10年の喫煙で15%が早期COPDになって、死亡リスクが上昇するかもしれない

たばこを吸っているとCOPDになる確率がどんどん上がってきます。COPDは進行性の病気なので、なんとか若いうちに、早いうちにCOPDを発見できないでしょうか。

実は、早期COPDはすでに定義されています。
1)10 pack-yearの喫煙歴があり
2)肺機能検査で1秒量(FEV1)/努力肺活量(FVC)が正常下限値(LLN)を下回る
(Martinez FJ, Han MK, Allinson JP, et al. At the Root: Defining and Halting Progression of Early Chronic Obstructive Pulmonary Disease. Am J Respir Crit Care Med. 2018;197(12):1540-1551.)
後述しますが、肺活量検査と喫煙歴だけですぐに診断ができます。

さて、たばこを10年くらい吸っていると、早期COPDにはどのくらいの方がかかってしまい、そして将来どうなってしまうのでしょうか。
まだAcceptされてそんなに経っていませんが、早期のCOPDについての論文が記載されています。デンマークからの疫学研究です。

Çolak Y, Afzal S, Nordestgaard BG, Vestbo J, Lange P. Prevalence, Characteristics, and Prognosis of Early COPD: The Copenhagen General Population Study. 

Am J Respir Crit Care Med. 2019 Nov 26. doi: 10.1164/rccm.201908-1644OC. [Epub ahead of print]https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31770495

根拠:慢性閉塞性肺疾患(COPD)を発症するリスクが高い若年成人を見つけることができれば、発症前に予防措置を実施し、進行を止めることができる。
目的:一般集団における早期COPD患者の有病率、特徴、予後を調べる。
方法:デンマークの集団ベースのコホートから無作為に選んだ105,630人の成人を調査した。初期のCOPDの定義を、10 pack-year以上の喫煙歴がある50歳未満の成人で、一秒量(FEV1)/努力肺活量(FVC)が50歳未満の正常下限(LLN)を下回ることとした。
測定と主な結果:10 pack-year以上の喫煙歴がある50歳未満の8064人のうち、1175人(15%)が早期COPDであり、そのうち58%が現在も喫煙していた。早期COPD患者は、慢性呼吸器症状を来し、重度の肺機能障害、喘息、および気管支炎/肺炎の既往をより頻繁に有していた。 14.4年間のフォローアップ中に、閉塞性肺疾患を伴う117の急性入院、肺炎を伴う227の急性入院、および8064人の若い成人で185人の死亡が観察された。 COPDのない人と比較して、早期COPD患者は、COPD急性増悪による入院のハザード比は6.42(95%信頼区間:3.39-12.2)、急性肺炎の入院のハザード比が2.03(1.43-2.88)、すべての原因による死亡ハザード比は1.79(1.28-2.52)であった。
結論:50歳未満で10pack-year 以上の喫煙者のうち、15%が早期COPDの基準を満たしていた。早期のCOPD患者は、慢性呼吸器症状と重度の肺機能障害を抱えていることが多く、急性呼吸器入院と早期死亡のリスクがみられた。

論文の医学用語は色々読んでいて小難しいですが、これは驚くべき報告です。要するに、10-pack-yearの喫煙者、つまり1日20本を10年続けると、15%が早期COPDにかかってしまい、将来15年くらいするうちには、呼吸器症状がみられたり、肺炎になったり、早く亡くなるリスクがあがります。これは20歳からたばこを吸っていて、30歳でも当てはまることになります。

10年喫煙されている患者さんは肺機能検査をしてもよいかもしれません。
現在広く行われている肺活量で、1秒率の正常値が基準以下であれば、要注意とわかります。

計算方法ですが、日本呼吸器学会のホームページで2014年にLMS法による日本人のスパイロメトリー新基準値が公開され、エクセルで計算できるようになっています。FEV1/FVCという項目が LNNという値を下回っていれば、自分が早期COPDとわかります。通常の検査結果用紙には記載はあまりないとないと思います。
https://www.jrs.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=72


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