読書感想:ブログ「産直ECが小規模農家を疲弊させる3つの理由」

twitterでこんなブログ記事を見ました。

https://treeandnorf.com/3-reasons-of-that-japanese-agriculture-get-whacked-by-an-p2p-direct-markeging-web-service/

感想が140字では到底書ききれなかったので、ここに置いておきます。


□ちゃんとつくれば、ちゃんと売れる?

まず、
”農業で食えている人は、品質の良いものを安定的に低コストで生産している人たち”
には納得。
取引が市場やバイヤーなど大口で中間的位置に立つ相手の時に、最も重視されるのはこの3点で、いつも同じ味で!同じ量を!可能な限り安く!これが1年を通して完璧にできれば、十分に利益が出る値段でバイヤーたちは喜んで買ってくれる(そして逆もまた然り)、というのは法人で流通をちょこっとかじったときに骨の髄で感じました。

ちゃんとつくれば、ちゃんと売れる。篤農家からよく聞く言葉です。
これが、日本の食を根幹から支えているインフラ的役割を担う大規模農家(産地)や既存流通関係者の、統一の価値基準と思われます。

契約栽培においては、野菜の欠品は棚に穴をあけることであり、店舗側の損失になる。そういう責任感をもって野菜を生産する覚悟がない農業者も見受けられるのは事実だし、そういう取引形態においては、有機である!とか耕作放棄地を再生した!とか、ストーリーでカバーできるものではないし正直どうでもいい。

□大量生産・大量消費から次へ?

上記の3点に基づく価値基準は、果たして今後の消費の価値観と合っていくのか?はちょっと疑問。なぜなら、それは大量生産・大量消費社会の中で形作られてきた価値基準だと思うので。

棚をあけないために、店舗の売り上げを最大にするために、多めに投入し、多めにつくり、余ったら捨てる。
例えば、閉店間際のパン屋が棚を開けないように最後までパンを焼き続け閉店後大量廃棄するような、それと全く同じ理屈。
(大学生の時、パン屋でバイトしていてゴミ袋(大)満タン×4のパンを毎日捨てていた。)

そして、いわゆるストーリーテリングをする小規模農家や新規参入者は、それにNOを唱えている人たちです。
特にtoCで消費者をファンとして捉えて、単なる栄養補給ではない、食も豊かな意味ある消費として提案しています。

また、小規模農家はその生産量の小ささゆえに大口の取引をする必要がなく、直売を経営のメインに据え、一人一人の消費者のウェイトを大きくすることができると思っている。(私はそういう農家を目指したい)

ちなみに、産直ECはプラットフォームを提供しているだけであり、”仕入れの客観性”がないのは当たり前。消費者主観でよしあしが決まる、万人が良いと言ったもの(規格)ではなく、逆に自分の価値観と共感できるもの・自分仕様にカスタマイズされたものが好まれる、現代の消費感覚とよく合っているとは感じます。

(一方で、そういう食に関心がない層も増えていて、生産サイドも消費サイドも2極化が進むのかな。というか同じ人でも、場面によって使い分けていく?)

□ストーリーか安全性か?

記事では、
”仕入れの基準が希少性や栽培手法、新規就農・里山保全・担い手の挑戦といったストーリーに偏りがちで、品質と安全性が客観的に評価されず、販売側も正しい判断・管理が困難になります。”
とあります。

が、ストーリー(コダワリ)を見せたからといって品質と安全性の評価が欠落する、というのも違うかな、と。
両者は無関係なので、まずは前提条件として品質と安全性を担保しましょう、その上で別次元の話としてストーリーを付加価値としてつけましょう、
という見せ方ができるようなプラットフォームであればよいのでは?

ちなみに、安全性に関してはまずはGAPに対応するのが現時点で最も合理的だと思っております。審査項目に沿っていけば、農場管理全体が見える化されて、食に関する法令も網羅される仕様になっているからです。

□安定供給と持続可能性

記事では、栽培技術が高ければ環境負荷をも抑えることができるような書き方でしたが、私の意見では、特に”安定性”の追求においては環境負荷を大きくすると思っています。
なぜなら、本来は適期が限られる野菜をより広い期間生産するには、相応の資材の投入が必要になってくるからです。

・ビニールハウスをつくって雨風による被害を防ぐ
・冬は重油を炊いて温度管理をする
・虫の発生の多い夏は農薬散布回数を増やす
などなど。


まあ、それは価値観の優先順位の問題で、どんなに新規だろうが小規模だろうが、環境負荷を増やさない範囲内で、品質の向上・安定生産の追求はやめちゃいけないと思いますけどね。


□さいごに

正直産直ECのよしあしは分からないし、都市農家としては物流が宅配である限り主たる取引にはならないかな〜とは思っているけど、中の人々がとても熱いのは知っているし、どんな問題も解決していくのでは、と思っております。


次回のブログで核心にせまるらしいので、とっても気になります。

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