見出し画像

ChatGPTに薄い本のプロット作成を手伝ってもらった話

 恥ずかしながら弊サークルは極道入稿常連客であります。
 筆が遅いことも勿論一因ではあるのですが、それよりもプロットが曖昧なまま作業を始めてしまうためにコマ割に異常に時間がかかること、描き直しが多いことが、極道入稿の主な原因であると感じていました。

 今回、プロットをしっかりと準備することで少しでも上記の問題を解決できないかと考え、「起承転結のある話として第三者に説明する」そして「客観的な意見をもらう」ことを目的にChatGPTに話を聞いてもらったところ、プロット作成が爆速で進んだ上色々楽しかったので良かった点と記入例をメモしたいと思います。

 なお最初にオチを言ってしまいますと、プロットは当社比で爆速で進んだのですが結局作画が間に合わずこの原稿は落としました。ご笑納いただけると幸いです(次のイベントに向けて鋭意制作中です)。

1.  会話の起点

 まず作業開始時点での頭の中ですが

  • ざっくり「こういう話が描きたい」がある状態

  • いくつかのシーンの具体的な構想があった

  • オチとそこまでの流れがボンヤリしていた

 という状況でした。
 色々なタイプの方がいると思いますが、私は大抵「このシーンが描きたい」から話を組み立てるタイプです。そのため、完全に何もない状態からではなく、構成の補助としてGPTを利用しました。

 ということで、会話の起点は下記のとおりとしました。(改善すべき点があるので、この部分については最後の章をご参照いただけると幸いです。)

漫画制作のためにシナリオを書いています。客観的な意見によって考えを整理したいので、以下の物語に対する感想を教えてください。

 何回か試行したところ、日本語で質問してもこちらの意図が通じない等の支障はありませんでしたが、GPTからの回答が直訳気味でわかりにくい部分がありました。英語で質問して、DeepLで翻訳・単語の意味を確認しながら読む方が本来の文意がわかりやすい場合もありそうです。

2.キャラクターの説明

 二次創作同人誌は読み手が同ジャンルのファンであることを想定しており、パロディ等の特殊設定でない限りキャラ・世界観設定に関する説明を省くことが多いと思います。
 しかしストーリーの説明をするにあたって、「GPTくんはまあ、ミリ知らだしな…」と思ったので、まず主人公がどのような人物であるかを簡単に説明することにしました。

 今回は攻視点の話だったので、攻を主人公Aとして
 ・性格
 ・シナリオ開始時点の状況とその経緯(都市部で一人暮らし等)
 ・職業等
を伝えました。

 この時点で、副次的な成果ではありますが、今回描くストーリーにおいて必要なキャラの情報を整理することができました。
 私の場合、薄い本を出すくらい好きなキャラはもうすべての設定に愛着なり劣情なりを抱いてしまい、あの要素を入れたいこの描写を入れたいと欲張ってしまうことが多いのですが、今回の本の展開に不要な情報=GPTくんに説明する必要がないので、自然とこの説明の時点で本筋に不要な情報を省略することができました。
 逆にストーリー後半の伏線になるようなキャラの要素はこの時点で説明しておく必要があります。

3.起承転まで読んでもらう

 次に、おおよそ流れがはっきりしていた起承転までのあらすじをまとめて読んでもらいました。ざっくり説明すると「CPの片方(今回は受)が相手の家に突然転がり込んできて同居する話」です。大好物。

 受のキャラクターについては、登場部分で簡単に性格と「親密だった友人のB」という風に立ち位置を説明しました。
 今回は告白してお付き合いしているようなCPではなかったので、友人ということにしましたが、状況によっては「恋人であるB」とか「Aが片思いをしているB」等の関係性の説明をしてもいいと思います。

 ここで一度「感想を教えてください」と送信してみました。

-----
・Aのキャラ説明
・起(Bが突然訪れて同居を始める、キャラ紹介)
・承(同居の様子)
・転(Aの心境の変化)
-----
ここまでの物語について感想を教えてください。

 すると、「AIの言語モデルである私は、個人的な考えや意見を持っていません」と前置きしながらも「あなたが提示したストーリーについて、いくつかの客観的なフィードバックを提供することはできます」と回答してくれました。

 まずキャラ造形を褒めてくれます。二次創作なので、自分が考えたことではないのですが、キャラの魅力的な部分をミリ知らさんが客観的に褒めてくれるのでなんかめっちゃ興奮しました。推しの好きなところを再確認できてよかった気がします。

