言葉で伝えることの難しさ
ドラマ「silent」の7話。紬ちゃんというキャラクターになかなか感情移入できないでいた。同時に紬ちゃんの気持ちを知りたい!と思いました。
「紬ちゃんに共感できなかった」というのは作品への批判ではないです。口を酸っぱくして言いたい…!視聴後に「あれってこうだったのかな」っていろいろ気になって何度も何度も考えちゃいます。それってもうこの作品の世界観に引き込まれている証拠なんです。
7話はとにかく「言葉で伝えることの難しさ」を痛感しました。
冒頭で、追いかけてきた想くんに「奈々となに話したの?、奈々泣いてて」と聞かれるも上手く伝えることができない紬ちゃん。
「何て言ったら良いんだろう」
どう伝えていいか分からなくなっているうちに「青羽には関係ないから、巻き込んでごめん」と話を切り上げられてしまう。
さらにファミレスのシーンで、想くんが会社の愚痴を手話で話してくれるが、"理解してあげれなかった"紬ちゃん。ここでも「言葉が伝わらない現象」が起きる。
高校時代、ファミレスで怒られるまで話していたことを思い出し、また一緒に話せたら良いな。という少しの願望と「手話を全て理解してあげれないもどかしさ」から「声で喋らないのなんで?」と伝えてしまう。決して想くんを傷つけたい訳ではなく「想くんをもっと理解したい」という思いが根本にあるのに、選んだ言葉が意図せずに相手を傷つけるときがある。
「少ないっているってことだもんね、いるよね、いるのにね」「やっと目の前に居てくれるようになったのに」
時に「欲」や「願望」や「思い込み」で発言しちゃうときがある。ただの自己満足でしかないときとか、相手がどうしたいかじゃなくて自分がどうしたいかで発言してる。そのたった一言で関係性がガラリと変わったりする。
どんなに後悔しても訂正したくても一度言ってしまった言葉は消えない。
私も自分の発言でとても後悔したことがあります。言わないという選択肢が頭に浮かんだのになぜ言ってしまったのか、悔しくて何度も泣きました。大切なものを失うのは一瞬です。
このセリフを戒めのためにも忘れたくなくて、頭の中に刻み込みました。
紬ちゃんがすごいのは、想くんに「この前、傷つけるようなこと言ってごめんね」みたいな罪悪感の押し付けをしないとこ…!紬ちゃんはこのあと想くんに「奈々さんの連絡先教えて」「奈々さんてどんな人?」と自分が抱えた罪悪感を相手にどうにかしてもらうではなく、自分なりの方法で向き合うという手段を取っています。
奈々さんに直撃していく紬ちゃんが正直、最初はマウント取り女のように感じてしまった。
でも、あれこそ紬ちゃんなりの向き合い方できっと、このまま紬ちゃんの中で奈々さんという存在を見てみぬフリして向き合わずに居たら、また想くんとの間に「伝えられない、伝わらない」現象が生まれてしまう。
結果、奈々さんも紬ともう一度向き合うことができた。「プレゼントを使いまわされた気分」という思いを紬に持ち続けるよりも「お裾分けした気分」と思えることが奈々さんにとって気持ちが楽になるはず。
自分が紬にとって嫌な奴だったという印象で終わるより、長い目で見て「あの時、ああいう風に思えて良かった」ときっと奈々さんは思えるはず。
「どうやったら伝わるんだろう」
聴者、ろう者関係なく「言葉で伝えることの難しさ」は共通の課題で「ありがとう」って100パーセント善意で伝えても、「嫌味」と捉えられることもあるし、「褒め言葉」が「お世辞」に受け取られたり、「優しさ」がお節介になることもある。上手く伝えられなくて誤解されたり、自分が発した言葉が違うように解釈されて、理解されて、切り取られて、悪意に変わって。どうしようもなく悔しい、悲しい。
でも、だからこそ「思いが真っ直ぐ伝わった」時は本当に本当にうれしい。本当に難しいことだから。
それがラストのハグ。
「あれ、伝わってる?伝わった?」紬の思いが、やっと真っ直ぐ伝わった瞬間、やっと。
紬ちゃんに視点を置き見返した二回目、大号泣しました。
何度失敗しても、不本意に伝わったとしても、
「伝わった」と思える瞬間があるなら「言葉を届けること」を諦めたくない。そんな風に思わせてくれる7話でした。
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