書籍【2030-世界の大変化を「水平思考」で展望する】読了
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◎タイトル:2030-世界の大変化を「水平思考」で展望する
◎著者:マウロ・ギレン、江口泰子(訳)
◎出版社:早川書房
本書の主題は、これから起きる「大変化」に対し「水平的に思考せよ」という指摘。本当に我々はできるのか。
まずはファクトを認識し、そこから「次どうなるのか?」を推論し、具体的に自分自身が行動していくということ。
そういう意味で、本書の論調は、大ベストセラーとなった書籍「ファクトフルネス」と似ていると思った。
「現状、一般的に印象として感じている~が、実は数値の上では、事実としてこうなっている」
という展開が多かったからだ。
我々は、案外「ファクト」を正しく認識することが、苦手なのかもしれない。
確かに、年齢を重ねれば重ねるほど、過去からの思い込みが強くなる傾向はある。
それによって、判断を誤ってしまうケースが多いのかもしれない。
一般的には、経験を積めばノウハウが蓄積されて、より効率的な正しい判断ができるはずなのにだ。
経験が足枷となり得ることを、注意しなければならない。
「今自分は判断をしたが、それは正しく認識できていないな」と、自覚ができていればマシな方だが、大半は無自覚なケースが多いだろう。
自らの回答を、冷静に客観的に認識することは、そんな簡単にできる話ではない。
つまり、いつまでもピントがズレたまま、正しい行動ができないということになる。
実際に私が、きちんと行動できているかどうかの自信はないが、心がけとして、情報をきちんと読み解いて、それを元に正しく判断して行動したいとは思っている。
(本当に難しいことだが)
本書ではまず、人口の変化について言及している。
日本が極端に少子化に進んでいることは間違いないが、実はこれは世界的に起きていることだというのは、あまり知られていない。
これからの数十年については、アジア・アフリカ地域についての人口が年々増加していく予測になっている。
これは、確かによく知られている事実だ。
しかし、よくよく数字を追ってみると、実は「人口増加率」という観点では、すでに世界中で鈍化の兆しが見え始めているというのだ。
これは私自身意外に思ったことだが、表面の数字だけで判断してはいけない、という典型例だと思う。
世界の流れで当然であるが、アジア・アフリカ地域においても、今後は益々女性の社会進出が加速されていく。
これが、生涯で出産する人数に大きな影響を与えていくのは間違いない。
社会が成熟すればするほど、男女平等の流れは進んでいくし、当然働く女性が増えていく。
働く女性が増えれば、晩婚化・未婚化が進む、という循環だ。
そのことの是非を問う話ではない。
事実として、世界の流れとしてそうなっているということなのだ。
この文脈で考えてみると、本書で主張されている「2030年頃は、世界の富の55%を女性が保有する」という予想も、的外れではないと感じてしまう。
社会進出によってオフィスワーカーが増えることで、都市化が益々進行していく流れも、押さえておくべき事実である。
現在でも、全陸地面積のわずか1%しかない都市部に、世界人口の55%が暮らしているのだという。
都市の面積も順次拡大されてはいるが、その拡大ペースよりも都市部で暮らす人口増のペースの方が各段に早いらしい。
都市部の人口は、世界で毎週150万人ずつ増加しているというデータすらある。
これらはファクトであるが、ここからどういう未来が推測できるか。
都市部での暮らしが、実は極端な貧富の差を生み出していくのだと、著者は指摘している。
これも、論理的に順序立てて考えてみると、少しずつ理解度が高まってくる。
オフィスワーカーが増えるというが、そのほとんどは田舎から都会に出てくる人によって構成される。
その影響で都市部人口は増えていく訳であるが、田舎から都会に来ても、金持ちになれるのは実際ほんの一握りのみだ。
相当な高学歴などであれば別だとは思うが、オフィスワーカーと言えど、ほとんどの仕事は高収入とかけ離れた事務作業だ。
結局、資本主義のルール上、金持ちこそお金を増やすことが容易なために、元々持たざる者の地方出身者は、もし夢を求めて都会に来たとしても、金持ちになることは相当難しい。
(夢を見させるために、一握りの成功者を生み出すことはある)
こういう仕組みである以上、貧富の差が拡大していくのは当然のことと言えるのだ。
それでは、低収入であっても田舎のまま、質の高い暮らしができるかと言えば、それも単純に叶う話ではない。
もちろん、今後は様々なイノベーションによって、田舎での暮らしが変わっていく可能性はある。
しかし、都市部でない田舎で、安心安全に暮らせる仕組みが整うまでには、まだまだ時間がかかりそうな気がする。
そのように予想してみると、今の流れは当面変わらないし、貧富の差は益々拡大することも、止めることはできそうもない。
そんな状況でテクノロジーは益々進化していき、AIが事務作業を行うオフィスワーカーたちの仕事を根こそぎ奪っていく。
生き残ろうと必死に働いて努力するかもしれないが、AIと競っても勝てることはない。
ただいたずらに時が過ぎ、晩婚化・未婚化が進むだけだ。
人口増加率が鈍化したとは言え、アジア・アフリカの中流階級層は益々人口増となっていく。
世界人口の中で、アジア・アフリカ人が相対的に増える訳で、彼ら彼女らが特に中流階級になることで、消費の主流になっていく。
それにも関わらず、AIに仕事を奪われる層でもあり、不安定な状況であることは間違いない。
格差は広がるというが、つまり「中流階級」という層が、そのまま下位に下がっていくということだ。
こう考えてみると、世界の勢力図がどう塗り変わっていくのか、想像がつかない。
水平思考で考えてはみたが、本当にこんな状況になるのだろうか?
「にわかには信じがたい」というのが印象だ。
しかしながら、起こりえない話ではない。
結局は、アレコレと考えながら、状況に合わせて柔軟に方針転換しながら生きていくことになりそうだ。
2030年という世界をどう想像して、過ごしていくか。
楽しみでもあり、不安な部分もある。
どっちにしても漕ぎ出すしかない。
生き残るために、大海に向かって進むしかないと思っている。
(2024/10/6日)