3.ブラックアウト

個人的にたいへん好きな曲である。まずサビが2つもあって豪華だ。船に揺られているようなギターのリフが心地よい。徐々にドラムが刻み始めて、なんと四つ打ちになる!そのビートの裏に例のリフが絡み合っている。天才か!

ちなみに、自分的にブラックアウトとアフターダークで1セットという認識があるのはなぜだろう。名前?

一聴してすごみのある歌だと気付く。通奏低音のような悲しみ、無力感、そこはかとない焦燥感をおぼえる。だけど、それだけじゃない、ビルがぶっつぶれるようなエクストリームな事件が起きずとも、そこにいるだけで擦り減るようなキリキリとする切迫感がある。ヤバイ。
(ハイハットのせい?)

Aメロはアナログな心象風景と近未来的な現象の対比で進む。
サビ1はそうした相対する二つの間の落差で感覚が鈍る中でも、自分の生の感覚、実感というものを忘れないでと願っている。
サビ2の凄み!「今ともしびがここで静かに消えるから君が確かめて」。死(に相当するもの)の場面に立ち会うように作中主体は親愛なるものに言われる。それはテロのような大事件ではなく、主体の手のひらの上、手の届く現実の範囲内で静かに消える(ワールドアパートと比較されたい)。実感してしまうことの恐れ、逆にエクストリームな苦痛を伴うということ。生の実感を逆照射している。それに対して作中主体は無力であり、それを「弱さと青さ」と呼ぶ。「青さ」に注目すべきだろう。若さゆえのたじろぎという免罪符と捉えるか、成熟への願いと捉えるか。一過性のものというニュアンスがある。おれもいつかは。
そうした瞬間に世界は主体と乖離してにじんでゆく。弱い痛みを繰り返して青さを乗り越えて行く。

もし「今ともしびが静かに消えるから君が確かめて」と言われたら、あなたはどうなるだろうか?

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