見出し画像

すずめの戸締まりを見た

『すずめの戸締まり』を見ました。タイトル通りです。
以下まったくネタバレに配慮しないので、映画を見てない人は読まない方がいいと思います。読むな。読んでからの苦情は受け付けません。
よろしくお願いいたします。
どうぞ。






感想やら何やらをとりあえず書くことにする。

最初のシーンに関しては、あとで触れることになると思うので一旦置いておく。
まず、すずめの家庭環境から話を始めたい。
新海誠って本当に家庭環境に何かある子ども好きなのねとしか言いようがない。新海誠作品の女の子の片親率異常じゃないですか?そういう好みなのか何か訴えたいことがあるのかわからないけど。
特に今作では、すずめが元々片親だった母を亡くしてその妹である環おばさんに引き取られる。すずめはすずめ、環さんは環さんなりに思うところがあって作中でどんどん関係が拗れていくのが見ていてつらかった。
環さんに関して言えば、作中の「現在」の時点で40代、12年すずめを育ててきたということは、姉を失い4歳の子を自分で引き取った時はまだ20代後半〜30代前半だったはず。この世の中で言及するのはあまり好ましくはないとわかりつつも言わせてもらうならば、結婚適齢期である。料理上手ではつらつと働く彼女は、本来引く手数多な女性だったのだろう。作中後半でSAですずめと口論になるシーン、本当にキツかった。後に環さん本人も「心の奥底で思ってないわけじゃないけど、それだけじゃないから」というようなことを言っていたが、本当にあの時限界だったんだろうなと思うとつらかった。新たな恋愛をするとき、自分の子でさえ目の上のたんこぶだと思うことがあるかも知れない。ましてや環さんに関しては自分の子ですらない、でも大事な子なのに変わりはないし。自分の人生を自分で生きたい気持ちを抑えてずっとすずめを母である姉の代わりに育ててきたのかなと思うと、確かに作中のすずめの行動はいただけない。
一番最初の扉が開いてしまったあの日の朝、環さんは「(残業で)夜遅くなる」と言っていた。それにも関わらず、あの日起こった地震のあとすずめに連絡が繋がらないからとわざわざ家まで急いで戻ってきていた。その後のすずめがダイジンと椅子になった草太を追いかけてフェリーに飛び乗った時も、帰らないすずめを悪い男に捕まってるんじゃないかとまで心配していた。さらにその後もずっと、長文やら電話やらですずめがどこにいるのか、誰と何をしているのか、心配している旨をすずめに伝え続けていた。極めつけは、仕事を休んで東京まですずめを追いかけて出てきた。宮崎から、東京まで。
当然である。すずめはまだ16歳で、環さんはすずめの保護者なのだから。周りの人たちは「反抗期」だの「家出」だのいろいろ言っていたが、すずめが家を飛び出したあの日からの環さんのことを思うと胸が締め付けられる。環さんはただ、ただすずめのことが心配だっただけなのだ。田舎でただ生きていた少女が制服のまま、大きな荷物も持たずに遠く遠くへ旅に出ることの無謀さや危険さが環さんにはわかっていたはずだ。すずめに何かあったら、環さんは自分を恨むことだろうし、姉に顔向けできないだろう。
一方で、すずめの気持ちもわからないわけではない。非現実的なことが立て続けに起こり、一刻を争う、大勢の命がかかったことがいつ起こるかもわからない不安の中で、16歳の少女に余裕などないはずだ。そしてあまりにも非現実的すぎて、誰に言ってもきっと信じてもらえないしうまく説明できるはずもないというのも納得できる。だからこそキツかった。どちらが悪いとかではないのだからこそつらい。
終盤の環さんが自転車を漕いで、後ろにすずめが乗って、お互いに思うところを話すシーンでは信じられないくらい泣いた。環さんが、「あの時のは本心じゃない」などと言わなかったところが、すごくよかった。嘘ではないけれど、あれだけが彼女の思うところではないというのがすずめにも伝わっていたのが、本当に、よかった。
あと、他の登場人物としての千果ちゃんは両親と弟がいてみんなで民宿をやっているという、ある種すずめの正反対の家庭環境だったのも印象的だった。いい子だったな、千果ちゃん。
それとルミさん。彼女はすずめを拾ってくれた時と夜のスナックでの時とではガラリと印象が変わっていていい味を出してるキャラだった。彼女もおそらく片親、子どもめちゃくちゃ元気だったな。双子かな。お店で働いてた女の子めちゃくちゃ可愛くてタイプだった。



