14.0003嘘のような本当の話ってある
風邪をこじらせ入院したとき、父はかなり体が弱っていた。
確か、私が中学校の頃から暑い時期と寒い時期は入院していたように記憶している。
そんな風だったから、私が妊娠している時も、父が買い物などで車を運転してどこかに連れて行ってくれるような余裕は、なかった。
普段の生活は、大丈夫だ。
でも、すぐに病院へ行かなくては!という緊急時は本当に困った。
タクシーも呼べず、救急車を呼ぶほどでない。すぐに頼れる人がその時いなかった。
そんな時に、我が家にやってきた人がいた。
もう、その人は亡くなってしまったので、ここでお話をしてもかまわないと思う。
その人Nさんは前科のある人だった。いわゆる元ヤクザだ。
我が家は真面目な家族で、そういった世界の人とは全く無縁に生きてきた。
が、父が長いこと入院していた病院で、たまたま父と同室になったのがNさんだった。
Nさんは、その時覚せい剤使用で警察から追われた際に2階から飛び降りて足を骨折し、入院し捕まったと聞いた。
私が会った時は、すでに父とNさんは何度目かの入院仲間で、Nさんは肝硬変が悪化している状態だったかと思う。
顔はどす黒く、初めて見る入れ墨と、足を洗った証拠の1本足りない4本指の手に、私はビビっていた。
だが、父は本当に今思っても不思議なくらい、
どんな人にも同じように優しかった。
「Nさんは、いいひとだよ」と私たちに話していた。
Nさんが我が家に来ることに最初は抵抗があった。
普通はそうだろう。
だが、父は家に来てくれたNさんを快く受け入れた。
Nさんは、ある時話してくれた。
「実は、大口さん(父)をだまして、何百万円か盗ったろう、と思っていた。。でも、あまりにも大口さんがいい人だから、そんなことできなかった。本当に悪かった。」と。
今思いだしても泣けてくる。
Nさんは、父に会って最後に改心したんだと思う。
Nさんはまもなく末期の肝臓がんの診断がでた。
『最後に大口さんにできることを、、』と父の娘である私が不調の時、いつも、どんな時もすぐに車で病院へ連れて行ってくれた。
感謝している。 ありがとうございます。
そして、Nさんより早く、父は亡くなってしまった。
だれも予想してなかったのに。
Nさんは、
「大口さんに、この赤ちゃんのぬくもりをちゃんとあの世で伝えてあげるからね」と生まれたばかりの娘を抱っこして、
父の後を追うように数か月後に亡くなられた。
▶私はこのnoteを、シングルマザーの人たちに少しでも共感を持って
もらったり、私の経験を読むことで「よーし、明日からもがんばろう!」
と、明るく未来を語れる自分になってもらえたら・・・との願いを込めて書いています。
ひとり親になることを選んだのは、多くはシングルマザーの決断によると思います。死別ではなく、自らの意思による離別により、シングルで子供とともに生きることを選んだのは自分自身だということを胸にとどめることが大切だとも思っています。誰のせいでもなく、自分が選択した結果が今なんだ、と強く感じています。
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