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元スタジオボイス編集長、音楽評論家の松山晋也さんから太陽肛門スパパーン「円谷幸吉と人間」にコメントいただきました!

松山さん、ありがとうございます。すべての皆さん、討議参考にしてください。んでもって、今すぐ太陽肛門スパパーン「円谷幸吉と人間」+先行シングル「東京おらんピック/時間・場所・存在<すべて」を買いに街に出よう!もしくはポチる?オリンピック廃止!


■太陽肛門スパパーン『円谷幸吉と人間』 コメント

                   松山晋也(音楽評論家)


 この夏はオリンピック漬けだった。連日、TVの前で日本人選手
たちの激闘に声援を送った。ソフトボールの日米監督どうしの試合
後の長い抱擁、柔道の大野の勝利後の正座礼、サッカー久保くんの
号泣などには特に胸を打たれた。招致運動から開閉会式セレモニー
をめぐるドタバタ劇に至るまで、嘘とハッタリと中抜きで塗りこめ
られた東京五輪運営陣の破廉恥さにはずっとハラワタが煮えくり返
りっぱなしだったのだが、いざ始まってしまったら懸命に応援する
自分がいた。そういう、いいかげんで弱い人間なのだ、私は。
 そんな頃突然届いたのが、『円谷幸吉と人間』というアルバムで
ある。手の込んだダブル・ジャケットに激熱ライナーノーツと妄想
すごろくまで付いた2枚組LP。レコード産業が崩壊しつつあるこ
のご時世にトチ狂ったとしか言いようがない豪華な、そして嫌がら
せのような作品だ。国威発揚と一体化し強欲資本主義に連動したオ
リンピック/近代スポーツの犠牲者だった円谷幸吉の生霊を呼び出
したこのSF的コンセプト・アルバムには隅から隅まで東京オリン
ピックに対する怒りと呪詛が満ちている。1曲ごとに「嘘と欺瞞だ
らけのこんなペテン運動会を単純に楽しめるお前は救いようのない
大バカ者だ」と怒鳴りつけられているようなうしろめたい気分にな
るわけだが、しかし悔しいかな、音楽作品としてあまりにも濃密で
面白すぎるため、何度も何度も聴いてしまった。フランク・ザッパ
とかサン・ラーとかリベレイション・ミュージック・オーケストラ
とかあれこれ想起させる高度なアンサンブルと、エロと笑いと哀愁
がないまぜになった花咲政之輔の歌。白ブリーフ姿のオッサンたち
が醜悪な太鼓腹をさらすライヴ・パフォーマンスも含め、今どきこ
れほどロマンティックなゲリラ集団が他にいるだろうか。これはア
ートとしてのテロである。
 私は東京オリンピックを毎日観て、存分に楽しんだ。そして今、
この『円谷幸吉と人間』も心底楽しんでいる。花咲政之輔に叱られ
てもかまわない。私は弱い人間だから。

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