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就活本にはない ”長期投資家の企業分析の7つの視点”

初めに告知
4月17日(日) 長期投資家コミュニティ stockpickers 開催します
以下のリンクからどうぞ

今回は就活生の参考になる”投資家視点の企業分析”について書いてみたい。

よく、ありがちな

”就活に財務分析(企業分析)を生かす”

というような記事、正直言ってどれも物足りない。

例えば、

(ごめんなさい、否定するつもりはないのですが)

私自身は何もやらなかったので、今更ですが、もし今私が就職活動をするなら、ということを考えるともっともっと深く調査が必要だろうと感じた。

大学生、いろいろ忙しいと思うが、

敵を知り己を知れば百戦危うからず

である。(孫氏の兵法より)

相手を知り尽くすことにもっと注力すべき。
その時、投資家視点の企業分析が有効だ。

”投資家視点の企業分析? 決算書が読めればいいんでしょ?”

答えは NO!

”財務分析” ができても就活にどれだけ効果があるのかな

例えば財務分析をして、就職の面接で

”利益率が高いですね”
”収益性高まってますね”
”同業他社がXX%なのに御社はXX%と高いですね”
”自己資本比率が高いですね”

それを言われた面接官はどう反応するだろう。
(どう答えるかはわからないが)

”はい、その通りです”

という感想だろう、そんなことは会社の方は当たり前に知っていること
人事がそれを知らないレベルの会社なら、重宝がられるかもしれないが・・
きっと希望する会社はそういう会社ではないから就活に苦労しているのだろう。

〇”投資家視点の企業分析とは”

投資家にも様々なスタイルがあるが、特に長期投資家の企業分析が就活に活かせるのではないか。
長期投資をする際に、重要なのは業績などの定量分析と同様に定性分析もしっかり行うことである。定量分析は数字というわかりやすいものを分析するため、同業他社比較や過去との比較がしやすいため、定量分析だけでわかったつもりになってしまいがちだ。
むしろ定性分析のほうが重要であることを強調しておきたい。

また、定量分析と定性分析を結び付けて行うことが不可欠となる。

”結び付ける”

とは

定量分析をした結果を元に定性分析を行う、ということ。定量分析を行い、なぜそのような数値になっているかを定性面を結び付けて調べて理解する。
定量分析は企業理解の一部分に過ぎない。

〇定量情報と定性情報はつながっている

”定量情報と定性情報はつながっている”
当たり前ですね

”社員を増やせば固定費が増える”

”研究開発費に大量に資金を投入すれば、コストは上がり、利益は下がる”

では、どんな社員を採用しているのか、何にコストをかけているのか、何にどのくらい研究開発費をかけているのか。どこに向かっていくのか。
定量分析と定性分析は切り離して考えることはできない。

その企業をよりクリアに理解する必要がある。
どのように深堀をするのかを分解して考えよう。

〇就活こそ長期投資家の7つの視点を持つ

次のようなポイントを意識して調べると参考になる。

①経営理念やビジョン、マネジメントの考えに共感できるか?
②どんな社会課題を解決しているのか?
③何によって解決しているのか
④業績・財務は安定しているか? 成長しているか?
⑤過去の実績は?
⑥経営計画や戦略は明確か?
⑦経営課題とリスクを明確にし、対応策が提示されているか?

といったことになるだろう。
投資家の方なら気付くはず。
どれもIRの開示資料には書かれている項目である。

どのように見るかをそれぞれの項目で見ていこう。

①経営理念やビジョン、マネジメントの考えに共感できるか?

”経営理念やビジョン”
ほとんど企業のWEBサイトにほぼ必ず載っている。IRサイトやIRの説明会資料にも掲載する企業は増えてきた。
説明会資料については、社歴の長い(または上場後の期間の長い)企業はいまだに”数字情報のみ”という例も少なくないが、必見、必読。
”マネジメントの考え”
多くのサイトでは社長メッセージというページもある。
これらをしっかり読んで共感できるか=感じることが大事

形式的にありきたりのことしか書いていない企業もある。
そのことだけを取って評価するのは乱暴だが、外部に対してメッセージの伝えようという努力がない。残念ながら他の情報も期待できないかもしれない。

”その企業に入りたい” という気持ちから調べ始めたとしても、一旦その気持ちは横に置いて、読んだ内容が
”共感できるか”
という点を大事にしてほしい。

就活は恋愛と同じ。
その相手と長期で付き合う可能性があるのだから。

②どんな社会課題を解決しているのか?

