見出し画像

再燃

映像機器は音響機器のように古い機器マニアが少ない。
確かに確かに。

音響機器の昔のもの。レコードとか真空管アンプとか、6mmレコーダーとか、8トラとか。

映像機器は?フィルムマニアというのもいるかもしれませんが、もはや入手も現像もヒヤヒヤですから、飾っている人いるかもしれませんが、実用しようとしている人は皆無かもしれません。

ビデオになってからは?
イメージオルシコンを作って「イ」の字を出そう!というマニアもいるかも知れませんが、稀有でしょうね。
もう少し進んで1インチや3/4インチを所有している人もいるとは思います。しかし、もう修理も効かず、壊れたらそのまま朽ちていくのみ。
いや!これからは3Dプリンターでパーツが作れるから、意外と復活する旧式デッキが出てくるかも!
撮像管はビジコン、サチコン、プランビコン、ダイオードガンプランビコンなどありました。いずれも真空管。

音響の真空管は崇め奉られるけど、ビデオの真空管はそっぽ向かれる。

これはなぜだろう?

1つに、そもそも映像機器は高額すぎて入手できる人が少ない→機器に思い入れがある人が少ない→動作品として現存する個体に繋がらない

2つめに音響機器の評価方法と映像機器の評価方法の違い。
音響機器の検聴において、「あたたかみのある」とか「深みがある」など、抽象的な表現も散見し、アマチュアオーディオの世界はケーブルや電源プラグにもこだわり、このコネクタを使うと音が正常化し、クリアで美しい音になる、とか謎製品が沢山あります。それはつまり「音質」なるものが確たる評価基準がなく、「良し悪しがわからない」「主観に委ねられている」面が強いからではないかと思います。
逆に映像は?いや、確かに3/4や撮像管の絵を「温かい」とかフィルムの絵を「深みがある」とか表現されることはあると思いますが、端的に、素人でも「解像度が高い」「色がきれいに出ている」というのが直感的にわかるから、と思います。数値化されるファクターはできれば高性能なほうがいいので、であればレトロな機材よりも、最新の機材のほうが「高性能なはずだ」となるのだと思います。
(これについては間違いではないとは思いますが、例えば時代劇などは4Kだとシラケるということもあり、画質一辺倒はどうか?とも思います)

3つめに単純に修理に技術が必要ということ。周波数が高いものはそれに比例して求められる精度も高くなり、修理に技術を要する事から、状態がよく残っているものが少ない→触りたくても諦めてしまうなどで「古いビデオ機器大好き人口」が増えない。

まあ、こんなところでしょうか?

で、私のツイッターを見ている方でしたらご存知ですが、何をトチ狂ったのか、最近古いカメラを買い漁ってしまいました。大人買いとでもいいましょうか。

画像1

なかなかの機材です。
左奥がPanasonicのWV-F50AとSONY EDW-75のムリクリドッカブル。
左手前がSONY BVP-5とSONY BVV-1ベータカムの正統派ドッカブル。
右奥がSONY BVP-3とCA-3の単体カメラ。
右手前がSONY BVP-1とSONY BVV-1ベータカムの超エポックメーキングだったドッカブルの元祖。
これら、どういう経緯で出てきたのかわかりませんが、ヤフオクに出てたので思わず捕獲してしまいました。
ベータカムのカメラとデッキは組み換えが自在にできるので、BVP-3とBVV-1をドッカブルにしてみました。

画像2

画像3

このセット。私がこの業界に入るきっかけになったカメラセットです。

私が小学校5年生くらいの時。どういう訳が東京のTBS様が母校を取材にきました。
今から36年も前の事です。その時、背の高いガッチリしたカメラマンさんが担いでいたのがこのセットです。めっちゃ重いこのセット。10kgは超えています。撮影できるようになるのに最低でも1分はかかるし、録画しかできないから再生確認なんてできないし、めっちゃ感度悪いから室内では照明必須だし、バッテリー食いで1本のバッテリー(NP-1)で40分くらいしか動かないし、テープは当時は20分しかなかったし。きっと大変だったことでしょう。しかし、あの時見上げたカメラマンの勇姿に惚れてしまい、それからカメラマンになりたいと思うようになりました。
(ちなみになぜ小5がBVPだの分かったのか?といいますと、その直後に本屋さんで「ビデオα」誌を見て、それでわかりました。私が最初に買ったビデオ専門誌は「ビデオα第6号」まだ季刊だった頃、っていうかもう廃刊になってますが。たしかやっとBVP-5が登場した頃の本でした。小5が1500円もする雑誌を買うのは清水の舞台から飛び降りるようなものでしたが、まあいまこうして居られる礎だったわけですから、無駄な投資ではなかったでしょう、きっと。
ちなみに、このセット。
VTRが通電しません。ヒューズが切れていましたが、交換しても通電しませんし、今度はヒューズが切れません。ナゾですね。どこかで過電流が流れているような挙動があるようですので、余裕が出たら修理にチャレンジしたいと思います。
カメラ部は最初の写真にあるCA-3カメラアダプターを使うとまあまあの絵が出ました!これはGOOD!生きていた!なんとかデッキ部を稼働させて昔にタイムスリップしたいものです。

