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4回目の駅伝中継と佐藤楓

佐藤楓の人間としての面白さは、いぶし銀の楽器のようなもので一言や強烈な印象で説明するのが大変難しいのだ。
だから仕方なく、「おはつちゃん」には乃木坂46でトップクラスの美形ということで説明している。大きな瞳にタマゴ型のキレイなフェイスラインにほっそりとした体型だからあながち間違いではあるまい。しかも、この激動の時代においてゆっくりと成長、変化していくものだから、この子は僕らとは何か違う時間軸を生きているのではないかと思ってしまう。
サトウカエデという名前はご両親の出逢いの地となったカナダの国旗のメープルシロップから採られているというのだから実に洒落ている。きっと1000年女優なのだろう。

さて、そんなマイペースで、バスーンに負けず劣らず複雑性の深遠をもつ佐藤楓こと、でんちゃんが全日本大学駅伝のネット中継のゲストを務めるのは4回目である。
「駅伝が好き」というアイドルにしてはかなり珍しい趣味を発信し続けたことがきっかけで掴んだ仕事なのだが、これがあの名物アナウンサー増田明美が舌を巻くほどの駅伝マニアなのである。
こうした仕事に出てくるアイドルは、大体にわかか、よく知りもしないがお飾りとしてやってくるのが常であり、苦々しく思っていたのであろう。「どうせ知らないでしょ?」という瀬古利彦を何年か前には、その知識量で圧倒し、この子はホンモノだと納得させたこともあった。
実際今回の全日本大学駅伝でも、区間賞で新記録が出たときなど聴いた瞬間から同じような記録をもつ選手の名前と記録を口にするものだから、たまげてしまった。
それはもう、解説のオジサンの仕事なのよ!

今回成長を感じたのは実況アナウンサーと解説の八木勇樹にツッコミをいれ、時には進行を左右する言動をしたことである。
序盤2区の途中、事前に用意してあった企画を進めるコーナーがあったのだが、
「それよりも今はレースの状況が気になる、面白い」
という趣旨の発言をし、大事なレースのシーンをちゃんと放送、取り上げさせたところなどは実に感心した。水もののように状況が変わる駅伝では、確かにあの瞬間取り上げなければ後で取り返せないものであったろう。

その一方で、トイレ休憩にアナウンサーと解説者が離れ一人解説をさせられた時には

「國學がトップで平和ですねー」
※レースの状況に大きな変化はないですねという趣旨だろう

とまるで日曜日のおばあちゃんのようなことをまったり言うものだから、この緩急の凄さにやられるというものである。
一人喋りが得意なタイプではないので、沈黙に耐えられない素振りはあったものの要点を抑えた滑り出しのトークは中々良いものであったと思う。

数年単位でどんどん新人が入ってくるアイドル業界で生き残るのは実に大変だと思うが、佐藤楓の駅伝で築いたニッチを突き崩せる子はたぶん後20年くらいは出てこないと思われるので末永くのんびりと育って長生きしてほしいものである。

よく棒読みと言われ演技力のなさをファンやスタッフにもイジられているが、それはなりきる系の演技手法においてであるので、そうしたメソッド演技法とは対極の脚本をひたすら読み込み世界観を理解するアンソニー・ホプキンス的なアプローチでは卓越した表現をみせるのではないかと期待している。何しろこれだけ突き詰めてプロの駅伝仕事師を驚かせるほどの情報処理ができるのだから。