話すぎた。
次、ダイジン。
私としては、作品を見ている間で一番いろんな感情を抱いたのがダイジンだった。
最初は急に話し出すネコ。餌をあげたら懐いて可愛い!と思ったらすぐに何か(草太を椅子に)して逃げまくる。どういうこと?もうなんか、え?どういうこと?で頭がいっぱいだった。すずめのこと好きって言ったよね?なんで草太さん椅子にするの?なんで逃げるの?なんでこんなに意地悪なの?と思ってたら、別にダイジンはすずめに意地悪をしていたわけではなかったんですよね。むしろ、すずめのことが大好きで大切だから、喜ばせたかった。それがただ思ったようにいかなかったというだけで。
ダイジンからしたら、すずめは自分を要石という役割から解放してくれた恩人(という表現が正しいかはわからない)で、会いに行ったらすずめは自分のことを助けたとも知らなければ、自分の正体も知らないはずなのに魚とミルクをくれた。そりゃ、ダイジンもすずめのこと好きになっちゃうよねえ。だから、ダイジンはすずめと一緒にいたかった。要石としての役割を、ちょうどそこにいた草太に与えようとした。幸か不幸か役目は与えられたものの、草太は石の杭ではなくすずめの大事な椅子になってしまった。手足付きの。石の杭であれば動けなかったはずなのに、手足があるから追いかけてくる。ついでにすずめも追いかけてきたのはラッキーだったんじゃないかな。
すずめが後ろ扉を閉めようと動いていることを知っていたダイジンは、ずっとすずめを開きそうな後ろ扉へ導き続けた。電車や道やいろいろな場所であえて目立つ行動をとることで、周りの人達が自分の姿を写真に撮りSNSで拡散してそれをすずめたちが見つけて追いかけてくることまですべて計算だったのではないか。神だし。何よりも、確かにダイジンはいつもミミズが出ている後ろ扉の場所にいたが、手遅れになる前にすずめたちがその付近にいるように仕向けていた。スナックですずめが働いていた時も客として人に擬態していたが、逃げて外に出た。それをすずめは追いかけた。その結果遊園地に後ろ扉があることに気づいて駆けつけた。
すべてすずめのためだったのだ。東京で、ミミズがすべて出てしまった時にはまるですずめを追い詰めるかのように「たくさん人が死ぬね!」などということを言っていたが、別にあれもすずめを追い詰めたかったわけではないのだろう。事実を言ったまでだ。ダイジンは神ではあるけれど、痩せ細った子猫の容姿とその言動から、神としてまだ幼いと思われる。だからすずめがあの場面であのセリフを言われた時どう思うかなど考えてなかったはずだ。ただ、すずめのために動いていただけのはずで。はぁ。
すずめと一緒にいたかったダイジンからしたら、ずっと椅子の姿になっても草太が邪魔だったのだろう。そして草太は自分に代わって要石としての役割も持っている。椅子になった草太をミミズに刺しておさめれば、たくさんの命を守れるしミミズも防げるし自分はすずめと一緒にいられる。ダイジンにとってはこれで万々歳のはずだったのに、すずめにとってはそうではなかった、あまりにも彼女の中で草太の存在が大きすぎた。ダイジンとすずめはずっとすれ違い続けていたのだ。泣く泣く要石として草太を使ったすずめが地に落ちていく時、彼女を守ったのは他でもないダイジンだ。でもそれをすずめは知らない。だから東京の地下の後ろ扉ですずめはダイジンに実質的な契約の終了を言い渡した。決別である。ダイジンのすずめの思う気持ちは確かだったけれど、上手くいかなかった。
それでも何も言わずに最後までダイジンがすずめについてきたのは、それほどすずめのことが大事だったことに変わりがなかったからだろう。最終的にダイジンは元の要石としての役割に戻る。自分ではすずめのそばにいられない、いや、すずめが草太を思う気持ちに勝てない、草太の代わりにはなれないとわかっていたはず。だから、すずめが草太の代わりに要石になると言った時、自ら要石となっている草太に噛み付いた。自分が元の役割に戻るべきだときっとわかっていたはずで、だから、サダイジンも一緒に最後の地まで来た。つらい。本当にすずめのことが好きだったんだろうな。ただ人間ではないから、人間に寄り添いきれなかった。どうあがいてもダイジンは神様だった。人に優しくされて、不器用ながらも愛を返そうとした人外とかいうものに弱すぎてダメ。ダイジンを引き取りたいです。


次、芹澤朋也くん。
なんですか?彼は。
教員採用試験の2次に草太がいないからわざわざ部屋まで来るし、2万円貸してるからと嘘までついて草太を探すすずめに協力して東京から宮城まで車を出す(本当は2万円借りていたのは朋也の方)くらいの親友なくせに、作中でまったく草太と会話しない。下手したら1ターンも会話してない。部屋行った時はもう椅子(朋也は知らない)だったし、最後環さんと実家跡で待っていた時も声をかけただけで会話はしていないし、草太が電車で1人帰る時もすずめに譲って環さんと会話してるし、あれ?
不自然なくらい朋也と草太の関係の描写がないことに何か意味があるのか。
茶髪でピアスとイヤーカフをしっかりつけて派手な柄シャツを着る典型的な陽気なお兄さん朋也と、かなり落ち着いた印象の草太がなぜそこまで仲がいい(はず)のか。仲がいいはずなのになぜ作中での絡みが全くないのか。何もわからない。ただ、朋也くんが、本当にいい人で。
草太の事情を詳しくは知らないようだったが、2次試験に来ないことを心配するあまり自分も疎かになったと言っていた。ボロボロの車でも草太を探すためなら遠くまで走らせていた。すずめと環の関係が思いの外拗れて闇が深そうでも、触れすぎず離れすぎず見守って、ドライブ中には重い雰囲気を飛ばすかのように昭和歌謡を流して歌う。気遣い完璧お兄さんすぎて普通に好きになっちゃいそうで困った。罪深い。作中で特に誰かとどうにかなるわけでもないし女の影も一ミリもないのがかなり罪深くて困りますね。



泣き疲れ書き疲れたので一旦終わりにします。
あとで触れることになるとか言ったけど全然最初のシーンに触れる前に力尽きた。また気力があればいずれ。あと2回くらい見たいな。
それでは。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?