で、SONYが最初に作った放送用CCDカメラのBVP-5。

画像4

画像5

こちらもBVV-1ベータカムデッキをドッカブルにするとこうなります。
BVP-3よりスマートになりましたね!これはこれでかっこいい!
BVP-3はサチコン3管式。BVP-5はCCD3板式。これにより小型化、高感度化、低消費電力化が図られ、かなり普及しました。撮像管カメラの扱いにくさがなくなり、だれでも扱えるようになり、その上安くなりました。

前述の「ビデオα」誌の広告でBVP-5が230万と知り、小5の私は大人になれば買えない事はないなと思う変態ぶりを発揮していました。
(まあ、現実40歳になって、放送用4Kカメラを4台、4Kスイッチャー、トレーラー型中継車を新品で揃えたんですから、ある意味集大成かも)

なのでその後の人生を決めたカメラとしてこのBVP-3とBVP-5はビビッドにて捕獲してモスボールしておいても間違いではないだろう、と判断しました。
(まあ、壊れている部分はおいおい直しましょう)

その他のWV-F50AカメラとEDW-75デッキの変態ドッカブル。こちらについては思い入れがあるわけではありません。
あまりにも変態な組み合わせだったので思わず買ってしまったのです。

画像6

これですね。
この変態ぶりですが、まずパナのカメラにSONYのデッキという組み合わせ。
放送用の世界では各社のカメラとデッキが組み合わされるのはこの時代沢山ありました。

民生用がないのであまり知られていませんが、池上というカメラメーカーのカメラと前述のSONY BVV-1ベータカムデッキ(のちのベータカムSPデッキBVV-5やベータカムSXデッキDNV-5などに続く)のドッカブルは、当たり前にありましたし、その他、NEC(SP-3、SP-3A、EP-3など。いずれも所有したことあり)、TOSHIBA(SCなんとか?1台所有したことあり)、HITACHI(CCDではFP-C2、Z-ONEなど。撮像管カメラでもドッカブルあったような気がしますが失念)などなど。
だけど、Panasonicの業務用カメラ(放送局向けカメラよりワンランク下で価格が安い)とSONYの業務用ビデオデッキ(しかもEDベータというレアモノフォーマット。一体何台でたのやら)のドッカブルに、専用っぽい中間アダプターが入っている。このアダプターが珍しい!しっかり作り込んであって、形状も色味も合わせていて、インターフェイスの機能を全うしている。これは珍しい!と買ってしまいました。
実際、火を入れてみたら、デッキ部は不調で、一旦はテープが回るものの、回転ムラで自動停止してしまう。闇は深そう。

最後にSONYの単管式カメラBVP-1NとベータカムデッキBVV-1Nの組み合わせの紹介。

画像7

これ。Nがつく事でおわかりのようにNHK仕様。細かい仕様変更があるのですが、それはともかく、色が黒ですぐわかりますね。
先程のデッキ部はツートンカラーで明るい色でした。
BVV-1についてはツートンのほうが好きですけどね。
こちら。カメラ部はかろうじて生きていました!

