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指差呼称と大型車の運転

以前、クレーン運転や玉掛等の講習会を受けたとき、指差呼称の話になりました。

講習では当然のようにマニュアル通り、ある事象を見つめて目視と合わせて指差しをし、声に出して「●●、ヨシ!」…と、なんかの猫のイラストのような事をします。
こういった安全確認はとても大事な事です。大きな建設現場でも、電車の駅でも、大きな工場でもいろんな場所で行われているのを見ることがあります。

でも「慣れ」や「気恥ずかしさ」が邪魔をして段々やらなくなってしまう事があります。
そういった、要は「気の緩み」に付け込んで事故は起きます。

その講習で言われてハッとしたことがあります。
こちらの厚生労働省のHPをどうぞ。

https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo72_1.html

ある動作について、「指差し確認」と「それを声に出す(呼称)」を同時にするのが「指差し呼称」ですが、

実験であるボタン操作に対し、
1・なにもしないで操作する
2・声に出すこと(呼称)だけをする
3・指差しだけをする
4・指差しと声に出す(呼称)を両方ちゃんとする!
の4パターンで調査した所。

1の何もしないときのボタンの押し間違いミスが2.38%、1000回に24回押し間違えるという結果。
それに対し、2の声に出すだけだと1000回に10回、
3の指差しだけした場合は1000回に8回、
そして4のちゃんと両方行った場合は1000回に4回と言う結果になり、1と4の方法では6倍の事故率の差が発生したという結果に。

この調査結果は衝撃ですね。

で、今まで自分が大型車を運転する際にちゃんと出来ていたか?というと、注意して運転していたつもりだったけど、それがちゃんと真の安全を意識していたか?というと自信がなくなるという有様でした。

それをふと思い出したので、今回たまたま大型車で栃木まで移動する事がありましたので、その片道360kmほどの行程、できるだけ指差呼称をしてみようとチャレンジしてみました。

これ、なかなかに難しい。
何が正解かわからないのでとにかくいろいろとチャレンジです。

事故がおおいシチュエーションの1つは発進時だと思うので、発進時に
1・左ミラーを見ながら左手で(普通は右手が多いでしょうけど運転シチュエーションなので)「左ヨシ!」と発声
2・右ミラーを見ながら同様に「右ヨシ!」
3・トラックの左前にある、車体前方真下を見るミラーをみて「下ヨシ!」
4・前方の信号や状況をみて「前ヨシ!」で出発

これだけ。
出来なくはない。
ただ、青になってからコレやると、ちゃんとミラーの映像(鏡像)を見て、すり抜けバイクが来ないか?とか車両前方真下に人がいないか?など確認しながらやると4~5秒かかります。
5秒発進が遅れると、世知辛い日本では後ろからクラクションを鳴らされます。(アメリカなら撃たれる?)

なので前の信号が青になる1~2秒前を狙って1~やり始めると、わずかな遅れで出発できる。
あせると確認しているようで確認していないことがある。

流れでやってしまわないように注意すると、今度は運転操作がおろそかになる。
正解がわからないままやる事ですので色々検証しつつですが、わかってきた事もあります。

信号での発進時にこれだけの確認をし、また数秒後に交差点進入に際して左右・横断歩道・前方の信号の色(できれば歩行者用信号が点滅を始めていないか?なども)をすると、ほとんど車の運転のための操作は惰性で行わざるを得なく、さらに確認動作以外の前方注意がおろそかになりかねないということです。

確認をして進む事、それと通常の前方注意や基本的な運転操作を確実に行う事、それらが同列でないと行けないのに、指差し呼称に気を取られると却って危険ではないか、ということです。
安全のためにやることで却って危険を誘発してしまっては、まさに本末転倒ですね。

色々やりながら1つの解決策に気づきました。

結論。速度が早かったのです。

いえ、ブンブン飛ばしてなんかいませんよ。
おそらく停止から発進については軽自動車の加速よりもはるかに遅く、自転車にも最初置いていかれるくらいです。
それでも各種確認動作をしながら前方もちゃんと注意し、間違いない運転操作をするには、もっと慎重な速度で運行しないといけないのです。

な・の・で、要は速度です。
万が一事故が起きても、速度さえ低ければ被害は小さく抑えられます。
では速度を上げたくなる気持ちは何か?

