見出し画像

オーボエリードメイキング講座#3 消耗品、マシン類解説

ご覧いただきありがとうございます。第3回目になりました、リードメイキング講座です。本講座は、これが正解という話をするのではなく、実際に私が使用している物の使い方、考え方を紹介していき、さらにメリットに加えてデメリットになりうることも正直に書くことで、皆さんのリードメイキングの一助になっていただきたいという思いで書いております。

画像1

今回紹介するのは、ケーン、チューブ、糸、ワイヤー、ラッカー、ドレッシングテープといったリードの材料となるもの、そしてプレガウジングマシン、ガウジングマシン、シェーピングマシン、メーキングマシンを紹介します。

また、製作の一連の流れについて紹介した動画を作成しておりますので、こちらも合わせてご覧いただくとわかりやすいかと思います。

それでは解説に移ります。

1.ケーン

画像2

ケーンとはリードの材料である葦そのものの事です。私が使用しているのはアリヨード(alliaud)の径が9.5~10.5を使用しています。今までアリヨード以外を使ったことがありませんので、他のメーカーの事はわかりません。他のメーカーがわからないということはつまり、アリヨードの特徴もきちんと説明できません。よく言われている、やや固めだが、曲がったりする物や模様が多いという話は聞く、くらいです。他メーカーを試さない理由は、リード製作をはじめて間もない頃、一つのメーカーの材でさえ個体差があるのに、他のメーカーを試したところで何が良いのか悪いのか判断できるかどうかわからない。とりあえず決めて、それに合ったリードを作って慣れたら変えようと思っていたのですが、気づいたら他のメーカーを一度も使用せず今に至ります。

リードを作り始めた当時、偶然周りにアリヨードを使う方が多かったのでアリヨードで始めただけですので、今はもっと良い材が他にあるかもしれません。

径が9.5~10.5なのは、購入したガウジングマシンの径が10.0だからで、マシン購入当時そんなに気にしていなかったのですが、今考えると偶然好みの物を買ったなと思っております。径の話はガウジングマシンの項目でお話します。

材はキロ単位で購入し、到着後見た目上で軽く選別(極端に形がいびつだったり、模様が多すぎたり、表皮がしわしわなものを捨てます)し、残ったものをビニール袋にいれ、乾燥剤をいれ、3年程度押し入れの奥で寝かせます。自分で使うのも販売する物も、この3年以上乾燥させた材を使っております。乾燥させる理由ですが、材の個体差が少なくなり、固くなると感じています。

材に対する考え方として、職業奏者の場合、丸材1本から1つ材を取れれば御の字、最高の材を削って最高の音を作り出す、というのが正道であると思います。
一方自分の場合、リードメーカーという側面があるため、廃棄率を減らすため丸材からは基本3つ材を取り、そこそこの材を用いて、糸巻きと削りでなるべく良いリードを仕上げるという技術を会得しているように思います。これは別に職業奏者であれば、便利だけど必須ではない技術かもしれません。
しかしこの、そこそこの材から良いリードを作るという事に関しては、自信があります。なるべくその部分の技術を、今後わかりやすく記事にしていきたいと考えています。

2.チューブ

画像3

チューブは現在、売り物も自分用も匠チューブ46mm真円を使っています。一般的なチューブと比べてやや割高ですが、その価値はあると思っています。

リード製作を始めた当初はグルツィオD12を、その後にactus(現nonaka)を、そして現在匠チューブでのみ作っています。チューブは材と違って、あれこれ試してみて比較は自分の中でしてきましたが、匠チューブ真円が一番しっくりきました。

匠チューブの良さはいくつかありますが、特に良い所は、広い場所を想定して作ってあるチューブのため、普段狭いところでしか練習できない自分にとってその部分をサポートしてくれるのが非常にありがたいということと、売り物用として考えた場合、真円という形状は楕円よりハリをキープしやすくなるため、リードの寿命の長さに影響するということです。
他のメリットとしては、形状のおかげで息抜けが良い事、糸巻きの際に楕円だと舟形と楕円の形を合わせないといけないのを、真円なのでどの向きでもぴったり大正解であるという事、また恐らく真円という形状のおかげなのか、チューブの個体差がほぼ無いと言っていいくらい一定であることです。

