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二人展『かつての水たまり 屋根のある場所』終了

野村みずほとの二人展『かつての水たまり 屋根のある場所』終了しました!
観にきてくださった皆様、気にかけてくださった皆様、サポートしてくれた家族、イロリムラのおふたり、そして野村!ありがとうございました。

野村とは鹿児島に住んでいた小学六年生の頃に知り合い、中学三年間同じ美術部で過ごした後、高校からは私が関西へ移り住みました。大学時代は野村が関西に越してきたことにより繋がりが改めて濃いものになりました。大学卒業後は会う機会は激減しましたが、展示に誘ったりと繋がりは続いています。
今回の二人展は、そんな我々による「つらかったけど何かに支えられていた時期を振り返る」展示でした。
ちなみにタイトルは野村による発案です。

私が振り返ったのは主に中学時代。一部高校時代を振り返った作品も。
野村は大学時代を振り返りました。
野村作品のうち4点は我が家で撮られた写真を元に描かれており、初見で大笑いしました。
我 が 家 が 作 品 に な っ て い る
野村家の皆様と、小中時代の友人からお花もいただきました。嬉しかったです!とっても。

作風が全く違っているようで、私たちの展示作品は「私的な出来事を絵にしている」という点で共通しています。
私の作品も野村の作品も、それぞれ思い出深い出来事や経験、感じていたことや考えていたことなどが込められています。二人とも15作品ずつ新作を描きました。
以下、私の出展作品です。
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『 思春期 』
(透明水彩/顔彩/アクリル絵具/メディウム/木製パネル)
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誰かの悪意 抱えた病気 人に言えない悩み事
青くて、どろどろしてて、涙ばかり
でも、いつもそばに居てくれる友だちと
家族がいたから、いま、輝いて見える
もう戻れないけれど愛おしい
そんな思春期だった
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メインビジュアルに使用した作品で、この展示で自分が表したい時代を象徴するような作品を描こうと、出展作品の中で一番最初に手をつけました。
「青春」「青少年」といった言葉からイメージして色を選びましたが、それらの言葉は自分の学生時代には爽やかすぎて似合わないと思いました。なので、つけたタイトルは「思春期」。自分にとって沢山の葛藤があった時代でした。

『 なみだいろ 』
(透明水彩/顔彩/メディウム/木製パネル)
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あの頃、誰にも見せることができなかった涙は
きっと、綺麗な色をしている
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私は友だちにも家族にも悩み事を相談したりできない性格の人間でした。涙を流しているところもほとんど人に見せません。見せられません。
転勤族であるが故に、そこまでの仲になる前に友だちとの縁が切れていたため、人に相談するという習慣を身につけることが難しかったのかもしれません。
でも、深夜に一人、枕に向かって泣いた日は沢山ありました。誰にも見せられなかった涙。誰も私の涙の色を知らない。せめて、それが綺麗なものでありますように。

『 初めて泣いた日 』
( 顔彩/メディウム/キャンバス )
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つらいこと 初めて言葉にして吐き出して
それを全て受け入れてくれた
あの日を今でもおぼえてる
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そんな人前で泣くことが出来ない私が、一度だけ、母の前で沢山泣きながら沢山辛いことを吐き出したことがありました。当時患っていた病気を含め、色んなことが耐えきれなくなりました。その時の涙は、頬を流れるというよりは、ぼとぼと床へ落ちていくような涙でした。元々家族のことは愛していましたが、改めて家族がいて良かったと心から思える、自分の転機になる出来事でした。

『 とどけ 』
(顔彩/アクリルガッシュ/メディウム/キャンバス)
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当時私が患っていた病気は「起立性調節障害」というもので、毎朝低血圧の状態でした。病院で点滴を打ってから学校へ行き、帰りにまた点滴を打つようなことも。学校へ行こうとしても途中で引き返して休む日もありました。学校まで「とどけ」って思っても、思ったように血流が頑張ってくれない日はもどかしかったです。

『 痣 』
(顔彩/メディウム/キャンバス)
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無意識の自傷
腕に咲いた赤
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中学時代の私は、ストレスからか二の腕あたりを噛むという悪い癖がありました。服で隠れて見えない位置だったため、周りの人は知らなかったと思います。何故そんなことをしていたのか、今となってはわからないのですが、当時の自分もよくない行為、心配されうる行為だということを自覚していたからこそ、周りから見えない位置を選んでいたのかもしれません。

