いつの日か、この目で

配信ライブにも、慣れてきたな。そんなことを思いながら、 ”それぞれの場所“ でライブが始まるのを待つ人たちのチャットが流れる、PCの画面を眺めていた。2020年の春以降、ライブコンサートの現場に仲間たちと集まり、舞台の上で生み出される「表現」に直接触れるということは、当たり前ではなくなってしまった。そして、先行きの見えない不安の中、その状況は、間もなく2021年がやって来ようとしている今になっても、まだ続いている。

@onefiveにとって二度目となるオンラインライブ、『BlueWinter2020』が、12月22日におこなわれた。ほぼ時刻どおりの19時30分、モニターに映し出された薄暗いフロアに『Pinky Promise』のイントロが流れ、ライブはスタートする。深いブルーの衣装に身を包み、夏よりも更にしなやかに、優雅な雰囲気をまとった4人は、指先まで美しい手足の振りと豊かな表情で、息の合ったダンスを披露し、一瞬にして画面のこちら側の僕たちを魅了した。そして、長い時間を共に過ごしてきた4人が、再び新たな夢を掴もうと ”約束“ する彼女たちのデビュー曲は、ダンスをシンクロさせながら歌うには決して簡単な曲ではないと思うが、囁くような繊細な表現や、ファルセットのユニゾンも見事だった。

最初のパフォーマンスが終わり、MC では、SOYO、KANO、MOMO、GUMIの順に自己紹介。相変わらず緊張するKANOとGUMI、緊張しないSOYOとMOMOという対比が微笑ましい。SOYOの「前回のリリースイベントから5カ月」という言葉を聞き、そんなに時間が経ったのか、と少し驚く。今年は、特に時間の流れがいつもと違って感じられるからなのかも知れない。視聴者からのチャットも拾いながら進められるトークでは、彼女たちの日常などがゆるい雰囲気で語られ、舞台上がリラックスした空気に包まれる。パフォーマンスとトークのギャップもまた、彼女たちの魅力の一つだ。

唐突な流れでKANOの口からTikTokアカウントの開設が報告された後(@onefiveと同年代のファンを更に取り込む為にはTikTokは不可欠なプラットフォームだ)、いよいよ、『雫』のパフォーマンスへ。7月のリリースイベントでダンスのみのパフォーマンスが披露され、その後YouTubeチャンネルでのダンスムービーの公開、楽曲の配信リリース、リリックビデオの公開と続いた、『雫』。歌とダンスが融合した完全版を心待ちにしていたファンは多かったと思う。

ダンスについて語る言葉を持っていない自分がもどかしいのだが、初めて『雫』のフルパフォーマンスを観て感じたのは、タイトルの通り、雫が集まって流れる水を思わせる、流動的なダンスだということだった。 ”動く/止める” の組み合わせが特徴的なダンスを多く踊ってきた4人だが、この曲では、ずっと ”動き続けて” いる。静謐で大人っぽい雰囲気のメロディと歌唱に対して、全体的なトーンは艶やかではあるが、ひとつひとつの動きのエレメントは複雑で激しく、目まぐるしく立ち位置を入れ替えながら、表情を作り、歌う。これは、間違いなく、心を揺さぶられるエキサイティングなパフォーマンスだ。落ちサビから、昇り詰めるかのように激しさを増す最後のリフレインの感動は、音が消えた瞬間の4人の美しいシルエットと共に、余韻となって、心に焼き付いた。

「これでメインが終わったと思うでしょ?まだあるんです!」という、嬉しい言葉から、続いては、この日のライブを観る人へのクリスマスプレゼントとして、4人のアンサンブルが披露された。選ばれた曲は、クリスマスシーズンの定番であるBoAの「メリクリ」。SOYOが奏でる、透き通るようなピアノの音色に導かれ、音域の広いメロディを保ちながら、情感たっぷりにゆっくりと歌い上げる。それぞれのソロの個性的な声、デュオが生み出すケミストリー、4つの声が揃った時の力強さ。@onefiveの奥深い魅力が、またひとつ明らかになったパフォーマンスだったと思う。無観客とはいえ、初めてのアンサンブルはかなり緊張したようで、曲が終わった途端に奇声を上げる4人。思えば、このライブで、@onefiveは、初めての挑戦を幾つもしようとしている、と気が付く。

続いては、前回のリリースイベント、そしてYoutubeの生配信でも試みていた、ファンとの双方向のコミュニケーションのパートだ。ファンから募った「Blue Winter Goods」のフォトが紹介され、その後は、「大切な人に、今、伝えたい」というテーマで集められたメッセージが読み上げられた。GUMIが見事な発音の英語で海外のファンからのメッセージを読んだ後、MOMOから「いつも、ありがとうって思ってる。これからもがんばろう、4人で」と、3人への感謝の言葉が語られる。そして、@onefiveに楽曲を提供している辻村有記のオリジナル曲『Snow White Castle』に、コレオグラファーのMARUが振り付けをした、スペシャルパフォーマンスが始まった。

全ての場面が素晴らしかったこの日のライブの中でも、特に印象的だったのが、このダンスパフォーマンスだ。演じていることを感じさせない、愛らしく自然な表情を見せながら、高度にテクニカルなダンスを披露する@onefiveの4人。ステージとフロアを縦横に使い、計算され尽くしたカメラワークによって、寄りと引き、どちらの映像でも、彼女たちは、宝石のように輝く。椅子やクリスマスツリーだけでなく、ストレートで揃えた髪型までもが、パフォーマンスをより魅力的にショーアップする小道具のようだった。そして、パフォーマンスそのものも勿論だが、「大切なことは言葉にしなきゃ伝わらない、という歌詞に共感してこの曲を踊った」、「@onefiveのパフォーマンスが、皆さんが想いを伝えようとするきっかけになれていたら嬉しい」という、パフォーマンスに込められた意味と想いが、素晴らしかったと思う。

ライブはいよいよ最終盤となり、2021年にシングルがリリースされるという嬉しいニュースの後、4人それぞれが、心のこもった言葉でファンとライブへの想いを語り、ラストを飾る「まだ見ぬ世界」の曲名が告げられた。「まだ見ぬ世界」は、圧巻だった。@onefiveの5か月間の鍛錬と、成長。そして、技術、表現力、フィジカル、チームワーク、様々な面での、彼女たちのポテンシャルがはっきりと分かるパフォーマンスだった。このクオリティが、恐らく@onefiveの ”基準” となるのだろう。それは、彼女たちの表現の未来が、僕たちの想像を軽々と超えていく可能性を示している。

最後のMCパートでSOYOが言ったように、体感は3分という、あっという間の感覚のライブだった。あっという間の中に、たくさんのことが起こり、ずっと心を動かされっぱなしだったライブは、4人の元気な別れの声で、終わった。

2020年も残り10日を切り、先行きの見えない不安の中、ライブの現場に足を運ぶことが当たり前でなくなってしまった状況は、まだ続いている。けれども、この日体験した無観客の配信ライブは、僕に、充分過ぎるくらい、未来への希望を持たせてくれた。彼女たちの夢を応援し、声を届ける。そして、いつの日か、@onefiveのライブに、仲間たちと集まり、舞台の上の彼女たちをこの目で見る。それを実現するために、僕は、また明日から、日常を生きる。


ペンネーム:POKA

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