なんとなくでも共感できたとしよう。
(まずはなんとなくでもいいでしょう)

次に、知るべきことは
”どんな社会課題を解決しているか”

”服を売る”
”ゲームを開発している”
といった
”(具体的に)何を提供している企業か”
に目が行きやすい。

しかし、企業の将来を知るうえで
”どんな社会課題を解決しているか”
ことのほうが非常に大事なことである。

”企業は社会課題を解決するために存在する”
誰かの困りごとを解決することで、その対価として収益を上げている。
”その企業はどんな社会課題を解決しているのか”
という視点で見てほしい。これは、IR資料などに直接的に記載されていることもあれば、ないこともある。
記載されていないときには、自分の妄想でいい。
”この企業の売り上げが伸びると社会はどう変わるのか”
を考える。開示情報に記載があっても、自分なりの妄想を付け加えてほしい。
企業の成長、活躍で社会が変わる。その社会が明るい、生活している人たちにとって素晴らしい社会であればその企業の成長は期待できる。

③何によって解決しているのか

何によって=解決の手段を知るということ。

どんな社会課題を解決しているのかを理解したら、その解決策を解像度を高めて深堀してみる。その企業がその課題を何によって解決しようとしているのか。
”服を売る”
”アプリを提供する”

これらは社会課題を解決するための手段である。
その企業の外側から見える部分だけでしかない。
そこで
解像度を高めて自分のやりたいこととマッチする部分を探す
具体的なイメージができれば、自分がやりたいことと結び付けることができる。”服を売る”としても、様々な人が関わって実現していること。
企画、デザイン、マーケティング、どういったことでも自分が関わることができることはあるはず。

もう一つ、大事なことは
今の事業は解決するための手段でしかないということ。
強みを生かせる現在の事業で解決に取り組んでいるが、ミッション・ビジョンをもとに社会課題の解決にフォーカスしているのであれば

提供するもの=手段は変わるかもしれない

服を売っていた企業が、靴を売るかもしれない、家具を売るかもしれない。モノを売るのではなく、サービスを売るかもしれない。

解決しようとする社会課題にフォーカスすることでその手段は無限に広がる。

④業績・財務は安定しているか? 成長しているか?

ここからやっと、財務分析に入る。
分析するうえで見る情報は連結業績だけを見ても意味がない
会社の規模・会社全体の収益性という”ぼんやりしたもの”しか見えない。
また、一般的な財務分析で安全性、収益性、成長性、などが理解できても、ほとんど意味がない。
長期投資においても表面的な数字の分析はほとんど役に立たない。
一般的な安定性、成長性、収益性などの指標も見つつ、
解像度を高めて、セグメント別、サービス別の情報を見る

一般的な指標にはXX%がよくて、XX%が悪いということを一概には言えないが

売上総利益率=製品・サービスの付加価値の高さ

営業利益率=製品・サービスのユニークさ、競争力の高さ

という視点で見てみるとよいだろう。

例えば、
”非常に付加価値が高い商品・サービスを提供している”
と思ったが、売上総利益率や営業利益率といった収益性が低く

”提供する製品・サービスの付加価値は思ったほど高くないのか?”
”ユニークな製品・サービスだと思ったが他社も提供していて競争が激しいのか?”
と言ったことに気付くきっかけになる

財務分析はたくさんの本が出版されているので、面白そうな本を手に取ってじっくり取り組んでみてほしい。

先日紹介したこちらの記事に掲載した本もおすすめ

⑤過去の実績は?

