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カメラ台数の話(脱線多数/注意)

1カメ?3カメ?50カメ?100カメ?1000カメ?

カメラ台数のお話。
ライブやスポーツ中継、バラエティに至るまで、カメラ台数を競う事が多くなりました。

マルチアングルはテレビのプロの特権でもあり、素人さんでは中々簡単にはできない所。
ただ、限度もあるのではないでしょうか?という私見です。

以前とある学校さんの音楽会の撮影をしていました。
20年以上前、別の業者さんが入っていました。
カメラ3台、現場スイッチングと聞くと中々頑張っている会社が地元にあるではないかと思うのですが、実際はそうとは言えませんでした。
アングル・カメラワーク・切り替えの基本、全てめちゃくちゃ。ただカメラ台数があるだけ。
もちろん、20年前は目新しい事もあって受注もされたのでしょう。
聞くと趣味が高じて副業でビデオ撮影を始めた方らしい。電気屋さんでした。まあ当時はよくあることです。自社で扱っている民生用ビデオカメラで家族の撮影をする内に、発表会などを撮影してコピーしてあげたら保護者会で喜ばれて、なんとなくお金をもらうようになり、生来機械に強い事も相まってさらに上のグレードのカメラが欲しくなり、投資をしたら回収もしたくなり事業化、ほんと良く聞く話ですし、悪い事ではないと思います。

ただ機械があればビジネスが成功するかどうかは別ですね。

その業者さん、画作り等で不満が出る以前に、「そもそも納期が遅い」という事でした。
10月に撮影した音楽会が翌年の4月以降、ひどいと7月頃の納品だそうで、3年生はすでに卒業後。先生が郵送していたとか。
そりゃアカンわ。

そこでビビッドにお声がかかりました。
最初驚きました。なんと3カメで4人(スイッチャー込)で来て1本単価1000円だというのです。
だから保護者からは業者を変えるなら同じ金額で!というのがあったようです。
1000円で200本ほど出たとして20万円。どうもカメラマンはビデオクラブの方らしいので手弁当の趣味かもしくは日当5000円くらいのバイト感覚か。
200本のコピーとラベル作成、ジャケット挿入などの手間を考えたら身の毛がよだちます。
もちろん、パッケージを見せてもらいましたが、学校が配るプログラムをモノクロコピーしたようなものです。いわんやJASRACシール(今でこそ印刷でOK)なんてあるわけありません。

そこからが戦いでした。
私も開業当初ですから時間はあります。
1000円の縛りがあるのでできることから数年計画で始めます。
もちろん、ワンカメショーのみ!ワンカメショーが基本中の基本ですよ!音楽会をまずはワンカメで押さえられて、かつずっと見ているのに堪えられる絵を出し続けることが大事!

1人で行って撮影して簡単曲名テロップのみですぐ終わらせて手離れをよくする。
初年度のみは1000円で受けるけど、JASRACに手数料がこれくらいかかるからそもそも赤字になりかねないレベルという事を保護者にプリントで配って知らせてもらう。
内容が良ければ来年からワンカメのまま3000円にします。とも。
あとは文化祭と音楽会がセットなのですが、どうせ出向くので、文化祭を簡単取材して当日その場でダイジェスト編集!(今でいう婚礼撮影のエンドロールのようなものですよ)DVRaptorが搭載されたデスクトップPCを持込、撮っては取り込んでお昼の間に編集とDVDに焼き込み、閉祭式で上映!それでビデオの売上の他に学年費から制作費をもらうようにしたり工夫もしました。これが好評だったので数年続きました。
そういう涙ぐましい努力の末、直近では最終的に1本単価を5000円にまで持っていきました。
もちろん、その金額になるとコピーも横行します。20年近くやってきた中でコピーが増えてきた末には撤退もやむ無しと思っていた所(ディスカウントするよりも利益ベースに乗らないなら辞めてもいいという考え)でしたので他の事情(学校の不義理で撮影素材を販売できなくなった→DVを受けている生徒の顔を出せないからって事後に販売禁止になってしまった)もありその学校から撤退。今、また1000円に戻っていない事を祈ります。

だいぶ話がそれましたが、そんな感じでただ目新しいアングルってだけにマルチカメラを進めていっても良いものかどうかはわからない、ワンカメ(もしくは少ない台数のカメラ)でも充分いいものが提供できるという意味でした。

10年?もう少し前?視聴者がマルチアングルで撮影された映像を選べる技術がでました。
ブルーレイ収録されている映像を好きに選べるとか。
それ、普及しました?視聴者がブルーレイのゴムでグニャグニャなボタンを押して、たかだか数カメの映像を切り替えてまでみたいコンテンツってありました?
まあそれでも新しい技術としては試みもあったのでしょう。

今。
ライブ収録等では何10カメも出張るそうで。
もちろん、ファンがついてこそのイベントなら、その対象の演者をカバーできるカメラ台数は要るのかも知れません。
でもスイッチャーさんはすべて見れないんですよね?
事前打ち合わせしていたって限度はあるし、ミスもある。
前に16カメオーダーがあり弊社の中継車に16カメ繋いでMVに全部出して、乗り込みのスイッチャーさんが1人で切っていましたが、ほとんど使われないカメラもあれば、ミススイッチもあるし、追いきれていない感はありました。
そんなにカメラ台数要りますかね?

