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ビールのCMなぜすべて「飲んで、くわぁ」なのか【広告を考える】
大きめのコップにビールをなみなみ注いで、さわやかな芸能人か、または貫禄のある芸能人に一気に飲ませて「くわぁ」と言わせる。
ビールのCMは今、このパターンしかない。
したがって、これ以外の手法を編み出したビール会社、または広告代理店は、ビール広告に革命をもたらすことだろう。
ワンパターンになるのは、制限のせいで訴求ポイントが一つしかないから
ビール広告が「くわぁ」しかできないのは、もちろん制作陣の想像力の問題もあるのだろうが、むしろ制限のほうが強いのだろう。
例えば、ビールをたくさん飲んで酔っ払って「キモチイー」と言わせる広告をつくることはできない。
ぐでんぐでんに酔ったパパに「ママ、もう一杯だけちょーだい」と言わせる、ファミリー広告を打ち出すこともできない。
ビールの最大の売りは、アルコール作用による酔いの気持ち良さなのに、それを訴求すると「アルコール中毒を誘発している」と非難される。
また、ビール各社は独自の味を打ち出しているつもりだが、消費者からすると、どのメーカーのどの種類もほぼ同じ味である。
つまり、あるビールはビール市場のなかで特徴を出しづらい。
そのため、アルコール作用をPRすることが封じられると、すべてのビールメーカーは同じものを訴求するしかないのだ。
同じものとは、キンキンに冷えたビールはうまい、である。
あるいは、脂っぽい食べ物に合う、だ。
いずれも「くわぁ」で表現するしかない。
面白味のない商品だから
ビールの広告にバリエーションがないのは、これが面白みのない商品だからである。
ビールは誰にとっても面白くない。
まず、アルコールを苦手にする人と、ビール以外のアルコールを好む人にとって、ビールは無価値であり、そのような人は結構多い。
では、ビールを好んで飲む人にとってビールは面白い商品かというと、これも違うのだ。
ビール飲みは毎日、ビールをサッと飲んで終わりにしてしまう。
つまりビール飲みですら、ビールで楽しむつもりはないのだ。
面白くない商品だから広告で面白おかしく装飾することができない。
発想の転換が必要だ
それでも、芸能人にビールの飲ませて「くわぁ」と言わせるのは、さすがに限界だろう。
ビールの広告製作陣が「くわぁ」をやめないのは、おいしそうに飲んでいるところを消費者にみせて「飲みたい」と思わせるしかない、と考えているからだ。
したがってビールの新しい広告をつくるには、消費者に飲みたいと思わせる、という発想から脱出するしかない。
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