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「Gaze of Innovation - 革新の視線」

〜架空の「スマートグラス営業マン」の物語〜


青木拓人は、電車の窓越しに流れる街の光景をぼんやりと眺めながら、
先ほどのプレゼンを思い返していた。

Lenovoのスマートグラス「Glasses T1」は革新的で、
ネットカフェの体験を一新するはずだった。

「リラcafe:」は首都圏に展開しているネットカフェだ。
そこに営業をかけようと思ったのは、
社長の田中美由紀が、ネットカフェの細部にこだわると同時に
常に最新技術を取り入れ、顧客体験を向上させる方法を模索していると
聞いたからだった。

慶應義塾大学ビジネスマネジメントを専攻、
ホスピタリティ業界でキャリアをスタートし、
著名なホテルチェーンで上級マネージャーにまで上り詰めたのち
ネットカフェ経営に進出した異色の経歴の持ち主だった。

首都圏に数店舗を展開し始めたばかりだが
センスのいい店内が人気を呼び
業界誌に取り上げられ始めていた。

その会社の社長がT1に関心を示してくれて喜んだのだが。

拓人はLenovoの最新スマートグラス「Glasses T1」を
ネットカフェのブースに導入する提案のプレゼンを入念に準備した。
客は個人的な空間で、最先端のテクノロジーを体験できるはずだった。

これは、彼自身の経験から思いついたものだった。
出張の時、1泊くらいならビジネスホテルより
気軽に泊まれるネットカフェを選ぶ。
見たかった映画を見ながら居心地のいいブースで
寝落ちするのを気に入っていた。
でも横になると、PCの画面に映る映画がよく見えない。

大抵は疲れていて、最初の10分くらいしか目が開いていないのだが。

プレゼンを注意深く聞き、質問をいくつかした後で、
田中社長は冷静にこう指摘した。
「私たちのお客様の中には、
メガネやコンタクトレンズを使っている人がかなりいます。
視力調整機能がないと
その方達はスマートグラスを快適に使えません。
私たちの顧客には合わないかもしれません」と。

市場調査は念入りにしたつもりだったんだけどな…

彼は自分の短絡的な思考に気づき、苦笑いを浮かべた。
いつも最新の技術に目を奪われがちだった。

彼は電車の座席に深くもたれかかり、閉じた目の中で
彼は自分の失敗を受け入れ、それを糧にする決意を固めた。

しかし、視力調整機能なんて、実装できるのだろうか?

窓から見えるビルのシルエットはオレンジと紫が混じり合う空に滲み、
街の灯りが一つずつ点灯し始める。

それを眺めていた拓人は
先日読んだ DR社の新製品のプレスリリースを思い出していた。



*この物語はフィクションです。
Lancersの「新しい働き方LAB」の3期生としてLenovo様のサポートの元に2023年6月から半年間行った、スマートグラスに関する
リサーチ・実験の最終報告書の成果物の一部として書いたものです。



「この続きのあらすじ」

DR社は、ある程度の視力調整機能を持ったスマートグラスをリリースしていた。
しかし、調整できる範囲は万人向けには十分ではなく
その技術の詳細はもちろん企業秘密だった。

3か月後、「リラcafe:」の神田支店の店長、葉山美咲が
拓人に電話をかけてくる。
T1を3台欲しいという問い合わせだった。
実は、神田支店は社内では通称「神田ラボ」と呼ばれていて
新製品の試用、新サービスの開発を行うアンテナショップ兼ラボだった。
田中社長の命で、3ヶ月間、コアなリピーター向けのサービスで
T1を顧客に使ってもらった結果、
やはり、視力調節がネックであることがはっきりする。
さらに、ガジェットオタクの美咲により
ワイヤレス化、軽量化などもダメ出しされる。

拓人がさらに調べると2種類の可能性を持った開発中の技術が目に留まる。

一つは、眼鏡作りの聖地、福井県、鯖江市の
伝説のメガネ工房「金田眼鏡」の社長、金田優作の開発している
電気活性化ポリマーを採用したレンズだった。
彼は、進行性の目の病気を持つ弱視の妻のために
レンズの屈折率を電気信号で変えられるレンズとアプリを開発していた。

もう一つの可能性は、アメリカ、マサチューセッツ工科大学の
エミリア・ワトソン教授の研究所が開発する液晶レンズだった。
同じ技術が茨城県つくば市の
「国立研究開発法人・材料物質研究機構」の
佐々木尚人教授の研究室でも開発中であることが分かる。

しかし、研究費がかさむ為、開発が遅れていることを知ると
拓人は奔走し、ついにLenovo Japanの上層部が動き、
佐々木研究室とマサチューセッツ工科大学のエミリアのチーム、
Lenovoの共同研究開発が提携される。

液晶レンズの開発に弾みがつく。
さらに「神田ラボ」の葉山美咲も巻き込んで
試行錯誤がくりかえされる。

3年後、2026年9月、
ついにLenovoのARスマートグラス「Think Reality D1」がリリースされ
ほとんどのネットカフェにスマートグラスを装備したブースが設けられた。


いつか小説を書いてみたいとは思っていました。
初めて考えた小説のプロットです。

脳みそに汗してド素人が書いたあらすじを
暖かい目で見ていただけたら幸いです。

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