満島ひかり

付き合って3週間がたったある日、彼はやっとロン毛と決別をした。
私が嫌で嫌でたまらなかった少しウェーブのかかった胸上まである艶髪を。

人には似合う髪型と似合わない髪型がある
そもそもロン毛が似合う男とは、
彫りの深い小顔で首が長いことが必須だと思っている。
彼は平たい顔族なのでまったくそれにあてはまっていない。

昔の坊主が似合っていたかは別として、
間違いなくロン毛は顔や頭の形的に似合う髪型ではない。

その日は私が仕事中に髪を切り、
仕事後にびっくりドンキーでごはんを食べる約束だった。

あのロン毛とやっとお別れできると思うと嬉しくて、
同僚に「彼氏が髪を切るんだ」とどうでもいい報告をしていた。

そして仕事が終わり待ち合わせの時。
ガードレールに座っているスカした満島ひかりがいた。
え?満島ひかり?

満島ひかりと思ったのは私の彼氏だった。

それは当時放送していた「ごめんね青春」というドラマに
出演していた満島ひかりそのものの髪型で、
8年連れ添ったロングヘアーとの別れに
思いっきり未練を垂れ流していることが明らかにうかがえた。

正直なところ、思いっきり短髪にしてくると思っていたし
この満島ひかりヘアが似合ってると思えなかった。

でもまだ付き合って3週間。
本音トークができる間柄にもなっていなかった。

「いや満島ひかりじゃん!てかまだ前髪なが!」
と喉まで出かけた言葉を飲み込んで、
彼の顔と後頭部を交互にキョロキョロと見て
「みじか〜い♡」とリアクションするので精一杯だった。

あんなに髪を切って欲しがっていたのに、
このリアクションの薄さで彼もキョトンとしていた。

でもこれ以上褒めることはできないまま、
適当な会話をつなぎびっくりドンキーへと向かった。

一応髪を切った記念として、彼の写真を撮影することにした。
なのに満島ひかりヘアを受け入れられなかった私は、
まさかの後頭部だけ撮るという奇行に出た。

ちなみに付き合ってから彼の写真を撮るのは
これが初めてだった。
それはロン毛が嫌で写真に残したくなかったから。(ひどい)

それなのに髪を切っても後頭部しか撮ってもらえない彼は本当にかわいそうだった。

のちに少し距離も縮まり、
絶対前髪はもっと短い方がいいと勧めた結果
すぐに美容院アゲインをして
ようやく短髪デビューしたのでした。

そしてそこから、少しずつ写真を撮るようになったのでした。

髪型って大事!