広告をめぐる政府(間組織)とメディアの政策協調

国連女性機関と日経新聞とのマンガ広告をめぐる一件が話題になっています。

今回の広告は諸々の周辺事情もあり、これを日経のようなクオリティペーパーに掲載できないのも当然だよねという結論が先に見えてしまう部分もあるわけですが、国際機関がメディアと締結する協定等の在り方については、留保すべき事柄がいくつかあるように思います。

少し前に大阪府と読売新聞の包括連携協定も話題になりましたが、地方や国や国際間の政府と、メディアの協定というのは、メディアの自由意思で締結したのだから表現の自由とは無関係とはならないわけです。

それは、メディア自身の自由の問題だけでなく、人々の知る権利や、プラットフォームを介してのコミュニケーションの自由にも直結する問題です。
この種の協定が、さまざまな分野において手法として一般化しつつある現代においては、特に注意が必要でしょう。

特にこのアライアンスには、Google、Twitter、Facebookといった主要な広告プラットフォームが軒並み加盟しており、個々の企業の問題とは言えない性質があります。

また、新聞に掲載される出版や放送や映画の広告には、思想信条やライフスタイルの一致しない人たちが、自分とは異なる(時には相容れない)人たちの存在や様子を、横目で時々は見ることで、同じ社会を成立させる役割もあるわけです。

ジェンダー平等だけでなく、自殺の問題や、麻薬やタバコやアルコールの問題等、多分野において、地方や国や国際間の政府機関が、メディアとの協定による政策推進を行っているわけですが、協定の作り方や適用解釈においては、こうしたメディアの役割も十分に尊重することが必要なのではないかと思います。

こうした協定が、投資適格基準として機関投資家などに類型的に用いられるようなことを想定する場合には、いっそうの注意が必要になってくるでしょう。

私の意見ですが、「漫画を活用した(一般商品の)広告」と「漫画作品自体についての広告」とでは文脈を区別して、後者は表象等を使用した合理的な理由があり得るといった形で、協定に「解釈の余地」を残し、書籍流通への過度の影響は避けることが望ましいのではないかと思うところです。

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