「令和の米騒動」本当の原因と解決策

 米の在庫不足で一般消費者が買えないだけでなく、老人ホームやグループホーム、障がい者施設、病院などから悲鳴が上がっています。 フードバンクや子ども食堂も、寄付が減り、運営が難しくなっています。
 政府は「9月ごろ解消」と言いますが、それだけでは済まない問題が懸念されます。

「あるところにはある」のに、一般消費者が米が買えない理由

 米不足といいますが、近所のスーパーの棚が空なのにアマゾンで買えたり、東京では買えないのに茨城では買えたりと「あるところにはある」状態になっています。
 6月末の適正在庫が180万㌧~200万㌧だとして、実際には156万㌧だったわけですから、当然、156万㌧はあるところにあるわけです。

 何が起こっているのか。
 米の全体量が足りなくなり、米の流通・小売の各プレイヤーが仕入れに不安を感じるようになると、それぞれ抱えているお得意様に今後も供給し続けられる在庫を優先的に確保する動きをするため、それ以外に対しては「在庫があっても出せない」ということになります。
 例えば、学校給食への供給は最優先ですから、業者はその分をあらかじめ確保しておかなければなりません。あるいは外食などに供給する年間契約を結んでいる卸業者は、それができなくなれば賠償責任を負いかねないわけで、優先せざるを得なくなります。 
 これが全国・流通各段階で起きているため、一番末端の、その都度仕入れては販売する「スポット取引」をしているお米屋さん、地元スーパーなどの小売店で真っ先にお米がなくなるわけです。
 つまり一番弱いところが最もしわ寄せを受ける構造になっています。
 これが、新米の入荷などで「優先確保が必要な在庫量」を超える部分が見通せるようになれば、それがスポットに回ります。これがまちまちになる原因です。

このままでは来年も同じことが起きる

 懸念されるのは、新米が出回ってきて一時的にスポットに出せる数量が増えても、全体量が足らない状況は変わらないという点です。
 ことし6月末までの年間需要量は702万㌧でしたが、23年産米の供給量は661万㌧でした。
 24年産米の供給量は今のところ669万㌧と予想されていますから、今年空いた供給の穴は解消されないまま持ち越されます。
 農水省は、今年の7月から来年の6月末までの需要量を673万㌧と、なぜか減る予想を立てていますが、何の根拠もありません(追記:これまで毎年9万㌧ほど消費量が減ってきたので、前例踏襲という根拠は一応あり)。米食回帰・外食・インバウンドなどの需要が維持されば、需要に供給が追い付かない状況はむしろ拡大しかねません。近づいている台風の影響も怖いです。
 とすれば、来年も同じ事態が起きるのではないか。これが心配です。

 お米は日本人の主食ですから、安定価格・安定供給が大事です。農水省の担当者もそう言います。
 しかし実際には乱高下しています。昨年まで安すぎて生産者がまるで採算取れなかったものが、一転して棚からお米がなくなってしまったわけです。
 だとしたら、生産・流通の構造を見直さなければならない。需要量ギリギリを目指して生産量を調節しようとしてきたから、コロナの時のように思わぬ需要減があったり、今年のような思わぬ需要増があると乱高下するわけです。ギリギリではなくバッファが必要です。
 多くの国で取られている対策は、農家に十分な生産をしてもらい、コストを下回るような価格になれば国がきちんと補填して、安定的な供給と農家収入を確保する政策です。
 農家に補填すると、生産物の価格は下がります。下がれば、国民は食料を安く入手できる。一石二鳥です。
 国が予算をちゃんと措置するかどうかだけです。