首を締める話

映像制作の門戸が広くなりました。
機材価格による参入障壁がなくなり、配信に関しては、映像制作のノウハウよりもネットの知識のほうが求められるのでは!?という世の中です。

そんな中ですが、「予備」を考えるあまり、自分の首を締める事になっていませんか?という提言です。

マルチカメラ収録・配信などの場合、必ずつきまとうのがスイッチングミスです。
人間だもの。
そうです。人間である以上、間違いは起きます。「2カメ!」と言いながら3カメのボタンを押す事も。「入った!」と言いつつ、あれ?抜けてた?逆だった!いつから?とか。
カメラマンさんも、次のアングル探そうとパッとカメラを振った瞬間にスイッチャーに切られてお互い「ああ~」という事も。

そんなミスをカバーする方法として、配信時はどうにもなりませんが、後でデータ納品やDVD納品するために全カメラを収録しておく、という手段が最近は当たり前になりつつあります。

配信でも4カメとか普通になっています。4台分の素材があり、スイッチングした素材があり、その他テロップ等のデータがあり、パワポや別の動画も素材であったり。
放送(配信)終了後に再編集するとしても、中々・・・手間ですよね?

昔の話をしても興味はないかもしれませんが、スイッチングは一発もの。
予備というのは、本線DIRTYの他にテロップの載らないCLEANを残すか、更に余裕を見ればセンター引きカメくらい残すか、というのが通説。

それ以上を残すのはかなりの有名どころのアーティストのライブくらいで、基本「大変にならないように」するための現場スイッチングなのに、そこまでの予算ではないのに「全素材」を残したがゆえに、エライ事になってもーた!では本末転倒です。

また、予備がある、あとで差し替えればいいか、という気の緩みは、本番時の緊張感を薄めて、さらにミスを誘発し、スタッフ間の「阿吽の呼吸」を醸成しにくくさせてしまいます。

「あの人なら、この時にこう撮ってくるだろうから、僕は次のカットとしてこれを準備しよう」とかそういう「読み」をするセンスが育たないと思います。

「どうせ、差し替えればいいんだから」

「僕が編集するんじゃないし」

それは雇い側からすると「なんだ下手だな」と思わせる事にもなり、結局誰の得にもならない。
仕事としてやるなら高みを目指して「色々と考えを巡らす」ということが大切だと思います。
相手のカメラマン、スイッチャーの行動パターンを勉強して先を読む、とか、そういうのの積み重ねが「チーム」であり、そんな完成されたチームがあれば、マルチカメラは最強と言えます。
相手のことを読み、信じ、行動で示す。
練度を上げるためには常に考えられる人でいないといけないと考えます。

で、マルチカメラでの全パラ収録ですが、素材が増えるは、素材があるとより良いものにしようとして深みにハマるわ、大変なのです。

きっと良心のある編集者であればあるほど「見合わないなぁ!」と思うでしょう。
良心的な編集をする人ほど、きっと「編集ってキライなんだよね!」って思っている事でしょう。

だから首を締めてるんです。
ATEM Mini Pro ISOとか、あんな小さな筐体で全パラができちゃうとかすごいですよね。
ゲーム用の小型収録機なんて、なんでそんな値段?という感じで、配信の方は何台も持っていらっしゃたり。

確かにリスクマネージメントとして予備を持つ事は大事ですが、必要以上に持つとほんと大変ですよ?と思うのです。

お気に召して頂けましたら、サポート頂けますと、やる気モリモリになります!よろしくお願い致します。