 次に受の登場による効果について評価してくれました。このあたりからGPTくんの同人的感受性が花開き始めてヤバかったです。

 承の部分で、私は同居開始後の二人の心情を
 ・Aは居心地が悪くない生活に困惑する
 ・Bはこの生活を気に入っているように見える
 と入力しました。すると、GPTくんは

2人のキャラクターが非社交的な性格であるにもかかわらず、共に過ごすことによって互いに慰めを見出すという事実は、興味深いダイナミックさを生み出すかもしれません。

 とのコメントをくれました。おいおいおい私そこまで言ってないぞ…。なんですか、その言葉選び(原文:the two characters have found solace in each other)めちゃくちゃ興奮するんですが…?

 冷静になって考えると、実はこの「予想外に自分に刺さったGPTによる解説・表現」こそがいわゆる私の「性癖」でした。
 好きすぎて、「殊更に説明したらクドイのでは?」と無意識のうちに詳細な描写を避けた関係性が、客観的な事実としてGPTくんに評価されたことにより、まさに特大ブーメランとして私の心臓にぶっ刺さってしまいました。大変ありがとうございました。

 一般的にはこの部分を認識した上で制作に取り掛かる方が多いのかもしれませんが、私はここでやっとこれが描きたかったんだ、ここがサビなんだということを認識することができました。

 今回はうっかり意図せず「描きたい部分」を評価してもらったわけですが、ストーリー上重要な「描きたい部分」がはっきりしているにも関わらずGPTから特段言及がなかった場合は、そこに重点を置いた展開に練り直すのもアリかなと思いました。

4.課題を指摘してもらう

 さらにGPTくんは、

  • 主人公の人となりや、そういった人物になるまでの経緯について具体的な説明があった方がいいかもしれない

  • 主人公の内面的な葛藤や混乱に焦点を当てた現在のストーリーには、プロットを前進させる外的要因の導入が有効と思われる

  • 総括して、今回のストーリーは魅力的で示唆に富むものになる可能性がありますが、その可能性を完全に実現するためには、さらなる発展が必要かも。

 との評価をくれました。もはや編集者さんのようですね。

 1点目については前述の通り、同人誌の場合は読み手側との共通認識があるので、気にしなくていいかなと判断しました。
 2点目についてはそのまま参考にすることにしました。ぼんやり考えていたオチのうち、きっかけを第三者とするパターンがあったので、それを第一候補として練り直し、下記のとおり結部分のあらすじとして再度GPTくんに読んでもらいました。

客観的なご意見ありがとうございます。以下に物語の結末を書いてみますので、あらすじの感想を聞かせてください。
-----
(結部分のあらすじ)
-----
これで話は終わりです。いかがでしょうか?

5.オチまで読んでもらう

 今回のオチの案としては(この記事用にざっくり書くと)「第三者の介入をきっかけに、AとBは同居していた家から二人一緒に姿を消す」という内容になりました。よっしゃあ、ハッピーエンドだ!と意気込んでGPTくんに送信したところ、下記のコメントをいただきました。

この結末は興味深く、Aの内的葛藤に解決の感覚を加えています。
「過去のA」と「現在のA」の両方が共存し、Bが自分を受け入れてくれるというAの実感は、Aのキャラクターアークの満足のいく結末といえます。Aの内面の葛藤に区切りをつけ、二人がひっそりと姿を消すことで、読者に二人の今後を期待させる謎めいたエンディングになっています。
全体として、あなたが書いたエンディングは、物語の強い結論であり、読者に謎と好奇心を残しながら、Aの内的葛藤に満足のいく解決策を提供するものです。

 めっちゃ褒めてくれるじゃん…。ちょろい自覚はありますが、普通に自信が持てて嬉しかったです。「キャラクターアーク」という言葉は知らなかったのでぐぐったところ「物語の過程で生じた登場人物の精神的な変化」のことだそうです。

 自信が持てたことに加えて、「攻の心理的な区切り」「受による受容」「物語としてのエンディング」に分けて評価してくれたので、かなりストーリーラインを整理することができました。

