広告界隈とWebライター界隈が大人げない喧嘩をしているのが面白い

発端は「ネイティブ広告ハンドブック2017」が分かりにくいとの声が一部のWebライター界隈から上がったことに対して、どこかの広告界隈の重鎮サマとそのお仲間たちが「プッww」してしまったことなんだけど、これがあちこちに飛び火して最終的にはオモコロの有名人が激おこエントリを投下して話題が浮上したもの。

参考:http://yoppymodel.hatenablog.com/entry/2016/11/10/111014

まず、そもそもの話なんだけど、「ネイティブ広告ハンドブック2017」は、いわゆる広告業界の天下り団体が作った“オナニー文書”の類で、広告業界の人間が読めば「あーそうだよね」という話を論文調の語り口で書いてあるだけのもの。タテマエを別にすれば身内の読者しか想定しておらず、少なくとも業務の座右にできるような実務的ハンドブックではない。リーダビリティが低いのは当然なんだよ。読みにくいと文句を垂れるのも筋違いなら、わざわざライターの心がけを持ち出して「読み手のリテラシーに丸投げするのは違うと思うんです!」と憤るような話でもない。業界向けの同人誌だと思ってもらえばいい。

ではなぜWebライターが「ネイティブ広告ハンドブック2017」などを手にとるのか、っていう話なんだけど、いまやWebライターの主なメシの種は、ネームバリューの順に、適当な題目でセミナーを主催するか、アフィブログを運営するか、Webメディアにタイアップ記事を書くのが主流だから。その手引きを期待してワクワク紐解いた文書があの有様では文句のひとつも言いたくなるのは分かるんだけど、どうか安心してほしい。まわりの10人に聞いても「ネイティブ広告ハンドブック」などは誰も知らないし、それがどうしても必要になるシーンや業務もすぐには思い浮かばない。

さっさと結論を書いてしまうと、業界同人誌への些細なコメントが大きな波紋を呼んだのは、実は広告業界とWebライター界隈には潜在的な対立構造があるからだと思う。簡単にいうとそれは縄張り意識みたいなもので、Web広告の既得権益を守りたい(と思われている)広告業界と、Web周りの広告でメシを食いたいWebライター界隈が水面下で対立している感じを想像してもらうと分かりやすい。

かくして広告界隈とWebライター界隈の乱闘が始まるわけなんだけど、詳しくは冒頭に紹介したリンクを読んでもらうとして、これが両陣営とも実に大人げない有様で、もう圧倒的な読み応えしかなかった。

読みどころはメディアの定義に対する両者のやりとりで、

「は?Webライター風情がなに広告業界のアレコレに物言いくれてんの?」

とは言ってないけど、

のっけからマクルーハンで殴る。数年前に流行った教養で上から殴る。

「テレビ雑誌新聞ラジオのビジネスモデルの違いは理解されてますか?」

とても一言では答えられない質問で殴る殴る。

「UGCとCGMの違いは?」

業界用語のクイズでさらに殴る。

相手の質問に質問で返して、まず先に3発は殴っておく。

実に業界らしいエグい手口で感心してしまったんだけど、

ここまでされたらさすがにオモコロの有名人サマも激おこプンプンですよ。

「貴方達がこれまでにやってきたのは蹴鞠だ。選ばれた貴族が良くわからない言葉と良くわからないルールで良くわからない試合をしてきた。今まではそれでよかったのかもしれないけど、デジタルはそうはいかない」

さすが電通サマのお勉強会で大口上を打つだけあって、

Webライターの必殺技「読者を味方にした自分のブログで叩く」で応酬です。

なんつーか、尻馬に乗ってdis入れたやつも全員殺す勢いで書かれた渾身のエントリでございました。

とはいえ、さすが広告業界の重鎮サマの言葉はなるほど明晰で、長いから引用は割愛するけれど、メディアの定義についての説明には深い思慮があった。

この説明を受けてなお、当初の主張「相手がわからないという前提に立とうよ」を繰り返すのは悪手と言わねばならず、自分が言いだした“相手が分からない前提”でぐうの音も出ない説明をされてしまったあとでは立つ瀬もない。

結局のところWebライター界隈のおともだちが言いたいのは、あるいは感じていることは、

■ギョーカイの人がギョーカイの言葉でギョーカイのルールを作ってる上に、

「俺たちはギョーカイ人なんだぞ!」っていう選民意識がめちゃくちゃ強い。

■根っこの部分の問題はこういう、ギョーカイの偉い人たちの傲慢さにあるんと思うんです。

シンプルに「ギョーカイ」への反感だと思うんだよね。俺もまったく同感だ。わざわざカタカナで書かれるような「ギョーカイ」などろくなものではない。

けれども、「ギョーカイ」の傲慢を言うひとがさりげなく電通サマの勉強会でキメたらしい口上を持ち出すのはセコイんじゃないの、とも思うわけで、、、やり口がエグい「ギョーカイ」だけが傲慢なんじゃなくて、Webライターも「ギョーカイ」に対して卑屈なんじゃないの?と思った次第。

CMのあと、さらに驚愕の展開が!!