細胞内のアナログ・デジタル変換機構

ケガをしてもいつの間にかた治っています。それは細胞が「皮膚が傷ついた」という情報を受け取って、細胞増殖するという適切な応答をしているからです。

この時に細胞は「細胞分裂するかしないか」という判断を行っています。ただし、半分だけ細胞分裂する、とかいうことはできませんので、細胞の反応は自分は分裂して傷をふさぐか、分裂せずにそのまま待機するか、本質的には0か1かのデジタルな現象です。

分裂するか待機するかは1個の細胞の中に大量に存在しているERKと呼ばれるタンパク質の直接民主制による多数決で決まります。従って、細胞分裂に賛成するERKの数はケースバイケースでアナログ的に変化します。ということは、細胞の内部ではERKによる投票数というアナログな反応を細胞増殖するかしないかというデジタルに変換する、A/D変換が行われていることを意味しています。

ERKは普段は細胞質にいますが、細胞分裂する側に投票すると「リン酸化ERK」に変化し、核へ移動します。理化学研究所などの共同研究グループが、核への移動に閾値があることがアナログをデジタルに変換するメカニズムであることを明らかにしました。細胞質から核へ移動する門の役目をする「核膜孔複合体」の開閉が閾値を持っており、アナログ的に進行するERKの投票(リン酸化)があるレベルに達するとゲートが開いてERKが一気に移動し、それがデジタル的な細胞の応答を生み出していたのです。

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