12,670人のための“薬物”の話
最初に前置きする。俺は違法薬物の使用を推奨するものでもなければ、その解禁を主張するものでもない。
そのうえで結論から書くと、
一般に流布されている「違法薬物=廃人」という認識は“一般向けに話をわかりやすくした嘘”であり、違法性をべつにすれば“上手く付き合う人”もいるだろうね、という話なんだ。
「法律に抵触するから処罰される」というだけ。
おかげさまでこのツイートにはたくさんの“ファンレター”が届いた。なにやら12000人ものひとが話題にしてくれたらしい。その3割くらいが薬事犯や薬物の使用を肯定していると誤読したもので、「薬物=悪」という短絡的な発想と誤読には頭が痛くなった。これでは薬事犯かクソリプのひとか、どちらが薬をキメているのか分からない。ちなみに目視で200以上はあったクソリプは概ね3種類に大別できた。
クソリプA「犯罪は犯罪!!犯罪の時点で上手く付き合えてないだろ!!」
⇒ 犯罪であることは否定していないし、
違法な薬物使用を称揚するツイートでもない。
わざわざ二重引用符で
“違法薬物と上手く付き合ってきたひと”と、
特別な読み方を要する記述である旨、
注意喚起もしている。
クソリプB「10年もやめられなかったのだから中毒者!!上手く付き合えたとは何事か!!」
⇒ 10年も使い続けられたことを
“上手く付き合ってきた人”と言っている。
というか、やめる気もなかったから
10年も使い続けられたと理解すべき。
クソリプC「薬物は廃人!!薬物するのは悪いやつ!!廃人は薬物!!悪人は薬物!!廃人!!廃人!!廃人!!廃人!!ハイジの嘘つき!!※大意」
⇒ まずおちつけよ。。。
以下の文章は主に「クソリプCタイプ」のひとに向けて書く。繰り返すけれど、これは違法な薬物の使用を推奨する趣旨ではないし、単なる雑学であり、個人的な“解釈“だから誤りもあるかも。
「ほんとうに薬物は廃人になるのか」という話。
たとえば、大麻(に含有されるTHCとCBDなどのカンナビノイド)やLSD(リゼルグ酸ジエチルアミド)にはアルコールやタバコほどの害や中毒性はない──と言われている。これはなにやら疫学的な検証も進んできているらしいし、アメリカで医療用大麻のみならず嗜好用の大麻が解禁されつつある現状から鑑みても、なんとなく察しがつく話だと思う。ちなみにLSDに関しても重度のアルコール中毒者への治療用途が研究されていたりする。
では、他の薬物はどうなのか。
まず話題のMDMA、これはかつて「エクスタシー」という回春剤として密かに出回っていたものが1986年に法規制されたものだ。どういうものかというと、覚醒剤(メタンフェタミン)の化学的近似物である。医療用途もあるらしいんだけど、覚醒剤の近似物であり、取り扱いには免許を要する。濫用によって中毒者が続出したため社会問題化して規制された経緯。規制は妥当だと思うけど、各種向精神薬のように処方を認めるのはアリかも。
次にコカイン。
シャーロックホームズも「知性の妙薬」として愛用していた歴史と伝統ある麻薬である。スニッフィングのような方法で粘膜から吸収する。ほかの薬物に比べると効き目が短い。精神依存は強い一方、身体依存はそこまで強くないとも言われ、アメリカあたりの金持ちが“嗜んで”いるイメージだ。とにかくハイになるらしい。日本では「チャリ」という隠語で知られている。経験者の話だと「スーパーサイヤ人」になったような気がするとのこと。ちなみにコカインを合法としている国は先進国ではない。これも妥当な判断だと思う。長期中毒者にはもちろん健康被害が出るし、鼻腔内の粘膜が侵されて左右の穴が繋がるらしい。
ところで、南米あたりの治安が悪化して地獄のようになっているのは主にコカインのせいだ。日本やアメリカでは原料であるコカの栽培も禁止されているけれど、南米の高山性の場所ではコカの葉を噛んだりお茶にして“気付け”に使う文化もあり、栽培自体を禁止しにくい事情があるようだ。結果、ジャングルの奥地では武装ギャングたちがコカインを密造し、そこをめがけてアメリカの特殊部隊と攻撃ヘリが出動して焼き払う“いたちごっこ”が30年以上続いている。Netflixを契約しているひとは「ナルコス」を見ればいい。麻薬王パブロ・エスコバルの生涯が面白い。
次に覚醒剤ことメタンフェタミン。