『 正義感 』
(顔彩/メディウム/キャンバス)
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正義感というガソリンが 私を動かして
正義感という炎が 私を焦がしてた
そんな毎日
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私は中学三年間のうち、二回学級委員長を経験しています。自分なりの正義感を持って、毎日色んな声かけだとか他の生徒への注意をしたりしていて、当時私のことを鬱陶しく思っていた人も沢山いたんじゃないかと思います。その正義感は、体調が悪くとも私が学校へ行こうとするチカラにもなったし、良くも悪くも目立ってしまう原因にもなりました。

『 赤と青 』
(顔彩/アクリル絵具/アクリルガッシュ/メディウム/キャンバス)
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枠にはめないで 自分の色は自分で決める
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今もそうですが、私は昔から男性の友だちよりも女性の友だちの方が多いです。中高時代はほとんどの時間女子グループと行動を共にしていました。性別で選んでいたわけではなく、気が合う人に偶然女子が多かった、というだけなのですが、それにより変な誤解が生まれたり、時には嫉妬の対象になることもあり、疲れてしまうことも多くありました。そんな男女の枠に当時は悩まされていたなと思いながら描きました。

『 成長 』
(顔彩/メディウム/キャンバス)
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同じ色の花が咲くように成長していた気がしてた
それは気のせいだった
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私の通っていた中学校は、当時外見の校則が厳しく、疑問に思うことが沢山ありました。まるでここにいる全員が同じ色の花を咲かせるように育てられているようでした。実際はそんなことはないし、校則が厳しかろうがゆるかろうがみんな違った風に成長していくということを今では理解していますが、学生時代はそういった校則に対してもストレスを感じていました。

『 消えない 』
(アクリル絵具/顔彩/メディウム/キャンバス)
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やられた恨み
洗ってもこすっても
この皮膚に染み込んで消えてくれない
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中学時代、学級委員長をやっていたり女子グループとつるんでいたり学校を休みがちだったりと、色々理由が重なっていたからか一部の同級生男子から嫌味を言われることがありました。中学時代のことに限らず、私は今まで生きてきた中で嫌なことを言われたりされたりしたことを忘れられません。この恨みはこれからもずっと、この身体から消えてくれないのだと思います。

『 明けない夜は 』
(透明水彩/顔彩/メディウム/キャンバス)
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ないよって 耳元でずっと勇気をくれた
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私の学生時代を語る上で音楽に支えられたという事実は欠かせません。小学六年生の頃から色んな音楽に触れて、元気をもらってきました。その中でも嵐は特別です。嵐の新曲を楽しみにして生きていたし、CDが発売される度にお小遣いで買っていました。この絵のタイトルは嵐のことを大好きになったきっかけの一つである『Love so sweet』の歌詞から引用しました。
この曲に元気づけられていたとはいえ、当時の自分には前向きな歌詞はしっくり来ず、メロディや歌声の方に魅力を感じて曲を聴いていました。
大人になった今、『明けない夜はないよ』ってことがわかる。ずっと耳元で勇気をくれていたってことがわかる。
ちなみに、嵐をきっかけにして人生初めてのオタク友だちができたのは、中学時代でした。その経験がなかったら、好きなものを好きって堂々と言えない人になっていたかもしれない。そういう意味でも、嵐に支えられた思い出は特別で大切です。


『 わるいゆめ 』
(透明水彩/顔彩/アクリル絵具/メディウム/キャンバス)
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熱にうなされてるときの視界は
重くて暗くて曖昧で
地獄の空ってこんな色なのかなぁ
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中学生だったある日、インフルエンザにかかりました。処方された薬はタミフル。当時服用した子どもが異常行動を起こすようになるケースがあるという報道がありました。タミフルを服用していたとき、家の鍵を何度も何度も繰り返し開け閉めしたことをよく覚えています。あとから振り返ると異常な行動で、記憶もしっかりあるのに何故そんなことをしたのかがわからない。今でも怖い思い出です。そのときの記憶は、うなされながら見た悪夢も含めて何故か鮮明で印象に残っていたため、絵にすることにしました。

『 沈黙 』
(透明水彩/顔彩/メディウム/キャンバス)
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人との関わりを頑張れなかった時期も
あの頃出来る精一杯だった
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鹿児島の中学校を卒業し、関西の高校へ進学した私は、知り合いが一人もいない中、中学の頃とは全く違う過ごし方をすることになります。学級委員長をやったりと良くも悪くも人と関わりすぎた中学時代を経て、人間関係に疲れてしまい、部活を除いて人との繋がりをつくることに消極的になってしまいました。それでも、私を見つけて、友だちになろうとしてくれる、友だちになってくれる人たちがいた。すごく、ありがたかったです。やられた恨みは忘れない、と前述しました。でも、私は受けた恩も忘れない。高校、大学を卒業して疎遠になった人、SNSだけでの繋がりになった人がとても多いです。もっと人間関係に積極的になっていたら、より強い繋がりを今も持てていたのかな、と多少後悔することもあります。でも、今後関わりが無かったとしても、クラスで静かにしてただけの私を見つけて、遊びに連れ出してくれたり、一緒に下校してくれたりした友だちには、ずっと感謝し続けると思います。

