マガジンのカバー画像

茶飲みともだち

7
男女の友情はある説。友達以上でも以下でもないスナとミイの、10歳からはじまる短くて長い物語。【一話(前・後編)完結形式/不定期更新】
運営しているクリエイター

#連作短編小説

1987:さよならのハニー&レモン[後編]

(連作短編「茶飲みともだち #07)    秋は文化祭の季節である。  さいはての小さなまちに暮らすしがない公立高校生にとって、文化祭は人生のすべてを賭けた一大イベントだ。普段は冴えないやつが突然ステージ上で輝きはじめ、全校生徒六百人の頂点に君臨することだって、けっして夢ではないはずだった。  ほんの、数週間前までは。 「お好み焼き、どーっすかー」  教室前の廊下をうろうろしながら、ジャージに花柄エプロン姿のマサがやる気のない声で呼び込みをする。僕も同じスタイルで、通り過ぎ

1987:さよならのハニー&レモン[中編]

([連作短編]茶飲みともだち:#06)    ノーザン・カウンシル。僕らのバンド名だ。  文化祭のバンドリストに登録し、放課後は毎日三宅家を訪れ、倉庫で練習をした。コピーする曲を何度も聴きなおし、修正するを繰り返す。マサは歌詞カードの英語にカタカナをふりながら、とにかく耳で覚えていった。キーボードと管楽器のメロディラインをカバーするのは無理があったものの、なんとなくかみあったり形になってくると、どうしようもなく胸がおどった。  たったの三曲。でも、偉大なる三曲だ。  そんな

1987:さよならのハニー&レモン[前編]

(連作短編「茶飲みともだち」#05)  秋は文化祭の季節である。  さいはての小さなまちに暮らすしがない公立高校生にとって、文化祭は人生のすべてを賭けた一大イベントだ。ずっと平凡に思われていた女子が眼鏡からコンタクトに変えて、おニャン子メンバーに引けを取らないかわいさであったことが知られ、男子の間で争奪戦が繰り広げられることはよくある話。だから、普段は冴えないやつが突然ステージ上でギターをかきならし、全校生徒六百人の頂点に君臨することだって、きっと絶対によくある話。けっして