ブルシット・ジョブはアンダーマイニング効果ではないか?
有名な心理学の実験がある。
無意味な作業をさせた場合、
報酬が少ないほど有益であると感じ、報酬が多いほど無益であったと感じる。
アンダーマイニング効果(Undermining effect)と呼ばれている。
正確には、自発的な動機に基づいて行う作業に報酬を支払った場合モチベーションを損なうというものだ。[1]
これは、ライアンとデシという名の研究者が、自己効力感の研究で明らかにしたものである。[2]
多くの心理学の知見が紹介される場合、もとの研究が紹介されないので敢えて詳しく書いた。
デヴィッド・グレイバーの邦訳版、『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』が岩波書店より今年の7月に発売され、反響を呼んでいる。私も163ページ(だいたい半分)読み終えた。
ここでのクソどうでもいい仕事の定義は、次のとおりである。
ブルシット・ジョブとは、被雇用者本人でさえ、その存在が正当化しがたいほど、完璧に無意味で、不必要で、有害でもある有償の雇用形態である。とはいえ、その雇用条件の一環として、本人は、そうではないと取繕わなければならないように感じている。[3]
マフィアの殺し屋は、クソどうでもいい仕事ではないが、
皿洗いを効率的に終わらせると上司に叱られ、労働時間いっぱいかかるようにチンタラ皿を洗うようにしなければならないのは、クソどうでもいい仕事の例として紹介されている。
こうした仕事は、人々に無力感や給料が良いのに惨めさを感じさせると紹介されている。
報酬がしっかりしているのに、モチベーションを大きく損なうというのはアンダーマイニング効果そのものではないだろうか?
引用文献
[1] Edward L. Deci (1971) Effects of externally mediated rewards on intrinsic motivation. , Journal of personality and Social Psychology 18 (1), 105.
[2] Richard M. Rian, Edward L. Deci(2000) When rewards compete with nature: The undermining of intrinsic motivation and Self-Regulation. , Intrinsic and Extrinsic Motivation, 13-54.
[3] デヴィッド・グレイバー(著), 酒井隆史, 芳賀達彦,森田和樹(訳) (2020) ブリジット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論. , 岩波書店.