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ワクチンとマスコミとお医者さん

この小さな小さな病院にも連日、中等症だけでなく、重症化した患者さんも運ばれてくるようになりました。どうしてそうなったかと言うと、患者さんが多すぎて、大きな医療機関は重症を抱えきれなくなったからです。ああ、ついにこんなところにまで重症患者さんが、という気持ちです。
一方でご高齢の方は改善しても施設や療養型病院に戻ることへの壁が、なぜか果てしなく高く(ホントにイライラしています)、結果としてCOVID−19が改善しても病院に社会調整のためにずっといらっしゃるかたが増えてきました。そのため、新たに患者さんを受け入れられず、いったいこのあたりの重症化しても入院できない患者さんはどうなっているんだろう、そしてどうなるんだろうと、どうしようもない不安と絶望感に襲われつつ過ごしています。さて、そのなかの希望の光といえるのが、やっとでてきたワクチンでしょうか。

ワクチンの驚異的な成績

ファイザー/ビオンテックのワクチンは有効率95%でした。これってありえんくらい凄い結果です。燃えろプロ野球でいう、ホーマーがバントでホームランを打つレベルです。もしCOVID-19にかかってしまっていても発症リスクは打たないより19倍低くなるってことです。副作用も大したことなさそうです。ヒャッホーです。僕ならあまり打つことに迷いません。
怖い副作用の一つしてアナフィラキシーショック(めっちゃ強烈なアレルギーで血圧が下がる状態)があります。頻度は100万人のうち1人だそうです。確かにそういうことが自分におこってしまうならどうしよう、と思えば怖いです。しかし、こういったリスクとベネフィットについて考えて判断することが大切です。そういうことは、医療においてはワクチンだけでなく様々な場面であります。絶対に安心、安全な検査や治療はありません。僅かなリスクとメリットを天秤にかけて検査や治療を行っています。たとえばお腹が痛くて痛くて救急車で運ばれたとき、お腹が痛い原因を調べるときなどによく使う「造影CT」という検査があります。ヨード造影剤の副作用で、アナフィラキシーショックが2万5千人のうち1人だそうです。あれっコロナワクチンの40倍ですか・・・だけどお腹いたい原因を調べてほしいです。しかたないし。おれ生き続けたいし。NISAにだって元本割れするリスクがあるし。
もちろん、怖い副作用はきっと起こるでしょう。あとで数年後に「起きてしまったまれな副作用」について問題になるでしょう。でも、僕は今を生きています。こんなに患者さんが増えていれば、街中に陽性者があふれ、絶対にかかる日がくるでしょう。新型コロナにかかってしまえば、死ぬ確率は40代のおっさんである僕は0.4%、つまり2500人に1人いや!?250人に1人?の確率で死ぬんです、まじかよ。その天秤にかけられるなんてまっぴらです。
と、まあワクチン激推しで売り込み芸人みたいになっていますが、僕はこのワクチンを心待ちにしています。

お医者さんが大嫌いな「メディア」

メリットとデメリットを比べればワクチン推進派はマジョリティであり、反対派はマイノリティのように僕は考えるわけですよ。しかし、テレビや雑誌やインターネットでは接種について行うか行わないかの議論がなされているようです。どうしてこういうことが起こるのでしょうか。それはやっぱりお医者さんが大嫌いな「メディア」の影響なのでしょう。
もう感染者が何人だの重症者だの逼迫だのステイホームだのソーシャルディスタンスだの自粛が強いられ倒産していく老舗の名店だの、うんざりですよ。暗いニュースは聞き飽きたわけです。ちっとは明るいニュースねぇのかよ。そこで現れたワクチンのニュースは、みなが食いつきました。ワクチンについて皆が興味を持ちました。
一方で、同じ「メディア」から今度は「ワクチンは安全なのか?ワクチンの真実!お医者さんは○割しか打たない!」とか、僕からしたらありえんニュースが流れてくるわけです。それがメジャーなように。そして、その煽りに一部のお医者さんが激おこになるわけです。Twitterでメディアを罵倒してしまうのです。

罵倒する、こき下ろす姿は人を不安にする

お医者さんは一般の人と知識が段違いなので、お医者さんにとっては簡単なことでも「こんなことも知らないの?」みたいなウエメセになって話していることがあります。こういうウエメセの態度や、意見の殴り合いをみて気持ちよく思う人はいません。いくら言うことが正しくても、見ている一般の人たちは「この人余裕がないのかな?ホントにこの人の言うこと正しいのかな?」と、ドン引きしてしまいます。怖い人たちが言うワクチンって大丈夫なんだろうか・・・不安に思います。こうなれば、お互いの意見をよく聞いて判断しよう、と思うわけです。
そう、賛否両論の罠にハマってしまうわけです。賛否両論って、一番ここちよいおさまりどころですからね。「考えるのやーめた!なかなおりしよっ\(^o^)/」よくある風景です。

賛否両論になったらメディアは丸儲け

僕がカネを稼ぐためだけに魂を売ったメディアなら、一方で褒めて売上を伸ばし、一方で恐怖をあおり、不安に思ってしまう人に対しての売上を伸ばし、その人達を炎上させ賛否両論に落とし込むことで一つのニュースでたくさんの雑誌の売上を伸ばします。そりゃあ政治的な思惑はあるでしょうけれども、世の中の目立つ人達を煽って戦わせて、判断できない人たちのうち、賛成の方や反対の方、迷っている方から同じネタでずっと食っていけるんです。多分煽るだけ煽って自分は打ちます。
沢山の患者さん(普通の人達)を診ている自分としては、リスクとベネフィットをよく考えているような意識の高い人は本当にレアキャラです。インフルエンザの予防接種でも、私はインフルエンザになりたくないから打ちます、とか、去年打ってもインフルエンザになってないから今年は辞めたいとか、そういう感じですよ。そういう何も知らない人を賛否両論の罠にはめてしまうのが恐ろしいところです。一部のお医者さんもある意味罠にかかっているのかもしれませんね。

皆が幸せになれる嬉しいニュースが沢山流れる日を楽しみに生きます。
今週は本当に大変でした。今度の土日には時間ができそうなので、コロナ以外の仕事にも専念したいです。

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