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2021年の俺 第1週

いきなり様子が変わった

あまり考えたくはないですが、恐れていたことが起こり始めたような気がします。そう、発熱外来に毎日のように風邪症状の患者さんがきて、典型的な症状ではなくてもPCRが陽性になってしまいます。
スーパーにしか出歩いていないはずのご高齢の方が陽性になったときは驚きました。若い女の子に陽性の結果を電話で告げたときには電話越しで泣かれて胸が詰まる思いでした。
HER-SYS(厚労省が作ったCOVID-19保健所に発生届を提出するシステム)もほとんどが経路不明と書かざるを得ません。感染地区も不明って書いているのになぜ地区を書かせるのかよくわからん仕様なのが謎ですけど(これは厚労省にいうべきか)。しかし、感染者が増えることは今の世の中では想定内です。もっと大きな問題があります。

医療者同士の情報の格差が絶望的

私は病院のICT(infection control team:感染管理チーム)なるものに所属してます。ICTへの相談の多くは、救急から入院する患者さんが発熱していて、COVID19が疑わしいかどうか判定してください(というより否定してください)という銃口を突きつけられたような仕事です。この1年Covid19の画像所見に関する報告はかなり読み込み、ある程度は鑑別できていたと思っていましたが、それは症例数が少なかったための錯覚であったと今は思います。
症例が増えれば増えるほど非典型例がでてきます。画像所見はものすごく神経を研ぎ澄ませ、集中していないと見逃しかねないようなすりガラス陰影などがあり、画像でルールアウトは困難になってきました。
僕は、COVIDとは別の、とある感染症の診断についてはある程度の能力を持っていると考えています(知らんけど)。漠然とした感染症の診断のためには、「年齢、性別、基礎疾患」などの「客観的な情報」、「詳細な病歴」「画像所見」これに何よりも大切なのが、上記の所見とともに特定の疾患に多い「シチュエーション」を組み合わせて判断します。PCRなど特異度が高い検査が陰性でも、その他が怪しければ(特にシチュエーション)油断はしません。
しかし、この疾患の恐ろしいところは数が多くなっている(検査前確率が高いということ)のためか、「年齢、性別、基礎疾患」はもはやなんでもありです。現時点では、重症化因子(男性、糖尿病、高血圧、BMI高値など)を持っている方が具合悪くなって来院したときはとりわけ厳重に警戒することが精一杯です。そしてCOVID-19にあるあるのような特定のシチュエーションをつかめていません。この感染症が新しすぎるのと、多すぎるからです。
その状況でCOVID-19の診療に携わっていない医療者は「はやく解除して大部屋入れていいすか、個室無いッス」という空気で、僕たちに「お願い」してきます。僕たち、もはや否定なんてできず、今入院している患者さんが無症候性感染者か、院内に鑑別のつかない発熱患者が複数居ないか、「院内発熱警察」をこっそりとしているくらいの状況なんですけどね。

違いそうだから解除ではなく、もう本物かもしれない覚悟

COVID-19に関わっていない医療者が悪いというわけではありません。ややムカついてはいますけど。それでも、立場はとても良くわかって、病院の通常業務を維持してくれている仲間たちなのです。
僕たちは彼らをサポートする立場で、それにやりがいをもっています。しかし、どちらかというと全体的な雰囲気が問題です。どうしても病院全体として「対岸の火事」のような捉え方をしている感があります。それは一部の病院の幹部でも同だったりします。
この地域の自宅待機患者の数がどれくらいかクイズとしてみると、50倍少ない数字を答えられたときは、結構ショックでしたけどね。

通常診療の縮小との葛藤

病院としては通常業務(コロナ意外の日常の診療)を止めたくはありません。そりゃそうです当然です。ここ病院ですし。
ただ、状況からはいつかは絶対に病院の中から感染患者がくすぶった火のように現れ、そこから火事になる日がきますよね。どの時点で日常診療を止むを得ずストップするのか、とてもむずかしいところに病院幹部も悩まされているのでしょう。そういう判断に絶対悩みたくないので病院幹部とかにはなりたくないですね(そもそもなれませんが)。

院内安全対策委員会なるものと発熱警察

どこから現れるかはわかりませんが、僕としては複数の院内患者発生は「最も通常業務を続けられそうな部門」から発生する(している)と考えています。すべてが「想定外」であるためです。
ここを言うと叩かれると思いますが、どこの病院にもある「医療安全対策委員会」なるものがどう動くかを注視しています
彼らは言います。「大きな事故を防ぐために、人間は自らの注意だけに頼るのでなく、いくつかの防御網を作って事故を防ごうとしますが、それでもその目をすり抜けて事故は発生します。幸い大きな事故には繋がらなかったけれども、ヒヤリとしたりハッとするような事柄が、その防御網に留まる事で何が問題かを教えてくれます。」彼らはこれを、「ヒヤリハット」とよび、報告を推奨しています。
これ、「事故」を「感染」に置き換えれば、院内感染対策そのものですよね?意外にもCOVID-19であった症例などは報告はインシデントレベル0の報告にはならないでしょうか。形骸化していなければ、とても良い感染対策システムにはなりませんか?全国の病院の皆様はどうですか?すこし意地悪ですかね。

頑張れ全国の仲間たち

頑張れ全国のPCRをフル稼働させている技師さん、全国のICT、そして発熱警察の俺。明日はどっちだ。とりあえずPPI(プロトンポンプ阻害薬:胃薬みたいなもの)飲ませてください。胃が痛いです。でもね、無症候性感染者(症状が無いけど人にうつしてしまう人)という概念があるため、ある程度はどうしようもありません。症状がある人からをいかに早期に見つけていくかがICTの役割となっていくのでしょう。

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