良くない点は糸巻きの際に材が割れない工夫が楕円よりも必要であることと、音列が楕円のリードと違うこと(低音域や真ん中のCがやや低くなります)、開きが強く出すぎる傾向がある点でしょうか。

開きが強く出る特性のチューブのため、基本的に長めの全長(46mmチューブなら72mm)で作るのが匠チューブ本来の使い方らしいです。しかし私は低音域が下がる傾向(マリゴではない楽器なら、そんなに気にならない可能性はあります)を克服するためどうしても71mmで作りたく、色々試行錯誤し、今に至っております。もし皆さんが匠チューブ真円でリードを作るなら全長は長めで作るのをおすすめしますが、71mmで作る方法に関しては後の記事で解説できればと思います。

3.糸

画像4

糸は一般的にナイロン又はシルクで巻くのが多いかと思います。私も両方試しましたが、現在使っているのは大戸糸店製のビニモ8番手で、材質はポリエステルです。

ナイロンの特徴はよく伸びる事で、引っ張っても千切れる心配がほとんど無いため力をいれて巻きやすく、巻いた後はゴムのように、チューブと材を締め付けて固定してくれますが、問題はその伸縮性ゆえに、振動を吸い取ってしまう要素があることです。
そのためシルクがよくおすすめされますが、シルクは伸縮性が無いため巻きにくく、また値段も高価だったりします。

ポリエステルはシルクとナイロンの中間のような糸で、ほんのわずかに伸びますのでシルクのような巻きにくさはありません。ただ、8番手は細いので巻く回数が多くなるのが大変なのと、塗料毎に糸の硬さが違うため、気分で色を変えるということがやりにくいです。
しかしながら、ナイロンは選びたくないけど、シルクは巻きにくい…という方は、ポリエステルを一度試してみるのをおすすめします。

ビニモは番手が低くなるほど太い糸になるようですが、8番手以外は試したことがありません。8番でやや細いので他の候補としては5番手になるかと思いますが、いつか試してみたいと思っています。

4.ワイヤー

画像5

ワイヤーは売り物のノーマルリードには真鍮製0.35mm、自分用にはステンレス製0.25mmを使っています。ステンレスワイヤーは学生時代に師匠から購入したもので、恐らくもう手に入りません。無くなりそうになったら次を考えます。

ワイヤーを一番安く買える方法は、問屋でキロ単位で買えますので、それが一番コスパが良いです。ただ、一生使いきれないくらいにはなると思います。

ワイヤーの使い道は、糸巻きの際、焼き付けの直前に舟形に取り付けて材に丸みを持たせるために使うということと、完成リードに取り付けて開きを固定する際に使います。

焼き付けの方法に関しては糸巻きの解説の時に説明します。完成リードに取り付ける場合、下になればなるほど開きを出し、上になれば開きを潰し振動を止めます。ワイヤーの太さが太くなるほど効果は強力になり、1重巻きか2重巻きかで効果も変わります。ワイヤーの位置はリードの状態によって最適な場所が変わります。古くなったリードの場合、ワイヤーを下にズラし、そこでラジオペンチで絞ることである程度リードが復活することがあります。

材質の違いですが、真鍮製は柔らかく、加工しやすい分振動を止める影響があります。ステンレス製はかなり上目に巻いて使っていますが、開きを抑える目的より、音色にカンとした跳ね返りを含ませるために使用する部分が大きいです。

ワイヤーを上目に巻いて使う場合、唇に刺さってケガをする可能性がありますので、試す場合はお気を付けください。

5.ラッカー

画像6

主に糸を止めるために塗るのと、後述するドレッシングテープの固定で使います。私が使っているのはワシンのクリヤーラッカーです。

これをセメダインのビンに詰め替えて、使っています。

ポリエステルの糸は息漏れする場合があるので、糸をとめる以外に糸の部分からの息漏れ防止にまんべんなく塗っています。

また、ドレッシングテープは使っているとだんだん上の部分がめくれてベタベタしてきますので、上の部分にのみラッカーをチョンと乗せ、めくれを防いでいます。ドレッシングテープの巻き終わり部分が糸の上にくるように巻き、それの剥がれ防止にも塗ります。

