9月27日:すっからかん

すっからかんになった子どもの頃の遊び場。これから感傷に浸ります。

井戸から冷たい水が出る、奥には椎茸の原木。藪から蛇が出て、トゲの痛々しい柚子がなり、わらびはそこかしこに生え、自然薯が稀になり、筍がとれ、柿はいつも渋く、タラの芽はわんさか。陰に山芋。カボチャは知らぬうちに増える。椿の実はまずい。爺ちゃんは綺麗なコスモスを植えた。綺麗な川でも、山上に牧場があれば水はのんでいけない。米を引いていた石があり、竹は家を貫いて、地震のときにはここが灯台になった。あんなにいつ使うかもわからない道具でいっぱいだったこの場所が、こんなにすっからかん。

結局念願かなわず、きゅうりをなったまま食べることはなかった。大声出しても届かないくらい大きな大きな畑だった。ひとりで管理してた爺ちゃんは本当にすごい。もうちょっとわたしが歳をとっていたら、ここに住みたかったな。この場所は、知らないおじさんと、農業を学ぶ女の子の手に渡ってゆくという。こうして場所に、記憶が重なっていくんだろう。滋味深い場所になってくれよ。さらば。

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