リクナビのリボン図からモデルづくりを考えてみる

こんにちはHakaliのおがわです。

さて、前回「いきなりデータ分析してはいけない」という話をしはじめて、「分析の切り口となるモデルづくりから始めるべきだ(だって切り口の総当たりって切り口の数が死ぬほどあるから)」という結論を言いました。

今回は具体的にモデルづくりについて考えてみたいと思います。具体例をここに書いて怒られなさそうなものを考えてたら、有名なリクルートの「リボン図」モデルに行き着きました。リボン図で検索してくるとわんさかいろんな形のリボンが出てきますね。

この「リボン図」という概念を使いながら、モデルを検討していくプロセスをすこし具体的に考えてみたいと思います。その具体的な事例として、僕が当時いた頃の「リクナビ」をケースに取り上げてみたいと思います。

(注:これはあくまで僕がいたころのふるーいリクナビの話をあえてしているにすぎず、いまはもうとっくに進化していると思います。また一部批判風にとられかねない表現が出てきますが全然そんな風には思っていないし自分も別会社で新卒採用事業の事業長とかやったこともありますがそんな今でも僕はリクナビめっちゃ応援しています。中の人の苦悩もすごく知ってるしほぼインフラになってる中で大胆な手も打ちづらく難しいサービスになってますし頑張れリクナビ。)

リボン図モデルのおさらい。

まずおさらいですが、リボン図は、「カスタマー」と「クライアント」を集めてきて「マッチングさせる」ことを意図しています。

「まだ、ここにない、出会い」この「本来出会うべき二人(個人と個人、個人と法人)を出会わせる」というとても素敵なワーディング。作った人天才かよ。

さて、リクルートといえば営業強いイメージですが、営業は何やってるかというとクライアント側の「仕入れ」です。上記リボン図の右側を増やす活動をしています。リクナビでいうと、「掲載企業を増やす」ということです。

一方リボン図の左側はカスタマー側、こちらはリクナビだと「就活支援チーム(すいません名前を失念しました。。。SSC?)」が主にやっていて、各大学に行って授業をもらってキャリアの授業したりしながら、その最後に複写式の氏名住所を書く紙を渡して名簿を回収していきます。加えてもちろんデジマもやっていまして、そっちは別のチームが担当していました。

この「クライアント」と「カスタマー」が出会うことがリボン図では本質だと言っているのですが、リクナビだと出会いのメインはリクナビ上での「エントリー」(資料請求)によってスタートします。エントリーすると学生の名簿情報が企業に渡されますので、その後説明会へ誘導したり、本選考の案内が来たりということで実際に出会っていくわけです。リクナビ上だと、出会いが最大化することが価値の最大化、それはすなわち「資料請求最大化」を意味するということになります。

なのでリクナビは長いこと、社内では「エントリー最大化」を標榜していたと思います。その文脈で僕もレコメンド作ったり、一時期叩かれた「一括エントリー」が作られたりしました。でも一括エントリーは「エントリー最大化」という指標に忠実に作られたという意味では正しかった。もしそれが批判されているんだとしたら(みんなの感覚と違うのであれば)「エントリー最大化」という指標が少し違ったんだと思います。

では、エントリー(資料請求)最大化が違うのだとしたら、このビジネスにおいて本質的に何を見るべきか、どんなモデルを考えていくべきか、ここを出発点に考えてみたいと思います(注:改めて、これはあくまで当時の指標であってその後実際にいろいろ変わったみたいですが詳細は僕も知りませんのであしからず!)

エントリー最大化問題の議論はポイントが大きく2つあると思っています。

1.売上が上がっている構造が実はマッチングではない問題

当時レコメンド作ってて、エントリー最大化を頑張ってて一番気になってた(けど力不足で言語化も代案提案もできなかった)のがこのポイントです。リクナビはあくまで「広告モデル」なので、「マッチングしたからお金を払う」のではなくて、「マッチングして採用成功しそうと期待できるからお金を払う」わけですよね。

上記図左のように、前年の結果をもとに「今年はこれくらいいけそうだから継続してお願いする」という「期待値調整」によって今年の予算が組まれていくのです。しかし、究極的には去年「エントリー0」だとしても、営業マンのプランニングがよければリピートしてもらえるわけです。

そして、もっと言ってしまうと、レコメンドやマッチングシステムがめちゃくちゃ進化する理想郷の世界では、簡単に期待値を超えてしまうかもしれませんが、その場合「オプション商品」が売れなくなってしまう、つまり短期的にはリクナビの売上が減ってしまう恐れがあります(図右の「進捗が芳しくない」ことがない世界)。もちろん「リクナビに掲載すればうまくいく」世界ができれば中長期的には売上は上がるはずだし正しいと思いますが、当時の浅はかな僕は迷子になったりしたものでした。

