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化学物質の自律的管理のお勉強

こんにちは。株式会社iCAREの柴田(@sankaku)です。
令和4年5月31日に労働安全衛生規則等の一部改正として、化学物質による労働災害防止のための新たな規制の公布がありましたね。
わたしは新卒で健診機関に勤務し、第1種衛生管理者も保有する中でざっくり特殊健診まわりについて理解したつもりでしたが、今回の改正の内容がサッパリ分かりませんでした。
産業保健のプロ集団の一員としてこれではいけないと思い、勉強したので、それをまとめてみました。
特殊健診や法改正周りをざっくり理解したい誰かの参考になれば幸いです。

有害危険業務管理のざっくり振り返り

なんで有害業務を管理しないといけないの?

わたしの出身は三重県なので「四日市ぜんそく」について小学生の頃習った記憶がありますが、「そんな公害みたいな話って、昔のことでしょ?」と思っていました。

胆管がん問題、被害者全員と和解 大阪の印刷会社
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG2203G_S4A021C1CC1000/

前職の上司が大阪の印刷関連に勤務していた経歴を持ち、上記の胆管がん問題があった事例が当時業界で話題になっていたと話していたことがありました。
この話を聞いて、現代でも起こりうる意外と身近な問題なんだと思ったことがあります。

法令で定められた有害危険業務

労働基準法施行規則第18条より、下記の業務があります。

  1. 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務

  2. 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務

  3. ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務

  4. 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務

  5. 異常気圧下における業務

  6. 削岩機、鋲打機等の使用によって身体に著しい振動を与える業務

  7. 重量物の取扱い等重激なる業務

  8. ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務

  9. 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二酸化炭素、青酸、ベンゼン、アニリン、その他これに準ずる有害物の粉じん、蒸気又はガスを発散する場所における業務

  10. 前各号のほか、厚生労働大臣の指定する業務*

ざっくりいうと有害業務は「アツい」「寒い」「放射線」「粉塵」「気圧」「振動」「重たい」「化学物質」に分類されます。
今回の法改正はこの中でも「化学物質」の部分が取り上げられているわけです。

全くの余談ですが、健診機関にいたとき海洋調査の機関を担当することになり、とても珍しく「気圧」の健診を請け負ったことがあります。
今でも水族館にいくと潜水している飼育員さんを見て「異常気圧の健診やるのかな?」と考えてしまいます。

労働衛生の5管理

健診機関にいた身からすると、「有害危険業務=特殊健診」という方程式が勝手に頭の中に作られてしまいます。
でも、特殊健診というのは5管理のうちの1つの構成要素でしかなく、本来はもっと広いスコープで危険管理をすべきなのです。

労働衛生の3管理とは、作業環境管理、作業管理及び健康管理の3管理を指します。これは、労働衛生管理の基本となるもので、これに総括管理と労働衛生教育を加え、5管理とすることもあります。

職場のあんぜんサイト

ヒエラルキーコントロール

宇都宮で開催された第96回日本産業衛生学会では、今回の法改正周りのシンポジウムをウロウロしていました。
その中で「ヒエラルキーコントロール」について引用がありました。
日頃有害危険業務の管理をしている方からすると常識なんでしょうが、お恥ずかしながら今回これを初めて知りました

JOSHRC より

そもそも有害物質を使わないことが一番よく、保護具は一番効果の低い対策になるわけです。
有害業務管理にも優先順位があるんですね。

有害危険業務の5管理シバタ的アレンジ

5管理の考え方とヒエルキーコントロールの考え方をMIXして独自の考え方を生み出してみました。
有害危険業務において、総括管理や安全衛生教育が土台として存在し、その上で効果的な管理は作業環境管理→作業管理→健康管理となるのではないかとまとめてみました。

ここでも全くの余談なのですが、私は管理栄養士です。
大学生のころ給食実習で小学校の厨房に入らせてもらったことがあります。
実習を担当してくださった管理栄養士/栄養教諭の先生が児童想いでとっても素敵な方だったのを覚えています。
厨房に入って、パートの調理師さんがわたしたち実習生に「マスクは鼻までして、帽子は耳も隠すのよ。そうしないと黄色ブドウ球菌が混入して食中毒のリスクになるから」と教えてくださいました。
今思うと、この先生が厨房の調理師さんへ衛生教育を徹底していたからこそ、調理師さんから実習生に対してもきちんと注意してくれたんだと思います。
有害危険業務においても、きっとこんな感じで責任者による管理と教育が徹底されていると、安全を保つ文化が醸成されるんだろうなあと思います。

改正内容のざっくりまとめ

これからいよいよ本題の法令改正についてまとめていきます。

今までとこれから

これまでは国が化学物質ごとに管理方法を示してくれていました。

https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001083280.pdf


しかし…………

化学物質増えすぎ🥺国で管理できないから会社ごとで管理ヨロ🫶

ということで、事業者主体の管理が方向づけられました。

https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001083280.pdf

今回のテーマを深堀るにあたり、実務家のための労働安全衛生サイト「化学物質の自律的管理総合サイト」 を読み勉強しましたが、この中に書かれている「法令対策」ではなく、「労働災害防止対策」へシフトという言葉はとてもしっくりきました。
法律守ればいいや〜ではなく、従業員の健康を守るにはどうしたらいいのか?を考えさせる仕組みにしていきたいんだと思います。

改正内容まとめ

ここからは改正内容を上述のシバタ的5管理に分類しながらまとめていきます。
分かりやすさを優先し、法改正の年度や正確さは考慮していません。
正確には厚労省のサイト をご参照ください。

総括管理


労働衛生教育


作業環境管理


作業管理


健康管理


実際問題どうなんだろうか

ざっと改正内容についてみてみて、2点現場で困りそうだなあと思うことがありました。

①担当者への負荷

リスクアセスメントは、塗装作業ひとつとっても、塗料成分・有害性の程度・換気風量は?気流方向は?密閉空間か屋内か?刷毛塗りかスプレーか?発火爆発の危険性は?などさまざまな検討が必要です。
検討事項と変数が多すぎである。
しかも労災があれば責任が問われかねないという重要ポジションでもある。
学会では、ENEOSのオキュペイショナルハイジニスト(国家資格ベースの激ムズ認定資格)の方が発表しておられたが、そういった専門性のある人が増えないとかなりキツイのではと思いました。

②関係者の理解が必要

今回の法改正は安全衛生担当者や産業保健部門は注目している話題だと思います。
だが、それ以外は全く知らないはず。(だってわたしでさえ理解に苦労しているんだもの)
現場では、関係者へ今回の改正の背景や対応すべきことなどを丁寧に説明してくことが求めれらるのだと思います。

おわり

今回の内容は社内のランチ勉強会で発表しています。
ゆる〜く個人的にまとめあげたことでも、興味を持って参加してくれた人がいることはとてもありがたいです。
「とても意味のある会だった」と言ってもらえたこともよかったです。
またなにかまとめて勉強会をするのもアリだなと思っています。

最後に、我らがらびさん&ももさんが作った素敵スライドを載せてiCAREの宣伝をしておきます。


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