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「魂の殺人」を読んで

アリス・ミラーの 「魂の殺人」を読んだ。

誰かが泣いていた。
じっと感じてみると、自分の心だった。
抑えられていた心が、シクシクと泣いていた。

誰かが怒っていた。
そっと探してみると、自分の心だった。
抑えていた心が、ガンガンわめいていた。

50歳を過ぎて今まで夢中に走り続けてきた。
色んなことがあり、色んな仕事をしてきた。
いつも追い込まれていた。
常に危機感が付き纏っていた。
自分は本当は何がしたいのか考えたいと思った。
だからせっかくとった司法書士の仕事を辞めた。
それで、この本に出会った。

自分が何がしたいのかわからないのは、
子供の時に心を封じ込めたからだと、
この本を読んで気付いた。

だったら、封じ込めた心を解放しよう。
解放しないとこのまま埋もれてしまう。
そんなのは絶対に嫌だ。
でもどうやって解放すればいい。

。。。。書いてみよう。
書くという行為はあまり得意ではない。
得意でないから書いてみよう。
書くことで解放できるかもしれない。

ちょっとづつ、ちょっとづつ
何があったのか思い出して書いてみよう。
思いつくまま書いてみよう。
心が取り戻せるかもしれない。


今 韓国で82歳の母と7月から一緒に暮らしている。
母は第2子の出産後、腰にヘルニアが見つかり
大学病院で腰椎ヘルニアの手術を受けた。
その時の後遺症が10年ほど前から発症し、
足の痙攣や歩行困難に見舞われている。
幸いにも 頭の方はハッキリしているので
認知症の傾向はまだ現れていない。

私は四人兄弟の末っ子だ。
長男・長女・次男・私
父が中学1年の時に亡くなり、
長男・長女はその後結婚して家を出、
次男は大学生になったので下宿するため家を出て行った。
だから私は、他の兄弟に比べ母と過ごす時間が一番長い。

母は友達がいない。
19歳で結婚し、子供を4人産み、
自営業を営み、生計を支えていた。
家事も大変だった。
父はとてもお洒落で我儘な人だったので、
父の食事や洗濯だけでも大変だった。
なので、友人を作る時間がなかったと思う。

だから、愚痴を言って慰め合う友人がいなかったので、
母の愚痴を聞かされるのは、私たち子供だった。
子供の頃、よく座らされて何時間も母の愚痴を聞かされた。

何時間も何時間も。。。。
嫌だとは言えなかった。 
言ったら時間が伸びてしまうから。
だから 子供の頃からよく母の顔色も伺った。

父が中学1年の時に亡くなった。
自殺だった。
自殺の原因は経営難。
父は元来商売人ではないのに、店を1店舗増やした。
案の定、経営がうまくいかなくなった。
多額の借金を抱えてだんだん追い詰められた。
その頃、父の家庭内暴力が始まった。
アルコールの量も増えていった。
母への暴力と器物破損。
子供には暴力はふるわなかった。
お姉ちゃんが一回どつかれたぐらい。

夜中に父親の叫び声が聞こえた。
ビクッとした。
誰か気付いていないか、部屋の中を伺った。
誰も起きてこなかった。
だからそのまま布団から出ないでじっとしてた。

母と兄弟4人で楽しく夕食を食べていた。
父が帰ってきた。 
父が帰ってくるときは、いつも玄関先で痰を吐くのでわかる。
上の兄弟三人はさっと子供部屋に逃げた。
私は玄関に父を迎えに行く。今日は機嫌がいい。
いつもいつも怖かったわけじゃない。
帰ってきてからも家で晩酌をするので、
このまま機嫌よく寝てくれるのをいつも願った。

父の暴力がひどくなってくるにつれて、
母は父のための食事の用意をして、
帰ってくる時間になるとたまに外に出て避難していた。
父が寝る時間を見計らって帰ってきていたと思う。

そんな中、父が自宅で自殺した。酔っ払って。
見つけたのは、私とお姉ちゃん。
母は、その前に父と喧嘩して出ていった次男を探しに、
当時下宿していた長男のところに居た。
その後は大変だった。救急車呼んで、警察が来て。

私は父が亡くなった時、悲しまなかった。
今思い出しても、号泣した覚えがない。
DVで商売が下手な父でも、私は父が好きだった。
男前でお洒落で小粋な父が好きだった。
DVで我儘な父でも、家族は大切にしていた。
よくゴルフの練習場やサウナに連れて行ってくれた。
DVで眼光がきつかった父でも、私には優しかった。
旅行から帰ってきた時も私が喜ぶのを知って、
必ずお土産を買ってきてくれた。
だから今だにファザコンがきつくて、
父以上の男性が見つからない。

そんな大好きな父が突然亡くなったのに、
その時私は泣かなかった。 
お葬式の時ちょっと泣いただけ。
多分、ほっとしたんだ。
父の家庭内暴力が終わって。

あぁ 今 涙が出てきた。
そうだ、ほっとしたんだ。
父の気が狂った形相を見なくて済んだことに、
父の張り裂けた叫び声を聞かなくて済んだことに。







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