ナイロンで糸を巻いていた時期はラッカーは塗らなかったのですが、ポリエステルにかえてからは息漏れが気になったので、糸の上にまんべんなく塗っています。

ラッカーを使用する際は風通しをよくした場所で行い、作業後は必ず換気をしてください。

6.ドレッシングテープ

画像7

通常、息漏れ防止にはシールテープかフィッシュスキンを使う方が多いと思います。私の場合、自分用、売り物用共にドレッシングテープを使って巻いています。

製品ページ貼りつけて気が付きましたが、生産終了なんですね…。私はまだしばらく手持ちがありますが、恐らく次はエアウォールふわりを買うかと思われます。長さは何でもいいと思いますが、リードに巻く場合は50mm幅のサイズを買い、8~9mm幅にハサミで切って使用しています。(1cm幅に線が引いてあるので、それを目安にやや短い幅で切っています)

ホームセンターで売っているようなシールテープ(水道管補修用テープ)は安価で扱いやすいのが魅力ですが、厚みがあり振動をとめるのがネックです。また、水分を通さず、中がムレるような状況になります。
一方、フィッシュスキンは非常に薄く、振動をとめることもほぼありませんし、水分を通過させますので、乾燥が早くなります。しかしフィッシュスキンの問題点は、巻きにくいということと、値段が高価なのがネックでした。

その点、ドレッシングテープはリード1本あたり3円以下で、薄いため振動をほとんど止めず、慣れたらパッパッと巻けて、ついでに水分を通します。

他の候補としては水分を通す安価なラップがkgeから販売されていたりしますので、使ったことはないのですが機会があれば試してみたいです。

ドレッシングテープの問題点は、ラッカーの項目でも触れましたが、巻いてそのまま使っているとだんだんまくれてきてベタベタになります。それを防ぐために、上の部分にラッカーを薄く塗って回避してます。

画像13

(この辺の材とドレッシングテープの↑↑↑境目にラッカーを塗ってます)

以上が消耗品類解説となります。以降はマシン類の解説となります。

7.プレガウジングマシン

画像8

プレガウジングマシンはリーズンスタッフ製の物を使用しています。プレガウジャーで材のサイドを取る作業は、刃が出ている方に力を込めて使うため、常々危険だと思っていましたが、これを見つけてすぐ購入しました。ついでにガウジングの粗削りもしてくれます。

仕組みは単純で、ハンドルで材を押し出し、その先に平刃と丸刃があり、材の左右の余計な部分と、材の厚みを同時に取ってくれます。

ガウジングの粗削りをしてくれるということはガウジングマシンの刃の消耗を減らしてくれます。私はガウジングが0.53~0.54でリードを作っていますので、それより厚いところでなるべくギリギリであれば刃の消耗のために非常に有効になります。

リーズンスタッフのプレガウジングマシンは、丸刃を固定する部分と台座の間2か所に、ワッシャーが数個挟まっていますので、これを減らすことでさらに薄いところまでプレガウジングをかけることが可能です。ただ、ガウジングマシンと違い、精密さは無いのであまり攻めすぎると薄すぎる材が出ますので、ほどほどが良いかと思います。

また、プレガウジングをかけた後の材はジップロックコンテナにいれてしばらく寝かします。材は基本的に薄くしてから放置すると乾燥して固くなる傾向がありますが、ガウジングをしたり舟型にしてから巻かずに放置すると、固くなる影響が強くでます。
プレガウジングをかけた材をしばらく寝かし、乾燥させて引き締めた後、ガウジング、シェーピング、糸巻きまで一気にやります。いわゆるカマボコや舟型の状態で放置せず、糸巻き後のブッペの状態で、またここで数日寝かして乾燥させ、ようやく削りに入ります。

8.ガウジングマシン

画像9

ミヒェルのガウジングマシンを使用しています。径は10.0で、普通~やや細目な部類です。径には色々種類がありますが、選ぶ基準としては、材の径が太ければ太いほど密度が低く柔らかい傾向になること、また径が太いと表皮の形状が平らに近くなるため、開きが落ち着いたリードになってくれます。

また、刃も種類があります。刃の径が大きければサイドが薄くなり、刃の径が小さければサイドが残ります。

基本的に力を入れないように動作させる機械なので、本来は左右に動作させるように使うらしいですが、数を作ると腕が痛くなるので、力で押し付けないように注意しながら、縦の動作で使用しています。

