「万引き家族」を観てきた。※ネタバレ配慮

話題の「万引き家族」を観たんだけど、リリーフランキーが“ダメだけどいいお父さん”を演じる定型がもう「そして父になる」すぎて冒頭からズルいだろそれと笑ってしまった。あまりにもハマりすぎていて言及の余地さえない。ので、批評家は安藤サクラの熱演を絶賛すると思う。出世作「100円の恋」で見せた“旬を過ぎた女の生活に疲れた感じ”はここでも健在で、本作の舞台装置である現代の貧困に艶かしいリアリズムと肉感を与えているのだった。樹木希林が演じる祖母も、ババアの記号として文句のつけどころがない安定感で、万引き家族の成功はたぶん「このキャスティングしか思い浮かばない脚本を見事にそのまま実現できた」時点で約束されていた感じもする。次にどんなシーンを見せられるのか、鉄板の安心感と信頼しかない。
やや画面に驚きがあったのは助演の万引き少年で、これがまたところどころ息を飲むほど美しい。男の俺が見てもエロいと思った。「サマーウォーズ」のカズマくん?に萌えていたようなショタ属性のババアからは当分マークされそうな素晴らしい逸材である。加齢による顔肉がいよいよ隠しがたくなってきた池脇千鶴の配役も気が利いていて、本作と似たような貧困を演じた名作「そこのみにて光輝く」とのコントラストに驚いたひとも多かったのではないか。
繰り返すけれど、本作の成功の8割はキャスティングにありそう。ラストはやや消化不良な気もしたし、少年の目を通して描く貧困と罪悪感の相克は上手かったけれど、必ずしも脚本が飛び抜けて優れているわけでもなかった。それはこの物語が小説という手法を選んだ場合を想像すると分かりやすい。群像劇としては個人個人のエピソードが説明不足なんだ。けれども、これだけの名優を揃えて、是枝監督らしい綿密な取材とリアリズムを背景に家族を題材にした美しい画が撮れれば、そりゃ傑作にもなるよな、と。パルムドールに恥じない傑作であることは間違いないんだけど、映画としての驚きはやや少なかった。

CMのあと、さらに驚愕の展開が!!