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2585 ライフドリンクカンパニー の本質的な競争力の源泉を知る

割引あり

開示資料を基に思考を広げて、レポートにまとめました。

9月9日(土)の勉強会で話した内容です。
いつもより長めに書いております。
話した内容はこの3倍くらいですが。

記事を読み進める前に一つ問いに答えてください。

皆さんの自宅では普段飲む水やお茶はどうしていますか?
①水道
②水道+浄水器(私はこれ 東レのトレビーノ)
③宅配サーバー
④ペットボトル

勉強会に参加していただいた方の多くは ② でした。
皆さんはいかがでしょうか。

では、レポートに進みたいと思います。


<自社>

〇事業内容

ドリンク・リーフ事業 の単一事業
水飲料/茶系飲料/炭酸飲料・茶葉製品の製造・販売

ドラッグストア、スーパーなどにPB(プライベートブランド)として販売している。(一部自社ブランドのECあり)

〇企業理念

美味しさの中心:
例えば味であればよりエッジの効いた味ではなくていろんな人たちに受け入れられるような平均的な味、中心的な味というものを目指していきたい

〇業績

・通期業績
営業利益率10%、10%以上の成長

・四半期業績
需要が落ちる 1-3月期にメンテナンスを入れるため、利益率が落ちるがそれ以外の営業利益率は10%以上

・売上総利益率
生産量がまとまってきたため、40%以上で安定

・販管費(四半期)
(自社ECサイトを除けば)広告費を打つ必要はなく、販管費は大きく膨らまない。増収に対して売上高販管費率は低下する。

ビジネスモデルと業績推移からわかることは2つ
①営業利益率は長期的に改善しやすい
②業績予想を立てやすい
ということ。
特に”業績予想が立てやすい”というのはとても大事なこと。
長期の業績見通しがわかりやすいことは資本コストをさげることにつながる。

〇特徴と強み

上記は企業が主張する”特徴と強み”だが、この強みを実現しているものが何かを理解することが重要だと考える。

〇意外に知らない”ビジネスモデルの強さの本質”

圧倒的な低コストを実現するためのビジネスモデル
①過去の生産工場買収
②生産効率の徹底追求:Max生産Max販売
③内製化

①過去の生産工場買収

2015年ごろに多くの生産工場が業績が大幅に悪化し、厳しい経営状況に追い込まれた。これらの工場を買い取る案件が多かった。これはのれんがないことからも推測ができる。

以下の記事の有料部分で簡単に記述していた。

これは神戸物産(業務スーパー)が成功したのと同じパターン
”低採算の工場を買収し、生産品目を絞り、効率を上げる”

今後も燃料費、原材料費が上昇する中で中小の生産工場は厳しい経営状況になることが予想される。よい買収案件が出てくる可能性はあるだろう。

神戸物産の強みを様々な切り口で説明する記事がある。
それぞれが正しいのかもしれないが、それらを実現できたのはこの
”低採算工場の買収から生産効率を引き上げ、圧倒的な低コスト生産を実現したこと”に他ならない。

②生産効率の徹底追求:Max生産Max販売

これは文字の通り読んで字のごとし。工場の能力をフル活用して生産量を最大化して、それに見合った販売先を確保するということ。

③内製化

これも低コストを実現している要因の一つ。本来、外注に出すことで流出していた利益を内製化により内部にとどめる。もちろん、リスクもある。そのためのリソース(人や設備)を社内に持つことは固定費になる。固定費を上回る利益を継続的に獲得しなければならない。
例えば、ペットボトル飲料はペットボトルに中身を詰めてキャップをしてラベルを巻いて箱に詰めるという非常に簡単な工程。他社だとペットボトルを仕入れたり、膨らます前段階のプリホームという試験管みたいなものを仕入れる会社も多いが、同社はその前工程であるプラスチックの粒、レジンを仕入れて、そこから成形機でペットボトルを作るというところまでを内製化している。購入するものに比べて圧倒的な低コストで調達でき、製造することができる。

もう一つ、やっかいなのは、お水、炭酸水、お茶と非常に重いこと。
全国展開するドラッグストア等に納品するときに物流コストの負担が大きくなる。工場を全国展開することで、物流コスト低減を実現している。

〇変化点:選択と集中の終了

過去のM&A:多角化のためにたくさんの事業を買収してきた。
下の図。若干わかりにくいが、
下半分が2013年までの多角化
右上が2015年以降の事業選択による集中

2023年3月期にソース事業を譲渡して事業売却による事業の集中を完了。


<競合との比較>

〇結論:実質的な競合無し

競合だが、結論としては”実質的な競合無し”との結論に至った。
もちろん、部分的な競合はある。しかし、”水道水以外の水市場”全体が大きくなると予想され、競合先も成長し、市場を奪い合うような状況にはならないだろうと予想する。

・宅配水市場:世帯普及率7%

ペットボトルは宅配水ではないが飲料水を購入するという消費者がどれくらいいるかを知るうえで参考になる。日本の宅配水市場は世帯普及率7%程度。(宅配水最大手のプレミアムウオーターの資料より)

他国の普及率は、アメリカが約50%、韓国が推定60%以上。
日本より高い。韓国は安全基準をクリアしており飲めるものの、多くの人がウォーターサーバーやペットボトルの水を購入している、とのこと。

競合となることが予想されるところを簡単にみてみよう。

・宅配水(サーバー)の競合

最大手プレミアムウオーター シェア26%

・飲料

国内の飲料市場は横ばいだが、ミネラルウォーター、炭酸飲料、お茶は緩やかに拡大している。この資料からは読み取れないが、ドラッグストアやスーパーなどのPBの成長率は市場全体を上回っており、NB(ナショナルブランド)→PBへのシフトが起きている。

市場全体が大きくなると考えるのであれば、サーバー宅配水との競合は限定的。価格が全く違うので顧客層が異なる。
ドラッグストアやスーパーなどでPBの飲料を買う消費者が増える場合において、”低コスト”で”まとまった量を供給できる”競合はいない
つまり、実質的な競合が無いということ。
NBがPBを生産する可能性についても否定はしないが、
・生産コストが高い
・NBの自社商品とのカニバリで拡大しにくい

という点でガッチリ競合することはないと考える。

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