24時間働けますか?の日本で発明された麻薬。戦時中には「ヒロポン」という名前で合法的に販売されていた歴史を知っているひとは多いと思う。戦時中にはドイツでも使われていたらしい。強い精神依存と身体依存がある。人間やめますか?という警句はまさにその通りで、合計6度も逮捕された田代まさしを見れば、一度でも中毒したら離脱が困難な薬物であること容易に想像がつく。絶対にやってはいけない。ちなみに「かならず数日を空けて0.3g/日を上限にすれば中毒しない」という説もあるけれど、おそらく、この禁忌を守ることは人間の脳のメカニズムとして難しいのだと思われる。静注のほかに「炙り」と言われる吸引方法や粘膜から直接吸収する“マイルドな方法”もあるけど、いずれポンプを使って直接静脈にブチこみたくなるのは確実。とにかく、やるな。
ちなみにNetflixにはガンで余命いくばくもない化学教師が覚醒剤の密造に手を染める「ブレイキングバッド」という最高に面白い海外ドラマがある。SUITSに並ぶ傑作だった。特にシーズン2後半の脚本が神がかっている。
次にキングオブドラッグとして名高いヘロイン。
もとは芥子から抽出されるアヘンだった。それを生成してモルヒネになる。このあたりまでは鎮痛麻酔薬としての歴史があり、現在でもガンなどの終末医療に使われている。要するにダウナー系の麻薬だ。死んだような陶酔感があるらしい。そしてヘロインだ。これはモルヒネをさらに激烈に精製したものだと思ってくれ。あまりにも強力すぎて医療用途さえないという。キメた瞬間に一生分の快楽や陶酔を味わうと言われている。なにやら話を聞いただけで廃人になりそうなぶっ飛び方なんだけど、ビル・エバンスはヘロインからコカインに切り替えた途端に中毒死した話もあり、中毒性や健康被害に関してはよくわからない部分もある。けれども、これも覚醒剤同様、絶対に手を出してはいけないやつ。やるな。
なんというか、このあたりまでは少々調べればだれにでも分かる話なんだ。冒頭にも書いたけど、大麻や各種違法薬物は「法律で禁止されているもの」以上のものではなく、明らかにヤバいヘロインや覚醒剤はべつにするとしても、たとえば大麻やLSDに関しては、それらが「アルコールのような嗜好品として付き合えるかどうか」にはわりと様々な意見や立場がある、というのが本当のところ。すくなくとも「使用したとたんに即廃人」ということはないし、そうした違法薬物の経験者を「社会に仇なす極悪人」のように見なす風潮も少し違うと思っている。あらためて「俺は違法薬物の使用を推奨するものでもなければ、その解禁を主張する者でもない」と前置きしたうえで言うんだけど、「薬物ダメ!絶対!」は“一般向けの分かりやすい抑止力”として理解したうえ、少しは自分の頭で考えような、という話なんだ。
もう少し無駄話を続ける。
たとえば大麻に関して。日本は戦後にGHQの指導によって「禁制品」とされるまでは、大麻の幻覚作用は仏教や神道などの祭事や神事に使われてきた歴史がある。宗教的な恍惚を得る道具として使われていたんだね。ではなぜ戦勝国のアメリカは大麻の禁止を日本にも押し付けてきたかというと、実はこれ、アメリカの黒人文化と密接な関係があるらしい。もともと白人は大麻をやらなかったんだけど、奴隷としてアメリカに連れてこられた黒人は大麻の楽しみかたを知っていたようなんだ。実際、禁止されるまえも禁止されてからも、アメリカの黒人ジャズメンたちは大体マリファナをやっていた。ビールくらいの気軽さだったらしい。五感が鋭敏になるため演奏に艶が出るとも言われていた。実際、大麻を吸引すれば気分も陽気になって盛り場の女の子も口説きやすかったという。これを白人たちが「白人の純潔を穢される」として恐れたらしい、という説がある。なるほどMDMAも覚醒剤もだいたいの薬物にはセックスドラッグとしての側面がある。むかし日本で使われていた大麻にも「ハレ」と「ケ」を隔てる道具としての側面があったようだし、むかしの祭りは「乱行」が許されたとする民俗学的な説もある。大麻が「悪しきもの」とされた経緯や現在については、これもNetflixにそんな感じのドキュメンタリーがいくつかあった。興味のあるひとは見ればいい。
ダメなものはダメ。そのとおりである。
日本国が定める刑法に抵触したものは、法治国家の罪刑法定主義によってすべからく処罰を受ける。けれども、「ダメなものがダメ」であることと「薬物について正しく知る」というのは、まったく別の話なんだ。
どちらかというと俺には、自分で調べず考えず「ダメなものはダメ」というやつのほうが、より有害な「道徳や正義の中毒者」に見える。
<追記>
実はこれ、荒れそうな話題だったし、
もともとは有料のFans'のために書いたんだ。
もう十分に荒れてしまったので、
noteでも公開することにした。
荒れそうなことはFans'に書こう。
CMのあと、さらに驚愕の展開が!!