・遅れてしまうのではないか?
・後ろの車が気になる

こんな事が理由にあるのではないでしょうか?
人によっては
・早く走れる所を見せつけたい
なんて人もいるかも知れません。高価な車を自慢したい人もいるでしょう。

でも事故を起こして人生を狂わせてしまうくらいなら、多少遅れても事故がないほうがいいですよね。
そして後ろなんて気にしても仕方ありません。詰めてくるとか、嫌がらせする人は速度上げても、またピッタリ付いてきます。
無視するしかありません。

実際、前述のミラーを確認して指差し呼称をし、それを3回~4回繰り返して発進。その後も交差点や横断歩道で歩行者がいないか?などを確認しながらの運行では、しょっちゅう指差し呼称があります。
正直呑気に運転してられません。ゴキゲンで歌なんて口ずさんだり、電話(たとえハンズフリーでも)もしてられれません。
要は運転操作で目一杯になります。

やってみるとわかります。
何度もやって慣れてきたつもりでも、左ミラーを指しながら「右、ヨシ!」と発声してしまったりします。前進していることに気を取られている事と、まだ不慣れで「確認の発声をしないといけない」ということに一杯一杯になっている面もありますよね。これは身につけば減るミスかもしれませんが。。。

でも要は小さな事故がそこで起きているんだと言えます。人や物に被害がなくても、「正式な事が出来てない」という事故です。その瞬間にそこに人がいたら、交通事故発生です。

反対車線から珍しい車が来たり、歩道を小学生が歩いている事に注意しようと思ったりするだけで、交差点や横断歩道での指差呼称を忘れてしまいます。「やるべきことをわすれた」という事故です。その時にちょうど人が渡っていたら交通事故発生です。

事故を起こさない!という覚悟は、逞しい【想像力】だと思います。

事故を起こして…例えば横断歩道で小さな子を轢いてしまい、目を背けるような惨状になって、「やばい!」と車を停めて降りてみたら、横断歩道の反対にいた母親が狂ったように泣き叫んでいる状況で、父親か誰かが掴みかかってきてぶん殴られて、その後も土下座しながら「すみません」「すみません」と大声で叫ぶしか居ない自分がいて、それを周囲でスマホで撮影している野次馬がたくさんいて、そのうちネットに無修正でUPされて、もちろん、業務車両を運転しているということはその先に現場があるわけで、そこに連絡しないといけないけど、道義的に今連絡していられないし、どうやって仕事の補填をしようか?とか、このあと逮捕されて仕事も信用もすべて、この20年以上かけて築いたものすべて失って、家族があって借金があって、その対応をどうしようか?
いや、今はそれどころではない、この血みどろの現状、どうしたら良いのか?トラックを前に進める事も後ろに進める事もできない。
警察が来て説明を求められて話をするんだけど、もう何を言ったか自分でもわからない状況。
そのうち死亡事故ならまあ現行犯逮捕されて一旦は警察署に行くでしょうから、もう歴とした犯罪者です。
そしてその後の賠償。保険があるとは言え、それに任せっきりにできません。被害者宅に行って見舞金(いくら?10万とはいかないでしょう?100万?何が正解かわからない・・・)を持っていって、大体門前払いと罵りを受けて打ちひしがれて、それでも何度も訪問しないと許してもらえないし、一生恨まれるだろうし、もう、こんな呑気にSNSで発信なんて被害者感情を思えば出来ないでしょうし、仕事先に謝罪行脚しないといけないし。
すべてがその後に降りかかります。

これをすべて耐えて生きていかないといけません。
え、やだ、死にたい。

そう思って事故現場で自殺してしまう加害者もいるそうですね。悲惨としかいいようがありません。

逃げたくなる人もいるでしょう。もっと重い罪になりますけど、これだけを思うと逃げたくなる気持ちもわかります。飲酒を隠したいとかそういう輩は1ミリも同情できませんが。

