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不安と共に前に進むスキル

「あ、それでいいんだ」


僕が某職場(某ベンチャー)で事業部長の役割をしていた時でした。事業の次の方向性についてどこに向かって進むべきか、決め手がなく、僕は立ち止まっていました。

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元々周りの人が何をしてほしいのかはすごく敏感に感じ取ることができる性格だったので、その職場に入社してから、周りの信頼を獲得するのは比較的スムーズだったと思います。

やったことは凄くシンプルで「入社後、MGR全員に話を聞いて、困っている、課題と感じていることで、自分ができそうなことを最速で片っ端からやる」を実行しただけでした。

逆の立場になって考えると当たり前かもしれませんが、ベンチャーで人手が常に足りず、課題がたくさん落ちている時に、新たに入社した人が自分の困っている課題を解決してくれたら「いい人が入社してくれた!助かる!ありがたい!」って思いますよね。シンプルにそれを実行しました。自分が何をやりたいかとか、そんなのはどうでもよく、シンプルに組織にとって課題になっていたものを取り除くことが(色んな意味で)一番手っ取り早かったです。

しかし、事業部長として(ありがたくも)「あなたの思うように事業を作ってください」となった瞬間に、この手法は通用しなくなります。もちろん会社全体としてその事業に求められる要件はあって、そこは押さえる必要がある。けれどもそれ以外は圧倒的に自分で道を作らなければいけない。

上長も正解は持っていない。その中で、自分の正解だと思う道を、色んな人に色々言われたとしても「正解だ」と進む必要がありました。

このことは、頭では分かっていましたが、今思い返してみると、ほんとうの意味では全く分かっていなかったのだと思います。

僕は大いに立ち止まり、そして迷いました。新規事業と行っても、営業、プロダクトチーム、マーケチーム、全員合わせて20人弱はいます。その中で自分の意思決定が間違っていたら、みんなを路頭に迷わせてしまう。。

そんな僕の決められない姿を上長が見てなのか、たまたまなのか、事業部に救世主が現れました。その方は僕よりも遥かに経験豊富で事業を作って来た方でした。営業部長についてくださいました。

迷ってる僕に気を使ってくださりながらも、その方は言いました。

「うーん、分からない!わからないけど現状考えられる最善手はこれしかないから、まずはこれでやってみよう!!」

1ヶ月の検証の後、その方向は間違っていることが発覚しました。その際のその方の発言は、今でもはっきりと覚えています。

「ごめん!ダメだ。撤収しますわ!」

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「あ、それでいいんだ」

そんな簡単なことだったんだ。そんな簡単なことが、怖くて踏み出せなくて、事業を止めてしまっていたんだ。

そしてその1ヶ月で走りながら気づいた事実を元に、事業は前に進みました。

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この事件は、僕にとって(圧倒的な力不足を痛感すると共に)大きな学びを与えてくれました。

新しいことをする時は、誰も正解を持っていません。もちろん参考になるものはあると思うし、パーツパーツでベストプラクティスがあると思いますが、究極的には正解は存在しません。

そんな中で、自分で未来を描いて、そして色んな困難にぶち当たりながらその未来の実現のために前に進むというのは、とても不安で苦しい戦いです。

でも、その不安で足を止めてしまうのか、不安な中でも前に進むのかは大きな違いです。

そして、前に進むのは気合や根性や覚悟だけではなく「スキル」なんだと学びました。間違えた時の学び方、振る舞い方をスキルとして学べば、強い覚悟や根性がなくても、そんなに痛くなく転ぶことができる。いわば「受け身」のスキルを学べばよいだけなのではないか。

自分で描いた未来を自分の足で進む際に、必ずやってくる(正解がないことからくる)不安というものを、うまく処理しながら前に進むスキル。進んでみて間違っていたと感じた時に心にダメージをあまり負わずに修正するスキル。そういったスキルを学ぶことで、むしろ不安は、不安があるからこそ綿密に丁寧に前に進めるようなセンサーのようなポジティブな役割を果たしてくれるはずです。

これは、できる人からすると「今更?」みたいな話かもしれません。はい、お恥ずかしながら30歳過ぎてから学びました。遅いかもしれません。でも、僭越ながら、僕のように正解のない道を、不安で進めずにいる方も一定いらっしゃると思い自己開示させていただきました。

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今僕は、自分の会社で、Awarefyというセルフケア・アプリを作っていますが、このサービスのベースである「ACT」と呼ばれる認知行動療法では、「不安をなくす」のではなく「不安があっても行動できる」ためのトレーニングを行います。

人間は言語を生み出したことで、学習スピードが他の動物よりも飛躍的に早くなった一方で、言語によるネガティブな学習も強化されてしまいました(これらの言語的な性質を「関係フレーム理論」と言います。とても面白いのでそのうち簡潔に説明を試みたい。)

その言語のネガティブな性質を弱めて、行動しやすくするためのトレーニングメソッドをACTは持っています。

自分の話として、新規事業を例にとりましたが、新規事業やビジネスでなくとも、そもそも「自分の人生を生きる」というのは正解がなく、自分で決めなければなりません。

ベンチマークになるような偉人やあこがれのインフルエンサーも、参考にはなるかもしれませんが自分ではありません。多様な生き方が、選択肢が、益々取りやすくなってきた昨今。自分でどう生きたいかを決めて、自分で前に進むことが益々必要になっていきます。そんなの不安がない方がおかしいし、おそらくこれからも不安がなくなることなどないかもしれません。

イケてる人たちが、SNSでキラキラと前に進んでいる用に見えます。でもきっとそういう人たちも、不安がないわけではないはずなのです(そうだと信じています...)。不安があるけど、前に進むスキルをちょっとだけ多く持っているだけだと思うのです。

僕たちは、自分が納得できる人生を生きるために、前に進むために、不安とともに前に進むスキルを獲得することが必要なのではないでしょうか。

そうでなければ、周りの人の言うことや、言われたことに惑わされながら、フラフラと正解のない世界で迷子になってしまいそうです。会社も友人も親でさえも、自分の人生の責任はとってくれないにも関わらず。

Awarefyというサービスは、まだまだ生まれたばかりの力不足なサービスかもしれませんが、皆さんが、ご自身の描いた人生を生きるお手伝いを少しでもできるように進化していきたいと思っています。

正解のない人生、自分で道を定めて、不安という相棒と共に、おもしろおかしく生きていきましょう。

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