旭化成の決算内容を3分で解説!
今回は旭化成の決算内容について見ていきましょう。
化学業界ランキングでトップ3に位置するこの会社、その決算内容はいかがでしょうか?
1.PLの状況
まず最初はPLの状況について見ていきましょう。
売上高は前年比+2.1%の2兆7,849億円と増収となりました。
営業利益は前年比+10.2%の1,407億円、当期純利益は前年の赤字から大きく回復し、438億円の黒字となりました。
住宅関連の売上・利益が今回の増収増益に大きく寄与している様子です。
では各セグメント別に内容を見ていきましょう。
セグメントとしては3つ「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」があります。
◇マテリアル
売上高は前年比△4.2%の1兆2,617億円、営業利益は+3.8%の426億円と減収増益となりました。
需要減速などにより減収となりましたが、原燃料因や為替影響などがカバーし、増益となりました。
事業別に見ると、環境ソリューション事業は、基盤マテリアル事業が中国を中心とした石化関連全般の需要減速によって販売数量が減少したことに加え、市況が下落したことによる在庫受払差がありましたが、セパレータ事業において前年度のPolypore減損に伴う広義ののれん(無形固定資産・のれん)の償却費が減少したことにより、増益となりま した。
モビリティ&インダストリアル事業は、自動車減産影響の改善や能力増強を受けて販売量が増加したことに加え、交易条件が改善し増益となりました。また、ライフイノベーション事業は、在庫受払差の影響などがあったものの、AIサーバーやハイエンドスマートフォン向け製品が堅調に推移しました。
◇住宅
売上高は前年比+6.2%の9,544億円、営業利益は+10%の830億円と増収増益となりました。
事業別に見ていくと、住宅事業は、建築請負部門が物件の大型化・高付加価値化による平均単価の上昇や固定費の削減が進んだものの、資材価格の高騰や工事数量の減少により、減益となりました。
一方で、不動産部門が賃貸管理事業の堅調な伸長に加え、分譲マンション事業も都心部の高額物件の販売が多かったことから、増益となりました。
海外事業部門についても、北米事業は木材市況下落に対し高い売値を維持できた前年度に対して収益率が悪化し減益となった一方、豪州事業が資材費・労務費高騰の影響を大きく受けた前年同期に対して、当期は価格転嫁が進捗し、増益となりました。
また、建材事業は、価格転嫁の進捗により、増益となりました。
◇ヘルスケア
売上高は前年比+11.5%の5,538億円、営業利益は+15.8%の485億円と増収増益となりました。
売上・利益ともに二桁増と堅調に推移しました。
事業別に見ると、医薬・医療事業においては、Envarsus XRなど主力製剤の販売が順調に推移しましたが、前年に計上されたライセンスの一時金収入の減少や、Veloxisの販管費が増加したこと、Bionovaの新規連結に伴う減益影響などにより、 減益となりました。
クリティカルケア事業においては、LifeVestの保険償還状況の改善や除細動器の価格転嫁の 進捗、部材調達難の改善に伴うAEDの販売量の増加により増益となりました。
◇2024年度業績予想
それでは2024年度業績予想に関しても概要を見ておきましょう。
売上高は前年比+4.6%の2兆9,120億円、営業利益は+27.9%の1,800億円と増収増益の見込みです。
3部門全てで増収増益の見通しですが、特にマテリアル部門では前年の定修影響や減損による償却費減少などにより大幅な増益を見込んでいます。
2.BSの状況
次はBSの状況について見ていきましょう。
資産全体としては前年末から+2,088億円増加しました。
流動資産は+1,618億円増加しましたが、そのうち現預金で+869億円の増加が見られました。この点に関しては後のCFの状況で見ていきます。
それ以外では円安の影響もあり、売掛金や棚卸資産で増加が見られました。
売上高全体に占める海外分の割合は52.8%なので、やはり為替の影響を大きく受ける構造になっています。
固定資産に関しては+470億円増加しましたが、そのうち退職給付に係る資産で+160億円、繰延税金資産で+386億円の増加がありました。
退職給付に係る資産の増加は、ここ最近の株式市場の好調さが起因していると考えられます。
負債に関しては+556億円増加しましたが、そのうち支払手形及び買掛金は取引高の増加・円安の影響等もあり+326億円の増加が見られました。
また短期資金調達手段としてコマーシャルペーパーを発行しています。
コマーシャルペーパーは基本的には無担保なので、これを発行できる時点で財務的に健全であることの左証となっています。
純資産に関しては+1,532億円増加しましたが、一番大きな増加要因は「為替換算調整勘定」の+1,523億円の増加です。
これは海外子会社を取得した時の為替レートと今回の期末レートの差から生じるため、為替が円安に動けばその分「為替換算調整勘定」の金額は大きく触れてきます。
3.CFの状況
次にCFの状況について見ていきましょう。
CF全体としては前年末から+880億円増加しました。
内訳としては営業CFで+2,953億円、投資CFで△1,426億円、財務CFで△943億円という内容です。
営業CFは税引前利益で+288億円稼いでおり問題ありませんが、それ以上に減価償却費とのれん償却費で合わせて1,821億円あり、この部分で営業CFの大部分を稼いでいます。
この”償却費”の割合が大きい点が特徴の一つと言えます。
投資CFに関しては、設備投資の金額自体は前年より増加していますが、前年は子会社株式取得で△784億円の支出がありましたので、その分今回は支出が抑えられています。
ちなみに次年度の設備投資金額は大きく増加する予定です。
財務CFに関しては、社債・コマーシャルペーパー・借入金の返済が進んだことによりマイナスとなっています。
また株主還元の一つである配当金は、ここ暫くは減配することなく推移しており、次年度は今回と据え置きで36円/株を予定しています。
4.まとめ
最後にざっくりですが全体のまとめです。
さすがと言いますか、財務三表全て良好な結果でした。
また年初からの株価の推移は以下の様になっていますので、ご参考までにご覧ください。
今回の決算内容3分解説は以上となります。
次はどの会社の決算を見ようかな?
マサキタカオ
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