見出し画像

ビーズストラップ

世間は夏休み、ショッピングモールのフードコートで小学校高学年くらいの女の子3人組を見た。
机の上はシールやビーズ、キラキラしたもので溢れていて、みんなでスマホケースやクリアポーチを綺麗にデコっているようだった。


昔から、キラキラした女の子が苦手だった。
甘い匂いのする、ひらひらした女の子が。
ちょうど、さっき見たような女の子たち。

あの頃私が苦手だった子たちも、いつもキラキラしたものを持っていた。
立体的なシールの貼られた筆箱、自ら光を発しているのかと錯覚するほどに綺麗なストラップ。
当時の私は、キラキラしたものが好きではなかった。

今思えば、私には眩しすぎたのかもしれない。
陰キャとか陽キャとか、そういうことだったのかもしれない。

「陰キャ陽キャ君らは分類しないとどうにも落ち着かない」
                            SEKAI NO OWARI  「habit」

本当に、その通り。
陰キャだ、陽キャだ、そんな言葉が広まり始めたあの頃の私には、よく分からなかった。
定義も曖昧なあの言葉に、どれだけ踊らされただろう。
わたし陰キャだから〜とかいう中途半端な分類じゃなくて、本当に住む世界が分断されたのなら、どれだけ楽になれただろう。

だから、憧れの感情は無かった。
友達が多いことの良さはよく分からなかったし、なんだかんだ言って、私自身も、人付き合いはそれなりにできたから。

いや、心のどこかで羨ましいと思っていたのかもしれない。

当時の私が分からなかった、キラキラの魅力。
綺麗なものに対するときめき。
自分にはなかったもの。
欲しくなった。

100円ショップへ入り、手芸コーナーへ向かう。
そこにはキラキラがあって、手当り次第カゴに入れてみる。
何か作るとしたら、普段使いできるものがいい。
ストラップを作ることにした。
キラキラしたあの子が持ってたビーズのストラップ。
あの頃に戻れたような気がする。
キラキラを否定していたあの頃に。

家に帰ってひとつひとつ、ビーズを糸に通していく。どんな色にしよう、ここはこれかな、楽しい。
自分の手でキラキラをつくる。
思っていたより、想像していたより、ずっとずっと楽しかった。
なんだったのだろう。
もっと早くに気づきたかった。

今、私の手元にはふたつのビーズストラップがある。
ひとつは自分の、もうひとつは友達にあげてみようと思う。
どうだろう。喜んでくれるかな。
彼女ならきっと喜んでくれるだろう。

あの子たちも、こんな気持ちだったのだろうか。
キラキラしていたあの子たち。
大人になって、ようやく気づけた。
まだ手遅れではないと信じている。

今までのキラキラ、全部取り戻してやる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?