『 脆い情熱 』
(透明水彩/顔彩/アクリル絵具/メディウム/キャンバス)
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あんなに燃えたぎっていた情熱
しずまるのはあっという間だった
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中学時代の私のエンジンともなっていた正義感、情熱は、高校入学と共に小さくなっていきました。
大学時代の部活でその熱は再燃し、大学卒業後また一旦しずまり、今はちょうどいい塩梅です。
情熱の強弱がコントロールできなかった時代も、自分の成長には必要だったのだと今では思います。

『 太陽に殺される 』
(アクリル絵具/顔彩/メディウム/木製パネル)
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誰にでも降り注ぐ太陽の光
ずっとずっと敵だった
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身体が弱かったこともあり、夏の暑さが自分にとって大きな敵でした。中学時代は、周りに日傘を差している男性は全くいませんでしたが、私は日傘を差して登校しました。高校では夏に水泳の授業で25m泳いだだけで熱が出て、クラスメイトにおんぶしてもらって保健室へ運ばれました。生きる上で必要不可欠なものであるとはいえ、私にとって太陽とはポジティブな存在ではありませんでした。
「太陽に殺される」という気持ちは、年々夏が長く、暑くなる今でも思うことなので、昔を振り返る他の作品に比べて強いタッチ・色合いの作品に仕上がりました。

きらめいた
(透明水彩/顔彩/メディウム/木製パネル)
(SOLD)
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もう戻れない日々を見つめてみる
辛いこと 苦しいこと 悲しいこと 沢山あった日々
でも、不意にきらめいたのは
それでも支えてくれた人たちがいたから
そして今 支えてくれる人たちがいるから
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今回展示した作品の制作期間、過去のつらかった時期とゆっくりじっくり向き合ったことにより、当時のことが鮮明に蘇りメンタル的に苦しくなりました。同時に、つらかったけれど精一杯頑張っていた日々が、きらめいて見えました。
つらかったのは確かなことだけど、同時にそんな日々を輝かせてくれた人たちが周りに何人もいました。家族も、友だちも、先生も。私は、人に恵まれていました。と同時に、人を見る目が優れていたと思います。これは、引越しを繰り返し、沢山の人たちを見てきたからこそ得た力だと確信しています。
そして今、私は沢山の素敵な人たちに囲まれています。子どもの頃から知ってる人から今年知り合った人まで沢山。
振り返ったあの日々がきらめいたのは、支えてくれた人たちがいたから。
そして、きらめきをこの目にとらえることができたのは、今支えてくれる人たちがいるからなんです。

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あたたかい絵柄の野村との二人展ということで、普段私が多く描いている抽象画のように強すぎるタッチは避け、黒色は一切使わないということを意識しながら制作しました。
『太陽に殺される』は今も思っていることを絵にしたので圧が強くなりましたが、それ以外の作品は痛々しくもあたたかい風合いになったように思います。
会場で観ると作品がキラキラするようにしたのも、今回の私の出展作品群の特徴です。

野村との二人展はずっとやりたいと思っておりましたが、念願が叶ってよかったです。遠くから展示に向けて一緒に動いてくれて本当にありがとう。
両者作品の雰囲気が全然違いますが、実際作品を並べてみると、何故か不思議と噛み合っていて、いい空間になっていました。来場者の方々からもそのような感想を多くいただきました。

大阪で開催した展示のため、特に鹿児島で共に過ごした中学時代の友だちに対しては「野村との二人展やし、来てくれる人がいたらめっちゃ嬉しいけどみんな遠いよなぁ〜」と思っておりましたが、予想より多くの友だちが足を運んでくれて、本当に嬉しかったです。もちろん、作家として知り合った方々やいつも観に来てくださるお客様も沢山来てくださって、とても嬉しかったです。いつもありがとうございます。初めましての方とも沢山お会いできて、幸せな一週間でした。

次は何年先になるかわかりませんが、またいつか、野村と二人展を開催することができたらいいなぁと思います。
グループ展では2024年10月に私が主催する『ハロー・グッバイ』で既に一緒に展示することが決まっているので、楽しみ!

二人とも、大人になったねぇ


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