2021年の俺 第2週

坂から転げ落ちるように

一度バランスが崩れれば、地域はまさに雪崩のようにすべてCOVIDに飲み込まれていきました。やっと作った病床はいつでも満床で、なんとか早く退院してもすぐ埋まるようになりました。その理由はいたってシンプルです。患者さんが増えるペースはどんどん上がりますが、退院できるペースは変わらないからです。-2+3は+1です。中学生どころか小学生でもわかります。
毎日のように保健所・都道府県からの入院調整センターからの受け入れ要請が来るようになりました。電話越しから聞こえる彼らの声には、悲鳴だけでなく諦念すら混じっているように感じました。どうしてこんなことになってしまったのでしょうか。どうにかして助けることはできないのでしょうか。

ついに破綻した保健所

毎日のように保健所には発生届が届き、その数は増えるばかりです。経路は家族内感染、年末年始の親族の集まり、高齢者施設、不明など様々です。保健所のマンパワーは変わりませんので、クラスターを追うことなど到底不可能で、新たな陽性者もすぐには把握できないのです。
SpO2(経皮的酸素飽和度)という、体の中にどのくらい酸素が必要か、重症になっているかを判断する重要なツールがあります。この値が正常値を下回っていれば、重症化している大きな判断指標になります。すでにSpO2が低下している一部のご高齢の方ですら、行き先がなく自宅や施設で待機しているままになっています。「命の選別」と言う残酷な言葉を口にするメディアもありますが、もはや選別するにも全体像をがわかりません。他人事だと思って適当なこと言ってんじゃねえよと思います。

病床が増えない

この1週間、とにかく病床を増やしてください、重症を受け入れてくださいという保健所の悲鳴が毎日のように来ています。しかし、病院は通常業務を続けたいわけです。そして通院している患者さんも、「まさかこの病院にはコロナなんていないですよね?」と他人事のように言われます。気持ちはわかりつつも、どう反応して良いのかわからなくなることがあります。病院の中だけでなく身の回りにも迫っているし、あなたも実は罹患しているかもしれないのに。
従来あるコロナ病床を増床することばかりが焦点になっていますが、どう考えても増えていくコロナ病床を同じマンパワーで運用することはできません。最大積載量は "積めるだけ" みたいな限界トラックチャレンジでもなく、ひっ迫ひっ迫言って騒ぐだけではもなく、うちょっと今眠っている医療資源を有効に活用することを考えてほしいです。
具体的には、今まで病床を作っていなかった病院から病床を開けてほしいです。

高齢者で病床は埋まっていく

中等症でも、比較的若い患者さんはなんとか改善していく方が多いです。しかし、高齢者の患者さんは重症になることも多く、命を落としてしまうことも残念ながら多いです。そして、それだけ在院日数(入院期間)も長くなるために、今までのように患者さんを受け入れられなくなっています。病床利用率は○○%と言いますが、その内訳に高齢者の患者さんが増えていることでしょう。この期に及んでまだ、100パーセントではないから大丈夫、おめえら全力出してないと思ってる人が言ってることはそれこそ限界トラックチャレンジです。100%中の100%!(戸愚呂弟)になれば、増え続けるのに誰も入院できないですということになります。

願い、祈り

自分の病院はコロナを診ない、評判を落としたくない、通常業務を続けたい。そういうところもあるでしょう。残念ながらそれが続けられなくなるのは、もはや時間の問題かもしれません。できるなら今、1床でもいいですので受け入れてもらえませんか。確かにもはや焼け石に水なのかもしれません。だけど、陰圧室がなくても、人工呼吸器ができなくても、ECMOがなくても、ICUがなくても、酸素とステロイドだけで救える命があるかもしれないんです。神様がいれば祈る気持ちでこの第2週を過ごしています。

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