2.べき分布で全体の最大化を目指すと偏っちゃう問題

しかし上記は確率論の話。あくまで「各社」のエントリー数が増えれば確率論的にはリピートしてくれる顧客数は増えるはずです。

しかし、「総数」という指標の問題はマクロで見てしまうことにあります。多くのwebサービスは「人気一極集中型」です。まんべんなく投票があつまるということは少なく、人気なアイテムにより人気が集まる構造になっています。これを「べき分布」と言います。

べき分布だなぁーって言いたい局面すごくたくさんあるのでもしご存知なかったら覚えていただくとよいかもしれません。このべき分布において「最大化」を目指すと、こういうことになります。

つまり人気者がより人気者になる、人気企業によりエントリーが集まることになります。エントリーの総数を最大化しなきゃいけないと言われてたら僕だったら何をするかというと、人気企業ランキングを打ちまくります。人気企業は多くの人にエントリーされやすいので数稼げますからね。

ですが、さっきの図でもあったように、これだと「期待値でお金をもらう」ということを考えると正しくない気がしてきます。だって人気企業はそもそもそんなに集客の「数」には困ってないですし、エントリー1.2倍になったからと1.2倍のお金払ってくれるかというとそんな訳なないので。また集客苦戦企業は苦戦したままなので期待値を上げることに貢献しづらい。

マネタイズまで踏まえたリボン図モデルの書き換えチャレンジ

期待値、という観点を顧客側から眺めてみます。もともと企業は「採用目標人数」があるわけで、それをどういうチャネルで獲得するか、と考えていく必要があります。

このとき、座席数が最も多いチャネルを顧客は次年度も期待したいと考えるのが自然だと思います。ということは、次年度の採用座席数最大化というのが目指す方向としては良さそうな筋な気がします。そして結果としては期待される=リピートされる、ということなのでリピートが大きな結果指標になるのではないでしょうか。

ということを踏まえてこんな感じでどうでしょうか。例えばですけど。

正解かどうかはよく知りませんが、だいぶプロセスで指標にすべき部分のアタリがついてきました。ここから更に現状のインタビューしたりすでにある実際の数字を見たりしながらモデルを書き換えていったり、途中のファネル記述(獲得チャネルの分解等)をしていくわけですが、少なくともここまでの議論ではデータを見る必要とかあんありなかったことがポイントです。

おそらく僕が何も知らない状態で「エントリー最大化指標」時点のリクナビに入ったとしたら、周辺のキーマンにひたすらインタビューしまくって、構造的に何でつまづいてるのか、どの辺の力学設計がゆがんでいるのかを何回も図をかきながらupdateしていくことをまずすると思います。

リボン図モデル×広告掲載モデル

というわけで、リボン図モデルの場合はマッチングに価値があるのですが、広告掲載モデルはマッチングそのものではなく、間接的に「期待値」でマネタイズされるのでそのことを念頭に入れたほうがよさそうですね。また、もし本質的にマッチングに指標的な価値を置くためには、マッチングによってマネタイズするモデルの方がより直球で力学としては考えやすいですよね。

比較としてわかりやすいところで言うと、転職サービスのビズリーチは半年契約の前課金+成約課金(公開情報)。なので前部分はシステム利用料とは言っているものの「期待値」という意味では広告モデルに近いです。なのでその観点では構造的には営業がエンパワーされやすい。しかし一方で成約課金があるのでマッチングに本質的な意味を置きやすく、マッチングしやすいシステムを作るプロダクトサイドもエンパワーされる。もっというと、決まれば決まるほど一人あたりの決定単価が下がる(前課金分が分散される)ので顧客も多く決定させるインセンティブが生まれる、ということなわけですね。

じゃあリクナビもマッチングでマネタイズすればいいじゃん、となりそうですが新卒採用市場特有の難しさ(内定後入社までが長く追いかけるの大変)だったり、市場の大きさがねぇ、みたいな話だったり、なにかと難易度は高そうです。

自分も少しだけ主体的に新卒採用市場絡みましたが(ビズリーチ・キャンパス)、検討しててもほんとに難しかった。僕のビジネススキルの限界を感じた次第でした。何かと批判が多い上に縛りも結構ある就活マーケットですが、想いを持っている人もたくさんいるし、もう既にいろいろ進んでるかと思いますがぜひ次のフェーズに進めて行ってほしいと願っております。


まとめ

データアナリストがデータいじるまでもなく、現場にはたくさんの知見が眠ってるので、これからデータアナリストやる人はそういう「ヒアリングでうまく現状サービスの課題を引き出すスキル」を身につけられるとよさそうですね!その辺も具体抽象の行き来をしながら構造化していく方法とか諸々あるので少しづつ整理していきたいと思います。

次回は、データ分析をどんな切り口から入っていけばいいか、を書き始めてみたいですが、気が向いて他のこと書いたらごめんなさい。

ではでは

info@hakali.jp


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