そうならない人生のために安全運転に心を砕く事が肝心です。
その1つが指差呼称なら、ぜひ導入したいのですが、ほんと中々難しい!
やらないよりやったほうがマシだけど、なれない内は、その事が事故を誘発しかねない。

もう、とにかくスピードです。
スピードを出さない。

今まで、「え?なんでこの道40km/h規制なの?50出しても問題なさそうじゃん!」と思っていましたが、トラックの運転席にのり、指差呼称をしながら、安全に進もうとすると、40km/hでも早いかも、と思うようになりました。

(そもそも大型の運転は、路側帯の白線と中央の黄色線の間に車体をギリギリで入れて走らせているので、何もなくても常に緊張の連続です。一番上の画像がそうです。ほとんどギリギリ!)

なので今まで事故らしい事故を起こさないで済んできた事には、神様に感謝しないといけません。
偶然でしか無かったのかもしれませんね。ヒヤリハットは有りましたが、上記のような凄惨な事にならずに済んで今まで生きてこられたのは幸せとしかいいようがありません。

ビジネスで大成することなんかよりも、交通事故なく、家族と笑って過ごせて、他人に迷惑を掛けない生き方ができたら、それで十分だな、とそう思いました。

ハンドルを握る事はとんでもない責任をおう仕事。
事故を起こすと昔は「業務上過失なんちゃら」って罪になりましたが、なんで「業務」なんだろう?プライベートで運転してる人だっているだろうに、と思っておりました。

運転はそれだけで立派な「業務」です。お金が発生しているかどうか?なんて話ではなく、「反復継続して行われている行為」で、「身体生命に危険を生じ得る」「社会生活上の行為」のことを「業務」ということらしいです。いまではもう「自動車運転過失●●罪」に改名されていますけどね。
プライベートだろうがなんだろうが、事故したら人生大損です。

安全確認をしっかりして事故のない人生を過ごしましょう。

さて、指差呼称どうしていこうか。

とりあえず解決策は、

1・とにもかくにもあわてない。時間の事は二の次。安全確認最優先!の気持ちを意識して持ち続ける
2・運転開始前の点検はもとより、車体全周をみて危険がないか(子供が居ないか?など)確認
3・発進時の指差呼称は着実に
4・運転操作第一で常に前方、側方からの出会い頭、後方からの追突やすり抜けに注意
5・車線変更で必ず体を動かしての目視確認を忘れずに
6・横断歩道の人に注意
7・交差点進入の際の左右前方の注意とわずかでも減速(アクセルオフだけでも)
8・右左折巻き込み最大限注意
9・後退時は基本誰かが後ろを確認。出来なくても自分がフットワークより降りて見に行けるように。
10・音楽を聞くのはともかく、ノリノリにならない。歌うと注意力が相当散漫になる
11・携帯通話も相当やばいと認識する
12・眠気を感じたらすぐ休憩
13・そもそも体調不良で運転しない
14・運転に関係ない、周囲の興味をそそられそうになるものを意識して無視する(変な格好したオジサンとか)
15・姿勢を正し、常にプロ意識を持ってハンドルを握る

こういう事を意識して、昨日よりも今日は「より安全運転に意識を傾けられた」と自分に胸を張れるような生き方をしていけたなら、事故の何割かは減らせるのではないか?
だいたい惰性でやっちゃった事の中で事故は起きるものです。

なんて打ってた翌日にニュースにならないように心をピッと引き締めていきましょう。
そうは言っても年間であらゆる車をおそらく3万km程度は走らせている身です。人より事故にあう確率も多少高いでしょうから、それでも家族、他人、財産、自分の体を守っていくために、それに適った合理的な行動が取れるよう「意識」をしていこうと誓いました。

某安全運転管理者より。

お気に召して頂けましたら、サポート頂けますと、やる気モリモリになります!よろしくお願い致します。