画像8

しかし、絵はほとんどモノクロ、う~~~っすら色が乗ってる程度。
そして撮像管カメラの天敵「焼付き」が画面ど真ん中にドーン。(黒ずんでる部分です)
昔の撮像管カメラは太陽やライトなど高輝度なものにレンズを向けてはいけませんでした。
そんなの知ってるの、40歳以上でしょうね。
やってしまうと、写真のようにその部分に像が残ってしまうのです。軽度であればフラットな絵をしばらく撮影していればそのうち薄れてきたり、消えてくれるのですが、ガッツリ撮ってしまうとこうなって使い物にならなくなります。交換に100万かかります!みたいな世界。
そして、これは撮影中だけでなく、移動中もレンズの絞りが開いていれば、OFFであっても撮像管に光が届いて焼付き現象が起きるという困りもの。

なので昔はカメラは必ず絞りをクローズに。ついでにいうと、今でも同じですが、今はレーザー光や太陽線などによりCCDやMOS素子がだめになる可能性もありますので、基本的に使用しない時はカメラはレンズを「CLOSE」にするものです。同じくVFもレンズを使っていますので、VFに太陽光が入射すると、VFの内部の部品を焼いてしまいます。これは今でも起きますので、VFは必ず下に向ける!これができないカメラマンさんも多いです。多分教わっていないんです。レンズを介するVFは使う時意外は必ず下に向けましょう。車での移動中も盲点で、進行方向によっては後部座席で寝かしていたカメラのVFに窓から強い太陽光が入ってくる事もあります。VFのルーペの向きは注意してください。余談でした。

ま、これは仕方ない。
BVP-1というカメラは思い入れはありません。しかし、3と5を買った以上、一緒に出ているなら1も買おう!という悪い大人の考えによるものです!?

とまあ、期せずして古いカメラを揃えだしたら面白くなってきました。

「博物館ができますね」

そう言われました。たしかに!
でも、放送機材の博物館は色々あるようですので、私が人生の最後にやらねばならないとするならば、やはり、古い中継車のレストアでしょうね。
これでもし次に昭和の中継車を買い取る事があれば、これもまたモスボールしていつかレストアし、できるだけ当時モノの機材を積んで、コンポジットで撮像管でシブサンな感じの中継車を作っても面白いかも、とは思っております。クラウドファンディングでもしないと予算と場所と維持にお金がかかっちゃいますがね。

よりよいものに。

これには際限がありません。お金さえあれば、良いものは買えますし、需要があるのですからそちらに進むでしょう。
でも、人間の目を超えるようなシステムが本当に望まれているのか、私にはわかりません。16Kとか32Kとか。
軍事や医療ならまだしも、それが普及するとは思えません。
4Kですら必要とはされていないのかもしれない、そう思うことがあります。
YouTubeでは720Pでもやって行けていますし。
となれば、やはり、映像コンテンツにおいては画質より内容。機材もいかに安く済ませてリターンを多くするか?そうなっても仕方ないですよね。

ただ、カメラマンが担ぐカメラ。その特別感に「かっこいい」を感じてしまった少年の末路は、やはりこうなってしまうのでしょうか?
いいもの、面白いものを買い続けて行くのでしょうね。これからも。

あ。
そうはいっても場所がないので、あまり古いものは買い続けたりしませんよ?
ヤフオクにインチとか出ていますけど、置き場所ないですから。いよいよ。
それより今あるものを売らないと!
みなさ~ん、ぜひビビッドの中古機材も見ていってください!
倉庫を空かせる!がモットーですので、色々まとめてくれたり、引取にきてくれたりしたら、社長権限でかなりオマケしちゃうかもしれません!
こちらをご覧くださいませ~、と宣伝で終わるのです。

なお、TOP画像は水銀柱タイプのアワーメーターです。
昔はこれに電流を流し、通電時間を測っていました。それによりメンテナンスの時間を見ていたのですね。
これ、中古として販売する際に重要なのですが、それはまだテープというのが駆動部があるもので、テープ走行系、回転ヘッド、ローディング機構など、経時劣化があるものは定期交換しないと業務用として耐えられないから、これらの交換判断に使われていました。当然時間の経過したもの、メンテナンスのされていないものは査定が悪くなるのですが、悪い事を考える人はいるもので、TOP画像のようなタイプのアワーメーターは半田を取って逆向きに付けると時間が逆進(少なくなっていく)するので、途中からそれで時間を戻して、アワー指示値が少ない状態になってから売却する、という犯罪まがいのことが横行していたようです。
その後のデジタルアワーメーターもあることをすると簡単にゼロにできる事から、信頼できるかどうかは不明です。車のメーターは改ざんするととんでもない事になりますが、ビデオ機器のメーターはお咎めなし。そんな時代でした。(私はやっていませんよ!)

お気に召して頂けましたら、サポート頂けますと、やる気モリモリになります!よろしくお願い致します。