R・カレブ・ゾロニス
SF小説 ボー・アルーリン
第21話 「R・カレブ・ゾロニス」
Date: 銀河暦12065年
Place: 惑星サンタンニ
参考注釈
R・カレブ・ゾロニスについて
「カレブ」はヘブライ語に由来し、「忠実」や「献身的な者」という意味を持っています。
カレブという名前は人間の本質や存在目的に対する深い問いかけを象徴している可能性があります。彼が「忠実」であるということは、何かしらの大義や理想に対して絶対的な献身を示すものと考えられます。これは、彼が持つ使命感や、世界の構造に対する深い理解に結びついているかもしれません。
さらに、「カレブ」は、自己犠牲や利他主義という意味も考えられます。彼の行動や決断が、「個人の利益よりも大きな目的や共同体の利益を優先する姿勢を反映している」ならば、カレブという名前はその姿勢を強調するための象徴であると言えるでしょう。
また、「忠実」という概念をより深く掘り下げると、存在そのものへの忠実さ、つまり自己の本質や真理への誠実な探求を意味することも考えられます。カレブが自身の役割をどのように理解し、それに対してどのように忠実であるかが、彼の名前が持つ哲学的意味をより明確に示す手がかりとなるでしょう。
「R・カレブ・ゾロニス」
「やはり、サンタンニの文芸復興には思想的中心人物がいたのですね」ボー・アルーリンは軽い驚きを隠せずに言った。「驚きとともに納得です、レイチさん。それで現首相をコントロールしていたのですね」
「そうなんだ。そのカレブ・ゾロニスが消された」レイチ・セルダンは重々しく答えた。「ところがその首相はカレブがいなくなると、急に専制的になった。不思議に思わないかな、ボー?」
ボーは一瞬考え込みながらも、その謎に惹きつけられていた。「カレブがいなくなる前に僕は数回彼に会ってる。とても温厚で、優しかった。その反面、頭脳明晰でやたらに知識量が人知を超えていた」と、レイチが続けた。
「彼の出身はわかりますか?」ボーは興味深げに尋ねた。
「惑星ヘリコンと聞いている」
「それじゃ、あなたのお父様の出身と同じじゃないですか。乾燥とタバコで有名ですよね」
レイチは微笑んで、軽く首を振った。「君の頭脳もカレブばりだなぁ!」
ボーは謙遜して言った。「いやいや、それは違うと思いますよ。実は、心理化学という学問は、ときに莫大な情報分析が必要なんですよ。銀河全体のデータを記号論理で解くんです。それでおのずと、銀河内の惑星や物質、恒星、惑星のデータが頭脳に蓄積しちゃうんです」
レイチは納得したように頷いた。「なるほどね。それで、君の例の . . . 」
「『地球と銀河の6文芸復興の対応』の素案ですか?」ボーはことばを添えた。
「それそれ。それを僕の父に教えてくれたらなぁ、と考えるようになってたんだ。あれは面白い、っていうか、秀逸な理論だよ、ボー。それを早く完成してくれないか」
ボーは微笑んで応じたが、少し思案顔を見せた。「レイチさん、ところでカレブのことですが、あなたがサンタンニに来た理由が、お父さんの心理歴史学の影響だと言ってましたよね?」
レイチは少し驚いたが、すぐに落ち着きを取り戻した。「その通りだが、なにか?」
ボーは慎重に言葉を選びながら答えた。「はい、それはおっしゃる通りだとは思うのですが . . . 」
レイチは少し苛立った様子でボーを見つめた。「煮え切らないな、はっきり言ってくれないか。僕と君の間には何の秘密もないと思っているんだからな」
ボーは深呼吸して、さらに問いかけた。「はい、レイチさんの政治的思想についてです」
レイチは苦笑しながら応じた。「君って、痛いところを突いてくるね。図星だよ。僕は以前、惑星トランターでダール人たちの関係で『ジョラナム主義者』と関わっていたんだ。それが、父ハリに多大な危害を与えた。よりによって僕のせいでだよ。その後悔と反省からもサンタンニ移住を決意したんだ。正直言って、君の鋭い分析は勘所をついている。おそれいった!」
ボーは少し申し訳なさそうに言った。「訊いてはいけないことでしたか、それだったら謝ります」
しかし、レイチはボーの目をじっと見つめて言った。「ボー君、まだまだ煮え切らないな。まだ何か言いたげだな?」
ボーは少し戸惑いながらも、続ける決意をした。「ごめんなさい。まだまだ不明瞭なのですが、カレブとその『ジョラナム主義者』との関係がなんとなく引っ掛かるんです」
レイチは微笑を浮かべながら、ボーを見つめた。「君って、探偵学や刑事サスペンスも得意なようだね。驚くよ!」
次話につづく . . .
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