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『立秋』

暦の上では秋、とはいえまだまだ暑い日が続きます。
本日からは『残暑』と言うそうです。
私は8月に入ると、いつも夏の終わりを意識してしまって、物悲しい気持ちになってしまいます。

それもそのはず。秋に応ずるのは【肺】。肺は五臓の中でも「憂」「悲」の感情を司ります。なので、物悲しい感情が自然とわきおこるのでしょう。


『肺を補う』

これから迎える秋は、肺の機能が落ちてくる季節です。
東洋医学で【肺】は宣発粛降という働きを促す臓。宣発粛降とは、全身に気や水を巡らす働きをします。
この働きが落ちると、流れが滞り、体が重く感じたり、だるくなったり、寝つきが悪くなったり逆にものすごく眠くなったりという症状が出ます。

また、肺は皮膚や毛穴の開閉などをコントロールしているので、お肌の乾燥や肌荒れなどのトラブルが起こりやすくなります。

【衛気】という、バリアのようなものをはる働きも主るため、肺が弱るとバリアが張れなくなり、つまり外邪を受けやすくなるため、様々な外因に侵されやすくなってしまいます。
どういうことかと言うと、ズバリ、免疫力が低下する、ということです。
なので、風邪をひきやすくなります。
この季節、まだ暑いのに風邪をひいてしまうのは、秋に入り肺の機能が落ち出してきたことに加えて、外因である寒邪(冷房)や、残暑による暑邪(大量の汗をかいて更に冷房で冷やす)により体がダイレクトに障害されるためです。

本格的に秋を迎える前に、できるだけ肺を補っておくことが肝要です。

前胸部、鎖骨の外側の端からの少し下ったところに【中府】という経穴があります。
肺経のスタート地点です。
左右の中府を中指で軽く押さえて、1分ほど深呼吸をしてみましょう。声を乗せてみても良いです。
肺気が上がり、身体を楽にしてくれます。

『暑さをしのぐ』

まだまだ残暑が続き、脱水が起こりやすい気候なので、熱中症対策は必須です。
こまめな水分補給や、日傘や帽子、長袖などの直射日光対策はもちろんのことですが、そんな中でも身体を冷やしすぎないことが大切になってきます。
というのも、冷たい食べ物や飲み物は脾胃の働きを障害しますので、食べものから気を作ることができなくなってしまいます。
また、冷えた水が体の中に溜まって結露のようになってしまい、更に肺にダメージを与えてしまいます。

ですので、暑さをしのぎつつも、身体を冷やさないことが重要です。

直接身体には外邪を受けないようにガードをしつつ、夏野菜や夏のフルーツをうまく食事に取り入れて、ほどよく熱を調節しましょう。

ちなみに、当院で井手先生が施術してくれている「びわの葉温灸」のびわも、この季節に合うようですよ。
食べてもいいですし、びわの葉温灸の施術をお受けになるのもおすすめです。
お灸は暑い時期にはしたくないと思われるかもしれませんが、逆にお灸をすると熱が清されて体がスッキリ涼しくなります。
本当は背中にお灸をしたいところですが、セルフはなかなか難しいかもしれません。
ご家族で互いにしていただいても結構ですし、私たちにお任せいただいてももちろん構いません。
熱を以て熱を制す。熱をうまく整して、暑さをしのぎましょう。


『夜風を感じ、虫の音を聴く』

夜に窓を少し開けると、虫の音が聞けると思います。
蝉も、寒蝉の鳴き声が聞こえだす頃です。
少し涼しい夜風を感じながら、様々な虫が奏で出した羽音に耳を傾けると、自然と気持ちも涼やかになってくることでしょう。

こんなとき、蚊の飛ぶ音が聞こえてくると本当に最悪ですね。
ちなみに、蚊は汗をかいている人のほうに寄ってきますので、汗をかいたらまめにシャワーを浴びてスッキリした方が刺されません。
風に乗った飛び方をするため、扇風機を首振りでかけると、蚊が風に煽られ近寄れなくなります。
虫除けスプレーでガードをするのが一番ですが、もし刺されてしまったら、掻かずにお灸をするのがオススメ。
蚊が刺した時に奴らの唾液と共に注入してくる血液凝固を防ぐ毒(血を吸いたいから固まってもらっては困るので)にアレルギー反応が起きて痒くなるわけですが、この毒はタンパク質で形成されているため、タンパク質を不活性化させるにはお灸の熱が有効です。
また、お灸自体に抗炎症作用があるため、痒みを止めてくれます。
刺されたら、すぐにその箇所にお灸をする。
掻き壊して跡が残るのを防ぐことができますよ。
だんだん年齢と共に、掻いた跡が治りにくくなってきますからね、、、
お灸はドラッグストアやAmazonなどで購入できますし、当院にてプロ仕様の物をお買い求めいただくこともできます。
刺された箇所を観察すると、うまく経絡上を狙っていることがよくあります。
そこの経絡が気の流れが旺盛なのかなあと観察し、少し瀉してあげたり表裏関係の経絡を少し補ってみたりするのは、多分鍼灸師あるあるです。


あれ、虫の音の話が蚊の話になってしまった。
まあいいか。
残暑を乗り切って、健やかな秋を迎えましょう!


『今月のツボ』

【中府】
鎖骨外端から指2本下の位置、親指か中指だと押しやすい。

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