さらに。
ネットが発達し、圧縮技術も進化。
また視聴者が何10カメもある映像をマルチで見ながら好きなシーンを選んでUPにして見れるとか?
きっと技術的にはすごい事なんでしょう。
それをトラブルなく終わらせる技術はすごいと思います。
でもそれって制作の面では負けっていうか、選んで送り出すのがプロの仕事で、もちろん、100人中100人が満足するスイッチなんてできるわけないけど、マジョリティが認めてくれる所を目指すのがプロであって、視聴者で好きにみてください、っていうならスイッチャー不在じゃん。一般人が見ているとなれば、各カメラもスイッチングの時のような、オフタリーの時の激しい画角調整はできないし、ワークする意味もあまりない。担当エリアだけちょっと寄ったりちょっと引いたりの繰り返ししかできないのでは?

スイッチャー、カメラマン同士、視聴者が求めているもの、それらを常に頭に置いて、次になにを求められているのか頭脳をフル回転させて挑むのが中継ものの醍醐味で、そこを視聴者に委ねるのなら、現場で必要なのは高校生バイトのカメラ番と、安いレンタル屋さんから借りまくったたくさんのカメラとコンバーター、そして1人のネットワークエンジニア。
それは面白い番組といえるでしょうか?
自分で切り替えができるというトピックだけで飛びつく視聴者やメディアもあろうかと思いますが、見た人は早晩飽きませんか?
そして、「なんだ、テレビ屋ってこの程度のことしかしていなかったのか」って思われませんか?
一般からの、自分たちの仕事の評価を落とすだけのような?

そうじゃないでしょ?
コンサートの撮影なら事前に配布された音源を聞きまくって頭にインプットし、会場をイメージして自分のカメラポジションなら何が撮れるか考え、こんなワークができそう、とか、一緒に動くカメラマンと事前にコミュニケーション取って、この人はこの時よくこんなワークしてるから、次に切られるとしたらこんな画で待っていよう、とか、スイッチャーさんはああいう性格だから、ここは絶対この技でくるでしょ?とか、
そういうイメージトレーニングをして本番に挑み、それでも失敗や成功があって、その後の打ち上げで「お前、あん時のあれ、良かったじゃん!」とか「あそこは普通そうならないだろ?」みたいな話があったり、そうやって「チーム」を育んでいくのが中継だと思います。

テレビが衰退していく、なんて言われている中でその肝でもある中継において、ただの技術革新の部分だけに甘えて、本来テレビマンが持っていないといけない情熱まで忘れてしまっていいのでしょうか?

技術屋は技術を試したいだけですよ?批判ではなくて、ソフト面で勝負してる人はそれに負けない、言ってみれば相乗効果でさらに良いものになるような工夫をしないといけないと思うんです。

でもたまに私もめげそうになりますけどね。いろんな意味で。

上記の考え方はアナログコンポジットの頃からVEをしていたロートルの考え方であって、今の若い人がこれからの自分の時代を生きていくための話ではありませんので、参考にはならないかも知れません。
だからまあ、50カメ、100カメで良いのかも知れません。

私は100カメの編集なんてできませんし、10カメでさえ適切に全カメラマンに指示が出せるスイッチャーになれる自信はありません。

25年ほど前、まだひよっこだった頃にマルチカメラの1カメラマンとして使ってもらっていた時、ほんと人間性としては許せないくらい品のないスイッチャーさんから本番中にダメだしを何度もされて、終了時の反省会では涙ぐんでいた青年が今のコレです。
まだ、当たり前に飲み会のあとロケ車で移動していた頃の話です。
(もちろん、私はそんな事1度もしませんでしたよ?)

余談ついでに。

飲酒運転で言えば
二十歳ころ、ロケVEで呼んでいただいた都内の会社。出発の際にめっちゃ怖い風体のカメラマンさんがビール数本持ってHIACEに乗り込んで、冗談のように飲みながら運転していたっけな。
今ならそれを止められなかったら、私も犯罪者ですが、もちろん入れ墨が入っているカメラマンにそんな事いう度胸はありませんでした。
首から下げた画板のような台にVictorのTM-600とWFM-90(ハンドヘルドのハケモニ!)を置き、手にカメコンのRM-P9を持ってBVW-400をコントロールしてカメラマンのあとを歩いて(移動ロケ!泣ける)ついて行っていた頃のお話です。確かカラオケビデオ用で、撮影しながら色味を変えながら動くとかなんとか)
まあ、あんな泥酔車に乗っていて今五体満足でいられるのはほんと偶然の賜ですね。

また話が逸れましたが、久しぶりの投稿ですので色々盛り込んでみました。

お気に召して頂けましたら、サポート頂けますと、やる気モリモリになります!よろしくお願い致します。