長期投資家は長期で投資しようと考えるとき、有価証券報告書、決算短信などをできる限り長期の過去にさかのぼり、
・どんな経営判断をしてきたか
という視点で見る。

例えば、リーマンショック、バブル崩壊といった、過去の社会の大きな変動があった際に

売り上げ減少でリストラをしたのか

逆にチャンスととらえて設備投資、研究開発を積極化したのか

ということ。

過去にリストラを行った企業は、また何か不測の事態が起こった場合にリストラをするかもしれない。社員は安心して仕事に取り組むことはできない。
一方でリスクを取って設備投資した、研究開発を積極化した企業は正常化後に競争力を高めているかもしれない。
危機的な状況での経営判断が社員のエンゲージメントや将来の競争力に影響する。

日進工具という企業は仕事がなくなったときに”今は学ぶとき”と社員には勉強をさせ、研究開発は続けた。研究開発費の推移をみると売り上げが下がっている時でも研究開発費を維持したことがわかる。

長期投資家の視点は、
過去10年を見ることで将来10年に向けて投資することができる
過去30年を見ることで将来30年に向けて投資することができる

⑥経営計画や戦略は明確か?

IRとして中期経営計画を発表している企業については中期経営計画の資料をチェックする。発表していてもIR情報のサイトから探しにくいことがある。

”企業名+中期経営計画”

で検索すると見つかるかもしれない。

注目すべきポイントは
”どこに向かっているのか”(何を為そうとしているのか)
”どんなスピードで進むのか”
”どんな製品・サービスで実現するのか”

を確認し、具体性があるのかを確認する。

*市場再編に関連する注意点

東証の市場再編があり、プライム市場を目指す企業で時価総額で条件未達となっている企業において積極的な中期経営計画を発表している例が目立つ。

積極的に成長を目指そうという意識か、注目を集めるために無理な計画を立てていると思われる企業もある。外部からは妥当性はわからない。具体性、納得感のある成長シナリオが提示されているかを見極めたい。

⑦経営課題とリスクを明確にし、対応策が提示されているか?

リスクと対応策は有価証券報告書や説明会資料に記載されている。企業のリスク要因を把握し、その企業がどのような対応策を考えているかを知ることは企業の事業環境、提供する製品・サービスを理解するうえでも参考になる

上記の①、②同様に”とりあえず書いた”ように感じる企業も稀にある。

上場企業として不適切と思われ、就職先としても大きなマイナスといってよいのではないか。

〇アフター就活にも生きるノウハウ

企業分析した結果、その企業に決めて申し込んだとしよう。採用となればハッピーだが、残念ながら不採用となったとしても、その努力が無駄にならないのが”長期投資家視点の企業分析”の良い点だ。

・社会課題に取り組んでいることを知り、社会の変化を知ることができた
・その社会課題の解決に関わりたいと考えたとき株主としてかかわることができる

自分を不採用にした企業に投資したくない などと言わずに、就活の努力をぜひ活かしてほしい。

投資家視点の就活は就職後も活かせるスキルとなって残るはず。

おおぶね のファンドマネジャー 奥野氏のつぶやき

”事業を見る眼(=インベスターシンキング)は企業投資を通じて養うことが可能で、この能力は、就職、昇進、転職に有効です。 投資金額にもよりますが、投資そのもののリターンよりも人生へのインパクトが大きいかも。”




<就活に効くサイト>

①企業のIRサイト

就活生は”採用ページ”ではなく、IRサイトを見よう!

就活生が向かうべきは採用サイトではなく
その企業のIRサイト
企業からのメッセージをチェックし、IRライブラリーにアクセスしよう。資料の充実度は企業別に異なるので、同業他社のIRサイトにもアクセスしてIRライブラリーの資料をチェック。

②投資家向けサイト

投資家向けIRサイトは大量にあるが数字情報が大半だが、
網羅性でいえば、

株探

企業の投資家向け情報であれば

バフェットコード

https://www.buffett-code.com/

動画なら

IR動画サイト:社長から投資家向けのメッセージを見ることができる

たくさん散らばっているIR動画をまとめたキュレーションサイト

例えば、4378 CINC の個人投資家向け説明会の動画
(以下、クリックするとIR動画サイトが立ち上がります)

石松社長がどんな方なのかを知るだけでなく、13分10秒あたりから平副社長からのサービス内容の紹介もめちゃめちゃ面白い。会社の雰囲気を感じることができる。

長期投資家の視点で企業を見ることで就活はより楽しくなること請け合いである。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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*告知
4月17日 第3回 長期投資家コミュニティを開催します
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