、さまざまなスーパーや道の駅、市場へとトラックで運ばれていき、この日の水揚げ作業は終了した。

水揚げされたサーモンのなかには5キロを超えるものもいた。見るからに脂身が詰まっている。これらのサイズはA級に値し、高値で取引されるとのこと。

トラックへの積み込みが終了すると、ご厚意で小浜湾の沖にある海面養殖場も見せていただけることに。翌日の水揚げ準備を行うため、生け簀を二台の漁船でゆっくりと運んでいくみたいだ。

自動給餌を行う機械を中心に、ふくいサーモンが反時計回りにひたすら泳ぐ。そのサーモンたちを少しずつ、生け簀に移していく作業が行われていた。

こうした過程を経ながら、ふくいサーモンの水揚げは毎年行われている。この日、水揚げ作業が終了すると、大島での養殖の責任者を務める福井中央魚市株式会社の上田直希さんからお話を伺うことができた。気になっていたふくいサーモンの養殖が始まった経緯とその独自性を尋ねてみた。

大島でのふくいサーモン養殖に約6年に関わっている上田さん

「福井県と水産漁業団体、福井中央魚市株式会社が水産業を活性化するために連携し、2014年に始まったプロジェクトがふくいサーモンの養殖です」。

サーモンの国内消費量は年間およそ32万トンにも及ぶが、そのうちの8割がノルウェーやチリなど海外からの輸入に頼っているのが現状らしい。そうした背景もあり、国内各地でサーモンの養殖が行われ、福井県でも2014年に開始されたのだ。

「サーモンの卵が孵化してから稚魚になるまでは淡水での養殖を行うのが一般的です。そのため、全国名水100選にも選出された大野市の河川に淡水養殖場が設置されました。

稚魚まで育つと海水養殖場に移し、サーモンを大きく育てていくのですが、ご存じの通り、日本海は波が激しい。越前海岸で海水養殖を試みたものの、安全性の面で問題がありました。波が穏やかな湾を探すこととなり、大島の漁協さんの協力のもと、2015年に大島でのふくいサーモンの養殖が始まったのです」。

現在は地元福井での販売だけでなく、海外へと販路を広げている。南アジアや東南アジアなどを中心に、冷凍したサーモンの輸出を強化しているとのことだ。また、全国寿司チェーン店として有名なくら寿司と取引し、期間限定でふくいサーモンの販売が行われた実績もある。

そんなふくいサーモンの魅力だが、他のものとどのような違いがあるのだろうか。「自然の水が綺麗な場所で養殖されているので、ふくいサーモンには臭みがありません。また、脂の乗り具合も大きな魅力です。刺身で食べるのも良いですが、ムニエルにするなど、焼く調理をすると脂がジュワっと溢れて本当に美味しいのです」。

4月~5月の福井県では水揚げしたばかりの新鮮なサーモンが手に入る。また、ふくいサーモンは急速冷凍も行われているため、道の駅での販売や大島漁協への注文などを通じて、一年中手に入れることもできる。地元の人も観光で訪れる人も、ぜひご賞味してみてはいかがだろうか。

執筆・撮影:張本舜奎(おおい町地域おこし協力隊)


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