この段階で自分の場合、厚さを0.53~0.54にしますが、これは一般的にはやや薄めの設定だと思われます。

厚さを考える時に必要なのは、材が柔らかい場合は材に厚みが必要になるということと、材が厚い場合リードの振動体は、材の中央に近い部分が使われ柔らかくなり、反対に材が薄い場合はリードの振動体は表皮に近いとこになるので固くなります。

材が柔らかいのにガウジングを薄くすると腰砕けになりますし、反対に材が固いのにガウジングを厚くすると、いくら削っても鳴らず、作るのが大変です。
また、ガウジングを厚めにしすぎると振動体が柔らかいのに削ってない部分がハリがのこりすぎて、振動が発生するもののうまく伝わらない、バランスが悪いリードになりやすいです。
そのため材が薄いほどスクレープは短くなり、厚いとスクレープは長くなる傾向になります。

以上を踏まえてガウジングの厚さは設定するとよろしいかと思います。

9.シェーピングマシン

画像10

ヘルトナーゲルのシェーピングマシンを使っています。ティップの型は、売り物のノーマルは67番、自分用は25番です。
25番は有名な幅広のティップです。多くのプロ奏者が愛用しています。67番は私以外で使っている人はあまり聞いたことがありませんが、匠チューブでのリード製作ではこれがしっくり来ています。

39番はヘルトナーゲルで標準的な型の一つになりますが、39番で匠チューブで作ると根本がかなりほっそりしてしまい、やや窮屈な印象がありました。そこで寸法表を見ながら、39番に似ているが、根本がふっくらしている型を探したところ67番を見つけ、注文して今に至ります。

25番は普段の自分のリードの設定ですが、こちらはややコントロールが難しいため、それより幅が狭く扱いやすい67番をノーマルリードとして販売しています。

10.メーキングマシン

メーキングマシンはリーガーとkgeの2つを使用しています。

画像11

リーガーは、ざっくりと大まかな形を作ってくれるという点で非常に素晴らしいです。その後に残っている部分をkgeと手削りで落とせば仕上がります。

リーガーは単純な機械ですが、リードをセットする場所で先端の薄い部分の長さを変えることができる(線を越えると長くなり、線の手前だと短くなる)ということと、おさえ(クランプとも)を使えば厚めに残り、使わないで使うと多めに削れることをわかっていると細かい調整が利きます。

リーガーは平刃なので研ぎやすく、緻密に削るのは無理でも、形をざっくりと作り、そしてスピーディーに仕上げてくれるので、リードをたくさん作る上で非常に重宝しています。

画像12

kgeはリーガーの後に先端と両肩を削ってもらいます。リーガーで先端を薄く作ろうとすると、胴体部分が削れ過ぎてしまうので、胴体がきちんと残る設定にしておくのですが、当然それだと先端が残ります。その先端をkgeに緻密に仕上げてもらって作業を楽にしています。
また、kgeは刃の場所とローラーと軸の3点が離れているために、力を加えるとわずかにたわみます。多く削りたいところは押し付けて動かすことで、手削りのように微妙な調整ができます。慣れが必要ですが、この使い方ができるのはkgeだけです。

kgeを褒めちぎってますが、kgeの売りともいえる、スプリングを調整して厚さを自由に変えて削る機能は、針金を取って解除してます。胴体の形はリーガーを使いたいため、先端と両肩専用機械になっています。胴体は緻密さより、リーガーでざっくりと平刃で作ってもらった方が好みです。

最後に

今回は消耗品類やマシンについて紹介させていただきました。参考になりましたら幸いです。最初にも書きましたが、正解がこれであるという話ではなく、あくまでもたくさんある選択肢の中で、自分の場合こうしているという話です。

例えば、硬度計などを使う方も多いかと思いますが、私も使っていた時期はありましたが、現在は一切使用しておりません。

リードメーキングに関し、私の考えとしては「音楽が良ければ何でもよい」というのが持論です。私の方法が合わない方もいるでしょう。いろんな方のいろんな方法を参考に、自分のやり方を見つけるのがリードメイキングだと思います。
ただし、あくまでも「音楽が良ければ」であり、「自分が良ければ」にならないように心に留めリードを製作しています。私は特に人に指導したり販売する立場であるため、そこを間違えないように作っているつもりです。

以上でメーキング講座第3回を終わります。最後までご覧いただきありがとうございました。


よろしければサポートをお願い致します。今後の活動費に使わせていただきます。