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「透視図法の絵」と「肉眼の風景」の違いが分かる3つのポイント 【透視図法の科学1】

キーワード|透視図法の装置, 足線法の原則, 幾何学法則, 両眼視差, 網膜の歪み|

どうも透視図法オタクのお絵描きホーホー論です。この記事は、透視図法の仕組みを科学的・数学的に証明しながら解説することで、絶対に間違わずに理解できる講座です。透視図法を勉強中だけどイメージが掴めないとか、すでに透視図法は使えるけど理論は理解していないという人は、ここで紹介する透視図法を理解する3つのポイントを参考にして透視図法の体系的なイメージを掴んでみてください。

透視図法を理解する3つのポイント

「透視図法を間違う」と言われても、初学者からしたら何のことかさっぱり分からないと思うので、よくある誤解について紹介しておきます。

まずは、1つ目のポイントの「透視図法の装置の構造」について。透視図法という言葉な厳密には何を指しているかという問題です。おそらく透視図法と聞いてほとんどの人が「消失点から線を引いて作画の基準にすると遠近感が描ける手法」と考えると思います。しかしそれはあまり正しくなくて、そういう手法は透視図法と呼ぶのではなく、厳密には足線法や線遠近法と呼び、これらは透視図法を抽象化して作図手法に落とし込んだときの呼び方です。透視図法とは直線を繋いだり点と点をつないだりするものではなく、本来は目盛りや罫線の付いた透明板越しから被写体のシルエットを測量しながらトレスする装置を使った描画法なのです。

また、2つ目のポイントの「幾何学的な作図手法の再現」について。これは透視図法の装置で見たときの被写体、すなわち透明板越しに見た風景をトレスしなくとも遠近感のある絵を描けるように図学として理論化した手法です。図学というからには、隅々まで理論的な再現が可能にされているわけですが、そういった数字や図形に置き換えて考える方法なので、透視図法装置の機能を抽象化した学問ということができます。例えば、あなたが風景を眺めているシチュエーションを思い浮かべてみてください。遥か彼方に見える地平線という実在するものは、図学に落とし込まれた時にアイレベルと呼ばれる概念に置き換えられます。同じような流れで、消失点とは現実空間の何を抽象化したものなのだろうとか、なぜ遠くのものほど小さく描かれるのだろうと思考を巡らせてみてください。

さきほど、一つ目の視点として「透視図法の装置の構造」が重要といったのは、このように抽象的な図学と具象的な現実空間との対応づけが透視図法の理解を支えるからです。それなのに一般的に透視図法というと図学の部分だけに触れることが多いので、それが透視図法を難しくしている、というか簡単な考え方を省略してしまっているのです。

このような装置としての透視図法と、作図手法としての透視図法を同一視してしまうと「装置の仕組みを再現したのが作図手法である」という関係性がおざなりなります。そういった知識が欠けていることによってあらぬ誤解が発生します。よって透視図法を理解する1つ目のポイント「透視図法の装置の構造」についてと、2つ目のポイント「幾何学的な作図手法の再現」についてを押さえておくことを推奨します。

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図 線を引くのではなく、風景を透視するというイメージ

例えば装置の構造を知らないと、作図手順を学ぶときに「何故このような直線を作図する必要があるのか」という疑問に答えることができません。作図手順の意味を理解できないうちは、ただ手順を丸暗記して作図するしかないため、手順を少しど忘れしたり間違って覚えたりするだけでとんでもない作画崩壊を起こしたりします。この「手順を丸暗記しているだけ」の状態とは、英会話に置き換えると「例文を丸暗記しているだけ」の状態とほぼ同じです。応用性が全くないということがご理解頂けると思います。そういったすれ違いが生じないよう、この記事では作図手順にはほぼ触れず、現実空間と作図手法の紐付けに焦点を絞っています。

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図 実物から概念へ

他にも、透視図法はあくまで図学的に作図したものなので、人間が現実空間を肉眼で見ているときの風景とは異なることを心配する考えをよく耳にします。この考え方により、透視図法で描いた絵は現実と大きく異なった違和感のある絵となり、お絵描きに透視図法を持ち込むのは危険だと言われがちです。しかし論理的に考えると、透視図法で描いた絵と、肉眼で見た風景の違いは、せいぜい画材に依存する解像度の違いや、大気中の光の拡散による空気感くらいで、見た目が異なることはあり得ないと証明できます。肉眼の認知脳科学について少しの知識があればそういった疑問を科学的に解消できるので、透視図法の絵と肉眼で見る風景の違いを理解することで悩みが解決する人が多いと予想します。

【透視図法を理解する3つのポイント】
 1. 透視図法の装置で空間把握
 2. 幾何学で作図手法を解剖
 3. 透視図法の絵と肉眼で見る風景の違い

いま紹介した3つのポイントが今回のテーマです。透視図法を難しいと思っているなら、ここで透視図法を理解する3つのポイントを覚えて、論理的に透視図法のことを考えられる知識を身につけてください

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