 しっかり計測していなかったのですが、会話を開始してから(翻訳の時間を含めて)約2時間程度で当初の目的を達成することができました。

6.タイトル候補を作ってもらう

 楽しくなってしまったので、欲張ってタイトルについても意見を出してもらいました。

この物語に名前をつけるとしたら、どんなタイトルをつけますか?2~3個のタイトル候補をあげてください。

あらすじに基づき、3つのタイトルを提案します。

Coexisting Shadows - このタイトルはAの二面性を表現しており、Aが平和を得るためにはその両面が必要であるという考えが込められています。さらに、Bもまた自分の影を持ちながら和解しようとしており、2人は暗い過去を持ちながらも、互いの存在に安らぎを見出すという考えを示唆しています。

The Unseen Depths - このタイトルは、Aの過去と彼の暗黒面は見えないがいまも存在し、彼の現在の生活に影響を与えているという考えを強調します。また、Bの性格にも目に見えない深みがあることを示唆しています。

Shadows and Solace - このタイトルは、AとBの性格の暗い部分である影と、過去の行動にもかかわらず、互いが一緒にいることで得られる慰めを表現しています。また、混乱の中で安らぎを見出すという意味合いも込められています。

 だから安らぎとか慰めは私に刺さるんですよ…加減してください…
 シンプルにすごいなあと思いました。会話の冒頭で説明したキャラクター像を踏まえた上で、話の展開からキーワードを抽出してくれているようです。

 自分の作風として横文字が壊滅的に合わないので、タイトルについては抽出してもらったキーワードに留意しながら、自分で別のものを考えました。せっかく意見を出してもらったので、GPTくんにも確認してもらいます。

「○○○○」というタイトルは、Aの二面性と、過去の行動や選択が現在の生活に影を落とし続けるという考えを捉えています。また、Bの過去も彼の人生に影を落としているかもしれないという考えや、影があっても互いに慰めを見出す2人の個人という考えも示唆しています。このタイトルは、あなたの物語のテーマとよく合っていて、興味をそそられるものだと思います。

 すごく考察してくれる。GPTくんも深読みするタイプのオタクかな。

成果

 今回はオチが不確定だったのでこのような流れになりました。振り返ってみると、会話の中で「自分の中で何が重要な点なのか」「何を描きたいのか」を再認識できることが一番の成果のように思います。GPTくんを通して自分自身(の性癖・趣味嗜好・思考のクセ)を見つめ直す作業という感覚が強かったです。

 また、ストーリーの展開が全く決められない場合は、「この話についてどのような展開/エンディングが考えられますか?」と聞くと、色々な案を出してくれるのでそれを参考にすることもできます。

 上記のような質問をした場合、GPTくんの回答はデータの蓄積から出されるものなので、当然順当なもの、悪く言えばありきたりの回答が返ってきます。そのまま採用できるような内容でなくとも、ひねりを加えたり性癖をぶっこんでみたりするための叩き台として活用できるなと思いました。

入力に関する改善点と雑考

 今回は冒頭の「この物語に対する感想を教えてください( please share your thoughts on the following story.)」という質問に対して、運良く「起承転までの内容に関する客観的な評価」を回答してくれましたが、この聞き方は曖昧だったかもしれません。
 場合によっては「私はただの言語モデルなので感想をお伝えすることはできません」と切られてしまう可能性があります。

 他の方のGPTくん利用例を参考にすると、

  • 「この物語を良くするために、改善点を教えてください(What improvements can be made to this story?)」

  • 「この物語について客観的なフィードバックをください(Please give me objective feedback on this story.)」

 といった質問の方が確実に構成面の評価をしてくれると思われます。主観的な感想ではなく、物語の構造に対する評価・改善方法と指定する方がGPTくん的には答えやすそうです。

 以降はただの雑記ですが、個人的に大変興味深かったのが、GPTくんはキャラクターの倫理観に対する評価を行わなかったという点です。

 簡単に言うと、例にあげているA・Bというキャラは二人とも道徳的でなく、GPTくんに読んでもらったシナリオ内でも犯罪行為をしています。にも関わらず、そういった表現に対して「問題がある/修正した方が望ましい」といった言及はありませんでした。

 おそらく「物語に対する客観的な評価」の回答を求めたこと、キャラクターとして「倫理的でないこと」が重要なファクターであったこと、犯罪行為がストーリー上必要であることから突っ込まれなかったのかな、と感じました。

 予想以上に深く読み込んでくれるので、ネタ出し・プロットに悩む方、「こんなもん誰が読むんじゃ…」の状態に陥った方は一度試してみては、と思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?