日本はペロブスカイトのトップ集団にいる
ペロブスカイト太陽電池を徹底解説~従来型との比較、特徴、将来性、課題まで
太陽光発電の領域でペロブスカイト太陽電池が注目を集めています。従来の太陽光発電システム(シリコン系)よりエネルギー変換効率を格段に高めることが期待できるうえに、コスト安につくれるポテンシャルを有しています。
この記事では、従来の太陽光発電システムのデメリットを確認したうえで、ペロブスカイト太陽電池の特徴と将来性、課題を解説します。
従来の太陽光発電システムのデメリット
太陽光は地球に無尽蔵に降り注ぎ、なおかつ無償です。この天の恵みを使う太陽光発電は、画期的なエネルギー獲得手法といえるでしょう。
そのため従来型太陽光発電は全世界で使われていますが、それでもなお、火力発電や原子力発電を不要にするほど普及しているわけではありません。
それは従来型太陽光発電システムには次のようなデメリットがあるからです。
■従来の太陽光発電システムのデメリット
●効率が悪い
●コスト高
●柔軟性が低い
●安定しない
ペロブスカイト太陽電池は、これらの従来型太陽光発電システムのデメリットのいくつかを補うものとして期待されています。
ペロブスカイト太陽電池の特徴
ペロブスカイト太陽電池の特徴をみていきましょう。ペロブスカイト太陽電池に何が使われていて、どのような仕組みで電気をつくるのか解説します。
そもそもペロブスカイトとは
ペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイトを使って太陽光のエネルギーを電気に変える発電技術です。ペロブスカイトとは特定の結晶構造を持つ化学物質の総称で、その主な原料はヨウ素と鉛です。
ペロブスカイトは太陽光をどのように電気に変えているのか
ペロブスカイトが太陽光を電気に変える仕組みをみていきましょう。
太陽光は光子という粒子の形態で地球上に降り注いでいます。ペロブスカイトには光子を吸収する性質があるので、ペロブスカイトを太陽光に当てるとそのなかに光子が蓄積されていきます。
電気を起こすのは、ペロブスカイト内の電子です。ペロブスカイト内に取り込まれた光子は、電子を励起します。励起とはエネルギーが低い状態から高い状態に移る現象です。光子が電子を刺激してエネルギーが高まる、といったイメージです。
励起された電子は(つまり高いエネルギーを得た電子は)、エネルギーを持った状態で移動を始めます。そして電流が生まれます。
電流が生まれた状態こそ、電気の誕生です。
以上の過程から、ペロブスカイトが太陽光から電気をつくっている、といえるわけです。
シリコン材料を使わないことの優位性
太陽電池には大きく、シリコン系、化合物系、有機系の3つのタイプがあります。従来型太陽光発電はシリコン系に属し、ペロブスカイト太陽電池は有機系に属します。ペロブスカイト太陽電池の優位性はシリコンを使わないことにあります。
太陽光発電に使えるほどの高純度のシリコン(シリコンウエハ)をつくるには、シリコン鉱石を約2,000度の高温で加熱してシリコンを取り出し、精製を重ねて不純物を取り除く必要があります。シリコンウエハは高コストであるだけでなく、地球に優しくないのです。
しかもシリコンウエハを太陽光発電に使うには太陽光パネルにする必要があります。太陽光パネルはシリコンウエハをガラスに貼り付けて、さらにポリマーシートで挟む構造になるので1平方メートルあたり10kgにもなります。
ペロブスカイト太陽電池はシリコンの代わりにペロブスカイトを使っているわけですが、この主要原料はヨウ化鉛です。ヨウ化鉛は鉛とヨウ素を化学合成してつくるため、材料コストも製造コストも、シリコンウエハと比べるとはるかに安価にすることができます。なお日本は世界有数のヨウ素生産国です。
また太陽電池に使われるペロブスカイトは液体にすることもできて軽量なので、さまざまな物質に塗って使うことができます。
ペロブスカイト太陽電池の将来性
ペロブスカイト太陽電池が次世代太陽電池とみなされているのは将来性が高いからです。ペロブスカイト太陽電池の可能性を紹介します。
シリコン系を追い抜くポテンシャルがある
現在、太陽電池全体に占める従来型太陽光発電(シリコン系)のシェアは95%にもなります。今は、太陽光発電といえばシリコン系といってもよいくらいです。
一方のペロブスカイト太陽電池は一部で実用化されていますが、それでもまだ研究段階、開発段階といったレベルです。この点は経済産業省も「現状ではコストを含む性能面でシリコン系に対して競争力を持つ見込みが立っていない状況」と認めているところです。
またシリコン系のエネルギー変換効率が、最高レベルの製品で26.7%を記録している一方で、ペロブスカイト太陽電池のエネルギー変換効率は20%ほどです。
ではなぜペロブスカイト太陽電池が、それでも次世代太陽電池と期待されているのでしょうか。それはペロブスカイト太陽電池のエネルギー変換効率が2022年までの7年間で2倍に向上しているからです。この進化のスピードはシリコン系の開発スピードの4倍になります。
この進化スピードは、シリコン系を追い抜くポテンシャルとみなすことができ、それで経済産業省は「(ペロブスカイト太陽電池は)、飛躍的な成長を遂げており、シリコン系に対抗しうる太陽電池として有望視されている」とその将来に期待しているのです。
赤外光を使えればエネルギー変換効率はまだまだ高められる
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