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【M&Aの辞書】事業譲渡の挨拶状には何を書けばよいのか

事業譲渡や会社分割において、譲渡側企業(分割会社)は、可能な限り速やかに、取引先に挨拶状を送ったほうがよいでしょう。

いち早くM&Aの事実や概要を知らせることで、取引先に安心してもらえます。取引先に安心してもらえれば、譲受側企業(承継会社)との取引継続がスムーズに進みます。

この記事では、挨拶状の書き方や記載する内容を紹介していきます。


1、事業譲渡の挨拶文に何を書くのか


事業譲渡は、譲渡側企業が自社の一部の事業を譲受側企業に売却するM&Aです。

事業譲渡では、従業員、生産設備、不動産、販売権などが、譲渡側から譲受側に移転します。そして取引先との債権債務も譲渡の対象になりますが、こちらは自動的に移転するわけではなく、取引先の同意が必要になります。


(1)挨拶状を出す前に債権債務の譲渡の同意を得る


取引先には挨拶状を送らなければなりませんが、債権債務の譲渡の同意を得なければならないので、挨拶状1枚を送って済むわけではありません。

取引先の同意は、挨拶状を送る前に得ておく必要があります。ただ、事業譲渡を公にできる日時は決まっています。取引先から同意を得るのは、事業譲渡を公にできる日と挨拶状を送る日の間になることが理想です。


(2)事前に知らせていても挨拶状を出す意義


取引先に直接、事業譲渡について知らせていても、挨拶状は出すべきでしょう。

取引先は、取引相手が変わることに不安を感じているはずです。これまで付き合いのあった譲渡側企業の担当者から「これまでと何ら変わらない」と説明を受けても、取引先と譲渡側は、これ以降ビジネス上は無関係になるので、なんの保障にもなりません。

しかし、そこに挨拶状が届けば、取引先は「きちんと事業譲渡されたようだ」と安心することができます。


(2)挨拶状は譲渡側と譲受側の連名で譲渡側が出す


挨拶状は、譲渡側と譲受側の連名で、譲渡側が作成して出します。

挨拶状の文面は2部構成になります。

譲渡側をA社、譲受側をB社とします。

譲渡側A社の挨拶文の概略は「事業をB社に譲渡したので、これからはB社と取り引きしていただきます」という内容になります。

譲受側B社の挨拶文の概略は「A社から事業を譲受したので、これからは弊社と取り引きしてください」という内容になります。

挨拶状では、この2つの内容を1つの文章に収めることになります。


(3)事業譲渡の挨拶状の例文


事業譲渡の挨拶文には1)挨拶、2)事業譲渡を伝える本文、3)事業の譲渡先の紹介、4)送り主の情報を記載します。

以下は例文になります。わかりやすいように分割しましたが、実際はつなげて1文にします。

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