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リーンスタートアップだけではなく「アウトライヤー」も求めよ【Off Topic Ep172】

宮武徹郎と草野美木が、アメリカを中心とした最新テクノロジーやスタートアップビジネスの情報を、広く掘り下げながら紹介するPodcast『Off Topic』。このnoteでは、番組のエピソードからトピックをピックアップして再構成したものをお届けする。

エピソード『#172』は、「シリコンバレーはリーンスタートアップに偏りすぎたのか?」をテーマに据えてトークが展開された。「スタートアップなら誰でも一番最初に読むだろう」と宮武も話す一冊が、エリック・リースの『リーン・スタートアップ』であり、日本でも広く知られている。

一方で、今回取り上げるのは「アウトライヤー」という考え方だ。アウトライヤー(outlier)は「基準や標準から大きく外れている」という意味で、統計学でもよく使われる言葉。そこから転じて、ビジネス分野でも「パフォーマンスが突出している企業や投資案件」をアウトライヤーと呼ぶことがある。

宮武は、アウトライヤーはスタートアップだけではなく、上場株式市場のほか、エンタメ、学校、科学といった様々な領域でも当てはまることを推察する。

ディズニーにとって最も重要な「83分間」

アウトライヤーを考える際に、宮武はエンターテイメント産業を引き合いにだし、その一端として「ディズニー」を具体例として示した。

エンターテイメント産業の巨星となったディズニーも、創業初期は苦難に満ちた経路を辿ってきた。創設者のウォルト・ディズニー自身が最初に立ち上げたアニメーションスタジオは破産し、その後も多くの困難に見舞われている。アニメ制作の費用が非常に高かったこともあるが、1930年代半ばまでに制作した400以上のアニメは赤字。当初作ったキャラクター「オズワルド」のIPが他者に盗用されたこと、現在のディズニーの象徴であるミッキーマウスのコンセプトが300回以上リジェクトされるなども含め、容易な道のりではなかった。

BBC News

そんな状況を一変させたのが『白雪姫』だった。この作品は初の長編アニメーション映画であり、自宅を担保にするなど大きなリスクを伴うものであったが、公開後の半年間で800万ドルもの利益を生み出し、ディズニーを救った。つまり、ウォルト・ディズニーが何百時間とアニメーションを作り続けてきた中で最も重要だったのは、「白雪姫」の上映時間である、たったの83分だった。まさにアウトライヤー理論の典型例と言っていいだろう。

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