9.センスレス

構成がおもろい四つ打ちの曲。アジカンはコーラスもうまいなぁ。そこで加速するんやなぁ。という印象の曲。

「コンクリートの〜温度感も何もない」までは、「ワールドアパート」や「バタフライ」でも触れられている通り、無機化、電子化、高速化、身体を離れて体温を失ったものたちと、自分の生の実感との乖離を歌っている。
センスレスとは意識・感覚を失ったという意味だ。「バタフライ」の作中主体のように5メートルの現実感も失い、走光性に導かれて意思もなく泳ぐ体のことを表している。表題なのでかなり強く表している。

灰色の空はもちろん作中主体の生きる現実を表しており、主体がつまらない・希望のないと感じていることを示している。しかし夜=電気や文明の利器でカスタマイズできる時間になれば夢=個人の目標ではなく、多くの人が理想と思うような極度に一般化された緩く心地よい状態のように作り上げられる。赤と緑からはクリスマスを彷彿とする。もっぱら日本では商戦として捉えられ、人々は浮かれきって消費に高じる。朝になってしまえば、ありのままの太陽光がふりそそぎ、曇っていればそれすらなく、覆い隠せない時代の雰囲気がわきあがるのだ。夢の状態にしがみつこうとする人々の姿の跡を濃く残して。

毎日毎日、人々と情報は錯綜して、ブランドバッグのようなステータスが自分の欲望としてナ擦り付けられ、再び感覚と意思を失った姿が描かれる。それが現代のスタンダード(同調圧力、暗黙の了解)である。(のちの「スタンダード」で歌われる、賛同する人々と風変わりなままの少女という対比も参照されたい)

しかし、「それでも想いを繋いでよ」「君は消さないでいてよ」「心の奥の闇に灯を」と作中主体「僕」は歌う。何もしないままだと心は闇に覆われてしまうが、灯=想い=いま感じていることを消さないでいてよ、というメッセージが込められている。

「バタフライ」のメッセージをより社会的な喩えを使って表した曲なのだと思う。音楽的に面白いので好きな曲の一つです。

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